初めての依頼
<第三章 Sierra Buena - 冒険の旅へ>
朝起きて、リュカたちはすぐに仕事探しを始めた。
宿の主人から傭兵ギルドの場所を聞き出して、そこへと早速向かう。
「やっぱり、金を手っ取り早く稼ぐなら、危ない仕事だろ?」
エドワードはかなり乗り気で、道中ずっと足取りが軽かった。
「でも、僕たちはあまり経験がないから、慎重にしたほうがいいよ」
「私はそういったことには無縁でしたが、できるのでしょうか?」
そしてそんな会話をしている内に、傭兵ギルドの建物の前に到着する。
大きな都市に似つかわしく、とても立派な建物だった。
両開きの扉を開けて、中へと入る。
すると既に中は、大勢でごった返していた。
革鎧もいれば、鎖帷子に身を包む、いかにも強そうな者もいる。
そんな歴戦の猛者たちを横目に、エドワードは受付へと急ぐ。
「まだ駆け出しなんだけど、俺たち何でもやるよ。仕事が欲しいんだ!」
彼がそう言うと、受付はエドワードたちを一瞥する。
そして少し呆れたような声で答えた。
「あのねぇ。ここは戦える人以外、お断りなんだよ。あんたらさ、いっちょ前に剣は引っさげてるけどね、そんな薄着でどうすんの? 軽く小突かれただけで、お陀仏だよ、そんなの。まだね、防具はガッチリと固めて、それで後は拳でって、丸腰で来る奴の方が、よっぽどマシだよ。
スライム討伐依頼なんてものはねえんだから、あんたらに紹介できる仕事はないね。出直してきな」
そう言うと受付は、手で払う仕草でエドワードを追い払った。
「くそ! 馬鹿にしやがって! こっちにだってな、バリアンがいるんだよ。
その辺の並の連中よりかは、俺達のほうが強いだろ。なあ、リュカ?」
しかしリュカは渋い顔をしている。
「うーん。でもさ、バリアンがいくら強くても、仕事を受けるのは僕たちだから。僕たちの格好がこれじゃあ、仕方がないと思うよ。それにバリアンを鎧姿でここに連れてくる訳にもいかないし……」
エドワードは歯ぎしりする。
「装備買うためには、仕事が必要だし。でも仕事するには装備がいるって……。
いったい、どうすりゃいいんだよ……!」
その時、背後から声がした。
「お兄さんたち、仕事欲しいの? だったら俺からも紹介できるけど、いる?」
そしてエドワードが目を輝かせて男に迫り寄る。
「もしかして、誰も引き受けないような、裏の依頼とか!?」
しかし男は少しの沈黙の後、申し訳なさそうに続けた。
「あれ? 何か勘違いさせちゃったかな。ごめんねぇ。いや、そうじゃないんだよ……。
お兄さんたち、ガタイ良いからさ、力仕事の人足しない?日雇いだけどね。まあまあ、稼げるよ?」
「に、人足ぅ……?」
これにはエドワードも拍子抜けで、へたり込んでしまった。
しかしリュカが今度は、それに飛びつく。
「はい、やりたいです! 人足! 荷物運びですよね?」
「そうそう、キャラバンがこの後、街に着くからさ。その荷を降ろして、それを倉庫に運ぶ仕事だよ」
「はい、是非やらせてください! こっちの彼にも!」
そう言ってリュカはエドワードの腕を掴み、そして立たせた。
「はい、お願いします……」
エドワードは力なく、それに同意した。
「私にも出来そうな仕事は、何かございますか?」
「いや、いいんだよローラさんは。働くのは俺らに任せて!」
「いいえ、私にも出来ることがあるはずです。どうですか?」
「そうさね。お姉さん、炊事は出来るかい? だったら、大食堂の炊事場手伝いの仕事があるよ」
「はい! 是非、やらせて頂きますわ!」
こうして三人は、その日の仕事を得ることに成功した。
三人は待ち合わせ場所を、このギルド前の広場に決めて、
それぞれの仕事場へと向かっていった。
リュカとエドワードは同じ人足、荷運び人として汗を流す。
「なあ、エドワード。僕たち外に出ても、やってること同じだね。重い物を持って運んで、持って運んで、ってさ」
そう言ってリュカはくすりと笑う。
