↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Brides of Destiny - 運命の花嫁たち  作者: Telda Caladlimion
第二篇 The Long Detour - 急がば廻れ
24/27

平坦ならざる旅路

<第二章 The Catcher in the Cabbage - 再会>


ツァウベルハイムを発って、先ずは街道を東へ。

そして道は南北に分岐する。そこから北へと入った。

街道はとても賑わっていて、幾度となく旅人や馬車とも行き交う。

足元には轍(わだち)が残り、そこには数日前に降った雨が溜まっていた。

そして丘陵を避けるように、街道はうねりながら東へと伸びていった。

北には少し高い山々も遠くに見える。


やがて日が傾くと、街道を北に外れて、林へと移動する。

この辺りには盗賊の出没報告があると聞いたので、

街道沿いを離れる方が安全と判断してのものだった。

適度に開けた場所を探して、そして野営を作り、

そこで一日目の旅を終えた。


街道は更に東へ。平原を過ぎると少し険しい丘陵へと入った。

南にはとても高い山脈が東から西へと連なっている。

この丘陵を越えるのに、三日間を要した。



 エドワードの水袋がほぼ空になり、いよいよ水不足の心配が出る。

そこで街道から東へと外れ、渓谷の沢にて水汲みを試みることにした。

小さな森を抜け、そして前方にそびえる双峰の山へと向かう。

するとその両峰の間に、ゴツゴツとした岩肌の谷が見えてきた。

地図によれば、これを越えた先に沢があると記載されている。



「前にも街道から離れて山に近づいて、魔物に襲われたから、特に注意して行こう」

そうしてリュカたちは、この岩壁の谷を登っていった。

しかし少し進んだ先で、妙な光景を目にする。

岩肌の一部がやけに小刻みに揺れていて、

ガタガタと岩同士がぶつかる音が聞こえる。

それは次第に大きくなり、岩肌から大きな塊が外れるように崩れた。

そしてその塊は斜面をゆっくりと転がり、そして落ちてきた。


「落石か?」

エドワードが目を凝らしながらその岩塊を眺める。

するとそれは更にゴロゴロと回転しながら、ゆっくりと近づいて来た。

そして谷間の丁度中程で回転を止める。

それから再び岩同士がぶつかるような音が、岩壁の間で反響した。

そして突如、その岩塊が立(・)ち(・)上(・)が(・)る(・)。


「た、立った!? 岩が!!」

それはまるで熊のような姿に変わる。

そして叫ぶエドワードを威嚇するように、両腕を上げてこちらに対峙した。


「岩の獣、クラッガーに御座る! 早く、此方へ!」

バリアンが叫び、エドワードを後退させた。

「クラッガーは硬く、某の剣はおおよそ通じませぬ。されど動きは遅い。横を走り抜けましょう」

そう言ってバリアンは剣を抜き、そして盾を構えた。

しかしその後ろに、同じようにゴロゴロと転がる岩塊が現れる。

少なくとも二つは転がっていた。


「どうする? 走るのか!?」

しかしすぐにバリアンは剣を収めて盾を背負う。

そして強い口調でエドワードたちに進言した。

「いいえ、ここは退きまする! いくら動きが遅くとも、囲まれれば危うく御座る」



 バリアンの判断に従い、そして四人は急ぎ引き返した。

出来うる限りに速く、谷間を駆け下りる。

暫くクラッガーが追いかけてきたが、確かに動きは鈍かった。

そして程なく、その追跡から逃れることが出来た。


「もう……追っては、来てないみたいだね……」

リュカが息を切らしながら、膝に手をついた。

「お水は……汲めませんでしたわね……」

「仕方がないから、街道に戻ろう。この先に、湖がある。そこまでなんとか、やりくりしよう」

「エドワードさんには、私のお水をお分けしますわ」

「ありがとう、ローラ……」


こうしてリュカたちは急いで街道へと戻り、

そしてその先を急いだ。



 翌日、ついにリュカたちは街道沿いの東に湖を見つける。

地図によれば、それはブレチェット湖と呼ばれている、かなり大きな淡水湖だった。

そして早速、湖の畔へと向かう。

エドワードの水袋はもとより、皆既に残り少なくなっていた。


「恵みの水だな! 地図で見るに、街道はこの後も湖沿いに行くから、当分は水も飲み放題だぜ!」

そう言うと、エドワードは勢いよく水袋をシャブリと湖に浸ける。

リュカたちも同様に、空になっていた袋を水で満たした。

そしてエドワードは、両手で水をすくって飲み、その渇きを癒した。



