4
ヴィーリオは今日も仕事に出かける。今日はよく知ったあの家に行くことになった。
街の中心、青い屋根の大きな屋敷。セラの住んでいた家だ。
今日も、なんともない顔でメイドはヴィーリオを迎える。
(あいつはいないはずだが……?)
疑問はすぐに解消した。今日死ぬのは屋敷の主人だ。
大きなベッドに寝かされ、かなり弱っている。ヴィーリオは彼の手を優しく握り、宝石を固めた。緑色の宝石。これもなかなか綺麗である。
「……今回はちゃんと殺せたんだ」
いつの間にか後ろにいた青年。セラによく似ているが、彼よりもさらに腹黒そうである。
「もちろんだ」
「ありがとう。君のおかげだ」
青年は満面の笑みで笑った。人の家庭の事情なんて知らない。知りたくもない。
「そうか」
短く答えて足早に家に帰った。
どうしても、セラに会いたかった。早くあの顔を見たい。彼に癒されたい。今日は、抱きしめてもいいだろうか。
ガタンと大きな音を立てて扉を開く。
「あれ?今日は早いじゃん?」
セラは優雅にお茶を飲みながらソファーに腰掛けている。
彼の姿を見た途端、急に力が抜けて地面に座り込んでしまう。
(なんだ、力が入らなくなったぞ)
セラが駆け寄ってきて、ヴィーリオの顔をペチペチ叩く。
「まだローブを脱いでない」
「どうせ死なないしいいよ」
「俺はお前をそんな殺し方したくない」
きちんと手を握って、作法に則って殺したい。しきたりにはちゃんと意味があるはずだ。
ボトっと音を立てて、ヴィーリオの胸元から緑色の宝石が落ちた。
「これはどんな宝石?」
「跡取りに毒殺された男だ」
「ふーん」
ヴィーリオは苦虫を潰したような顔をする。
「お前は、それを聞いてなんとも思わないのか?」
恐る恐る聞いてみた。彼の、父親であろうということは口が裂けても言えない。
「死は平等に訪れる。原因を探っても、死ぬときは死ぬんだ」
「ああ、そうだな」
彼は以外と達観している。どちらかというとその価値観は死神側に近いのかもしれない。
「お前は死んだら、死神になるかもな」
「あー、死神って人間でもなれるんだっけ?」
「そうだ、死んだやつはなる」
セラはふむふむと顎を撫でる。何を想像しているのだろうか。
「じゃあ、あんたって生きてる頃はどんな人だったの?」
「さぁ?覚えてない」
腕を組んで考えても、思い浮かばない。浮かばないものは仕方ないのだ。
「……僕も忘れるのかな?」
「俺が覚えといてやる」
頭を撫でてみる。彼の瞳を見つめた。いつもと変わらない透明な瞳。そこに映るのはヴィーリオだけ。
(ずっと、俺だけ写してればいい)




