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日が沈んできた頃、ヴィーリオとセラは一緒にお風呂に入る。家の西側にある風呂場は真っ赤に染まっている。森の中なので人目を気にする必要なんてないが、セラはタオルを外さない。
自分はきっと、色が好きなのだとヴィーリオは思う。自分は色に心踊らされている。彼は、浴槽の中に浸かりながらそんななんてことないことを考える時間が好きなのだ。
「早く身体洗えよ」
「わかった」
ヴィーリオに急かされてセラはせかせかと体を洗う。その様子をヴィーリオは眺めていた。
「お前さ、痣薄くなってないか?」
「そうかな?」
セラの痣は明らかに薄くなっている。それは、何を意味するのだろうか。
「ちょっと出かける」
ヴィーリオは音を立てながら浴槽から上がり、急いで服を着た。
「今から出かけるのー?」というセラの言葉は無視して、1人で駆け出す。
場所は、ワイドの家だった。
「おい、ワイド!」
「何ー?そんなに息切らして?」
ワイドは呑気に洗い物をしていた。そこを邪魔するのは悪いと思いつつも、聞かずにはいられない。
「痣が、薄くなるのって、なんでだ?」
ワイドは蛇口をひねり、水を止めた。そして、ニヤリと笑う。
「あの少年?」
「どうでもいいだろ」
一刻も早く答えが知りたい。そうやって焦らすのは彼の悪いところだ。
「痣が薄くなったら、殺せなかった」
「!」
ワイドはなんてことないみたいに言った。まるでそれが普通であるかのように。
「そんなこと、今までもあったのか!!?」
「まぁね」
彼はヴィーリオよりも何百年も前から死神をしている。知らないことなんてほとんどないだろう。
「どんなやつだった、なんでそうなる!!」
「落ち着きなよ」
ソファーを指差して、座るように促す。ヴィーリオは震える足を抑え、素直に従った。
「大昔に担当した、ある少年の話だ。俺はそいつを殺せなかった。なんでだと思う?」
「……まだ死期じゃない?」
「違う。心が死を受け入れてないからさ」
「つまり?」
「あの子は死を受け入れてない。だから殺せなかった。逆に、君といることで生きたいと願うようになったんだ」
「そうか」と短く答えてヴィーリオは律儀にお辞儀をして、玄関から帰って行った。
(あいつが、死を受け入れていない……?)
そんなはずはない。だって、彼はいつだって死後の想像をしていた。自らが宝石になった時の事を。それなのに、死を受け入れていないなんてことがあるだろうか。
きっと、ワイドでもわからないことがあるんだろう。そう思い直して、さっきのことは忘れることにした。
(俺があいつにしたことは、普通の食事をさせたこと……)
きっと、それで寿命が伸びたのか。そんなことあるとは信じられないが、現実に起こっている。
(まぁいいさ、死ぬまで面倒見るんだし)
ヴィーリオはフラフラとした足取りで、帰路に着く。いまはひとりじゃない。セラの待つ家まで。