 水を補給して、エドワードたちは意気揚々と湖畔の街道を進む。

しかし暫く歩いていると、エドワードの顔色がみるみると青くなる。

そして次第によろけ始め、最後にはしゃがみ込んでしまった。


「どうした、エドワード!?」

「いかがされましたか!?」

皆がエドワードに駆け寄る。

「き、気持ち……悪い……。ウッ……!」

エドワードは力を振り絞って草むらに飛び込み、そして嘔吐した。



「さあ、先ずは横になりましょう」

ローラがゆっくりとエドワードを横向きに横たえ、

背中を優しくさすって介抱している。

「一体どうしたんだ、エドワードは?」

リュカも心配そうに顔を覗き込んだ。

「これは、何かの中毒ですわ」

ローラがそう言うのを聞いて、リュカが何かに気づく。

そして一冊の本を取り出して調べ始めた。

それは街で購入した、旅の知識が記された本だった。


「これだ! エドワードは湖の水をそのまま飲んでたけど、それは中毒起こすから危険だって、ここに書いてある!」

「私も聞いたことがあるような気がしますわ。流れのある川と違って、湖の水は濁っているとか」

「それさ……頼むから早く言ってくれよ……」

エドワードが苦しそうに唸った。



 すぐにローラの解毒魔法がエドワードに施された。

「これが食中毒にも効くとよいのですが……」

そうローラは心配したが、思いのほか効いた様子で、エドワードの容態は安定した。

しかし体力をかなり消耗していたため、リュカたちはこれ以上の移動を諦めた。

そしてまだ日は高いが、湖畔の近くに野営を作った。



「僕たちの水も、このままじゃ飲めないね……」

そう言ってリュカは、再び本を読み始める。


「ここに書かれてる"水の濾過"を試してみよう」

そう言って鍋を取り出し、そこに水を移して暫く放置した。

そして沈殿物ができると、それを除去する。

布を取り出して何枚かに重ね、そしてその上に小石を並べた。

そこに鍋の水を掛けて濾し、これを何度も試みた。

濁りは結局、完全に取れなかったものの、今度はそれを煮沸する。

十分に沸騰させたら、それを冷ました。


冷ましている間に別の鍋を使って、同じように濾過して、そして煮沸する。

それを三人分繰り返す。

遂に全て終える頃には、すっかり夜も更けていた。

冷ました水を全て水袋に移して、それでようやく就寝したのだった。



 翌朝、エドワードもすっかりと回復し、旅が再開された。

湖を右手に望みながら、道は真っ直ぐと東へ伸びる。

そして再び湖畔で一晩を過ごした。

翌日、日が傾き始める少し前に、湖の東端が見えてくる。

街道はそのまま湖を離れて、北東へと続いていた。

しかし再び水を確保するために、その日は湖畔に留まり野営した。



 水袋を再び満たして、街道を北東へと進んだ。

翌日、右前方に山岳が見えてくる。

街道はそれを避けて左へと曲がっていった。

そしてやがて潮の香りを感じられるようになる。

左に海を望み、道は真っ直ぐと東へ。

それからは特に何もなく、順調に三日間歩き続けた。



 街道を歩いていると、前方から馬車の車列がこちらへと進んで来るのが見えた。

とりあえずリュカたちは、その車列に道を譲る。

それは荷馬車5台に数人の騎馬の護衛を伴った、中規模のキャラバン隊だった。

そしてエドワードは、通り過ぎようとする馬上の人に話しかける。


「なあ、あんたたち。サンセルモから来たのか?」

「ああ、我々はサンセルモから、シエラ・ブエナへと向かっている」

「そのサンセルモまでは、もう近いのか?」

「我らが街を発ってここ迄で二日だが、歩きなら三日ほどだろう」

「ありがとう」

そしてキャラバン隊は、リュカたちが来た道を西へと進んでいった。


「よし! もうすぐだ!」

「あと一息だね!」

「がんばります」

「街が近いとは申せ、盗賊や魔物への警戒怠らず、参りましょうぞ」

新しい街への期待を膨らませ、そしてリュカたちは再び歩き出した。



 前方左手に丘陵が広がり、道はそれを避けて南東へ。

南は高い山々が連なり、街道は丘陵と山々の間を抜けて伸びていった。

そしてキャラバンとすれ違ってから三日後の夕刻前、

門を過ぎて港街へと足を踏み入れた。

そこは潮風が心地よく、遠くではカモメの鳴き声も聞こえる。

リュカたちは長い旅を経て遂に、サンセルモへと辿り着いたのだった。


毎週金曜日、20時20分更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。