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この日、ヴィーリオとセラは一緒に山で食材を集めることにした。いつもは街の市場で食べ物を買うが、セラをなるべく街に出したくない。もし、生きていることが家の人間にバレてしまったら、どうなるのだろうか。ヴィーリオはそれを恐れていた。
「これは食べられない」
「平気だよ。家で食べてたもん」
「見間違いだろ」
野草を選別しながら食べられるものとそうじゃないものを教えていく。セラには、もっと教養を身につけてほしい。それがなんの役に立つかはわからないけど、退屈な人生を潤わせるものは知識であろう。
「じゃあ、キノコは?」
「触るな」
それにしても大変だ。彼は自由になんでも触ろうとするし、なんでも口に入れようとする。まるで、食べ物に対する不安なんてないみたいだ。
「俺が作った料理だけ口に入れろ。他は一切口にするな」
「はーい」
納得したのかはよくわからないが、一応肯定はされた。納得したかはわからないが!
そのとき、茂みからガサゴソと音が聞こえた。こんなところに人間なんてこないが、念のため警戒してセラを後ろに下がらせる。
音は、だんだんと近づいてきた。もう少しでその姿が見えそうだ。(動物なら肉にして食べよう)そう思いヴィーリオは杖を構えた。
姿を表したのは……熊だった。それもかなり大型の。
「セラ、逃げるぞ!!」
ヴィーリオはセラを抱えてそのまま空に飛び上がった。
流石に、ヴィーリオにも熊を倒すほどの攻撃魔法は放てない。
「二回目がこんな形になるなんてなー」
セラは能天気にそんなことを言う。彼は恐怖心すらも欠落しているのだろうか。
「そんな場合じゃない。お前くらいなら殺されてたぞ」
「痣あるんだから今更でしょー。もしかして病気が良くなってるから、熊に殺されることになってたのかも?」
「……そんなことあるか」
たとえ、動物に致命傷を与えられても殺すのは、魂を体から引き剥がすのは死神の仕事だった。
(俺は、こいつを殺せる貴重な機会を無駄にしたのか——)
そう考えても悔しさなんてつゆほども湧いてこず、逆に誇らしかった。
「……熊って美味しいのかな?」
「まずいだろ」
2人はふわふわと飛んだまま、家まで着いた。
今日の収穫のほとんどは草だけど、それでも美味しいものは作れる。
「今日のご飯は何?」
「うーん」
ヴィーリオはしばらく考えた。考えた後、名案を思いついた。
「一緒に作ってみるか?」
「まぁ、いいよ」
「しょうがないなぁ」という風を装って入るが、嬉しそうなのは見ればわかる。
2人は並んでキッチンにたった。
セラに包丁を持しても彼は使い方がわからない。仕方なくヴィーリオが後ろから一緒に切ることにした。その途中、なんだかセラの体温がやけに温かかったのは気のせいだろうか。
「できないからって、恥ずかしがる必要はない」
「……うん」
今日の彼はあまり口答えをしてこない。そんなに料理がしたかったのか、と嬉しくなる。
「なんかさ、ヴィーリオの料理食べたら、元気になるんだ」
「……そうだな」
(きっとこいつは家で——)
そんなことはあまり考えたくなかった。けれど、彼の父親の死因とあの家で料理を食べなくなってからの調子をみればわかるだろう。
「……これから、たくさんうまいもの食わせてやるから」
ヴィーリオが初めて口にした、同情の言葉だった。




