正体不明の生物
「一体これで何件目だ?アンノウン達の目撃情報と、被害が急激に増えてきてるぞ!」
「10年前の復活からここまで勢力を増してきたか。それに、最後のこの一体だけは...復活させてはならない」
世界警察の秘密組織。FBIでも公安でも無い、手段を選ばず、人ならざる者達の処理を行う機密機関。
World Of the Arbitrator(世界の調停者)通称WOAと言われる者たちの本部、日本ではアンノウン達への対処会議が行われていた。
「アンノウンの王が復活してしまえば、世界はそれこそ終わりだ。奴らは王の復活のためにこれから結束して我々と戦う準備をするでしょう」
「その準備をさせる前にアンノウンは全滅させる。そのためにも最後の棺だけは!!コレだけは奴らに渡しては行けない!!!」
会議の終了を告げるように扉を勢いよく開ける音がビル内に響く。列をなして歩く調停者達は、現場へと赴いていく。
「すべては規律ある社会のために...」
午前12:20 東浜邸
「というわけで、これからの俺たちのやる事だけど」
『まずは同胞達と接触するのが手っ取り早いぜ』
和室の一つ。俺の体から飛び出る黒い影はニタニタと下品に笑いながら会議を行なっていた。一つ屋根の下、学校を休み、俺は昨日の夜から今日の朝まで自分の身に起きた異変について色々と試しまくった。
「俺の能力が変幻自在ってのはわかった。実際に影が伸びるのは頑張れば5キロ。その分影の強度は下がる。形を作った剣とかも同時に5本まで」
『ちなみに、身体強化が俺の得意分野だからお前結構強くなってんぜ』
「岩すら発泡スチロール並みに壊れたんだけど。怖」
やれる事が増えたのはいいが、この力の使い方と加減は考えないとな。
「てかまずはその同胞はどうやって見つければいいわけ?」
『近くにいると勝手に導き合うぞ。適当に街に出かけてみればかち合うかもな』
「人型だけじゃないんだろ?」
『暴れてたら絶対に話題に上がるはずだ。お前の能力なら遠くにいてもすぐに行けるだろ?』
「だとしても都合よくそんな話題上がるわけ...」
ニュースに上がったのは謎の生物たちが暴れている映像と逃げ惑う人々の姿。スカーの方を向くとほらな?と言いたげに首を傾げる。
「行くぞ、スカー」
『あいよ』
スカーが影に入り込むと影は身体中に伸び、飲み込むように俺の体は黒く染まっていく。黒に染まる体。目元はスカーと同じ目つきになり胸元と腕周りに白い印が浮かび上がる。
「場所は?」
『結構近いな、歌舞伎町の大通りだ』
12:30 歌舞伎町 大通り
何が起きたのだろう。いつも通り友達と地べたに座って、世間話とか、最近会ったホスト崩れがウザかった話とか、前まで来てた子がリストカットして警察に連れてかれた話とか。そんなことを話してたはずだ。なんも変わらない私達の日常。なのになんで。
『グギャギャギャギャ』
「みゆう...助けて...」
「あ...あぁ...!!」
頭から血を流して、体は瓦礫の下敷きになったかおり。そして、町をこんなにした原因は悍ましい風貌をしていた。
「やだ、嫌ダァぁ!」
腰が抜けて動けなくなる。見上げた先にあるのは、およそこの世の生物ではない何かの目玉。みゆうを除く恐ろしい黒は楽しむように彼女の表情をのぞく。
「誰か...」
言葉が出るまもなく、彼女の首は刎ねられた。はずだった。瞬間振るわれた獣の腕は空を切り、獣は何が起きたのか分からず手の中を見た。背後にある瓦礫の山から音がしたので振り向くと同じ黒の存在が人を助けているのを見た。
「はいはい、もう大丈夫。立てる?」
「うん...」
「そっか!よかった。さぁ2人とも逃げるんだ。『色目使ってんじゃねぇよ、エロガキ』うるさい!ここは俺がなんとかするから。後ろは振り向いちゃダメだよ?」
「分かった...」
走り出した彼女たちは恐ろしさを感じながらも、黒い存在に安心感を覚えていた。一人が立ち止まり、黒い背中に声をかける。
「あの...」
「うん?なに?」
「名前は...?」
「...名前」
『そういや、考えてなかったな』
考えてる最中に、獣が突撃してくる。涎を垂らしながら勢いよくぶつかってくるその獣は自身が止められたことに心底驚いていた。ならば、と次は噛みつき、噛み砕きながら上空へと投げ上げた。
「名前か...考えもしなかったな」
落下しながら考える。好きだった漫画の最後の名前に確かZが付いてたっけ?それにZアルファベットの最後、最後の被害者という意味としてもいいかもしれない。
『厨二病だな』
「うるさいっての!俺の名前は...」
振りかぶる右腕、影を右腕に溜め込み、巨大化させる。獣は恐れた。気づけば噛み砕いたと思っていたものは自分の歯だと気づく。六つの目が落下するそれを捉えた。次に映るのは赤く染め上がる世界の描写だった。
「ゼットだ!」
血飛沫が高く舞い、そして彼に打ち付ける。紫色の血が彼を滴る様は何か新しい神々しさを持っていた。それを見上げる彼女たちは、顔が無くなった獣を見て意識を失った。
「あ、やべ。殺しちゃダメじゃん」
『いや、こいつは獣型だから意思疎通は無理だ。人型、サイテーでも異形型に会えればな...』
そして、その姿を遠くから眺めている四人組、普通の人間と三体の異形。
「すごいね、アンノウンとの同居なんて。できるのかい?あんなこと?」
『は!矮小な寄生型にしか出来ぬわ。元より、我らは寄生せずとも個として完成している!』
『然り』
『ぷるぅ』
影の中からもう一人、歩き出してくる。その存在は人と同じ形同じ姿の存在。しかし、内面のドス黒さは隠しきれていない。
「王の復活の為にも動こうか。俺たちも」
「君も来てたのか、無羅」
彼らは動き出す、たった一つの目的、アンノウンによる世界の支配の為に。