それにエドワードは正直に不満を漏らす。
「何が面白いんだよ。そんなの、最悪だろう……?」
「いやさ、同じことをしていてもね、気分は全然違うなって。そう思ったんだ。
エドワードは?」
「そりゃあ、全然違うに決まってるさ!」
そうしてリュカたちの一日は暮れていった。
夕方になり、仕事が終わる。日当はその場で貰えた。
リュカとエドワードはそれぞれが12ティエラ。
ローラは9ティエラを受け取った。
三人は広場で合流し、合わせて33ティエラを持って、
昨晩宿泊した宿に、胸を張って凱旋する。
「どうだい。仕事には、ありつけたのかい?」
宿の主人が、昨日よりは少しだけ、愛想よく聞いた。
「ええ、おかげさまで。バッチリですよ!」
「今日はきっちり、15ティエラ、払えるぜ!」
そう言って誇らしげに、銅貨15枚を主人に支払った。
「じゃあ今夜は、食堂で飯も食えるかね? だったら、その角突き当り左で、昨日の炊事場の手前の扉から入りな」
リュカたちはそれに従い、食堂へとやってきた。
すると昨日パンをくれた男が、厨房で忙しそうに働いていた。
「おお、昨日の。今夜はうちで食ってくれるのかい? うちは蜂蜜酒が売りだよ。是非試しておくれ!」
リュカたちは昨日のお礼を言うと、空いている席についた。
「やっぱり、肉は食いたいよな……」
エドワードは空腹そうに辺りを見回す。
「あれも。美味そうだし。どうするかな!」
そうこうしている内に、店の人が注文を聞きに来た。
リュカたちは三人で同じ、パンとスープを各々頼んだ。
そしてエドワードたっての希望で、ロースト肉の小皿を、
三人で共有することにした。そして――
「やっぱりさ、そのミード酒? 飲んでみたいだろ!?」
そう言ってエドワードは、勝手にミードを頼んでしまった。
暫くすると、料理がテーブルに運ばれた。
木製のマグに注がれたその金色に輝く液体を見て、
エドワードはうっとりとしている。
「なんかこれ、教会で飲んだあの飲み物を、思い出すな。大人たちはあの時、こんな金色をしたワインを飲んでたな。俺はサント・フロール帰ったら、絶対にあのワイン飲むぞ!
しかし今は……こいつだ!」
そう呟くと、黄金の蜂蜜酒をグビグビと飲むエドワード。
「うめえー!」
エドワードの声が食堂に響き渡る。
それで周囲には笑いが起きた。
エドワードは少し恥ずかしそうにしながら、
リュカとローラにも同じものを勧める。
「絶対に美味いから、飲んでおけって!」
そして押される形で、リュカたちも一杯ずつ頼んだ。
何故か、エドワードもおかわりを頼んだ。
「まあ! 口当たりが良くて、美味しいですわ」
「本当だ! それにいい香りだね」
「ええ、実によい香りです!」
二人も気に入った様子で、エドワードも誇らしげにしている。
こうして食べ終えて、会計へと進む――
「パンとスープが、一人前1ティエラで、合計3ティエラ。ロースト肉の小皿は、一皿3ティエラですね。それと、蜂蜜酒が一杯、3ティエラ。こちら4杯で12ティエラです。ですからお会計は――
締めて、18ティエラになります! まいどありー」
「エドワード……?」
「うん……」
「エドワードさん……」
「分かってる、皆まで言うな……!」
「僕たち、また文無しだよ……?」
「だから! 皆まで言うなって……」
空の財布を握りしめ、リュカたちは無言で寝床に入る。
しかし寝床には、濡らす枕もなかった。
こうして苦い苦い、二日目の夜は更けていくのだった。
翌日も同じ仕事場で、一日働いたリュカたち。
そして昨日同様に、33ティエラを稼いだ。
「昨日みたいに使い切らないよう、1ティエラでも節約しよう……」
リュカが真剣に切り出した。
「いっそのこと、野宿するか?」
「いいえ、それは流石に……」
エドワードの提案は、ローラによって即座に却下された。
そこでまずは、宿代が節約できないか、宿の主人に相談する。
「ああ? もっと安く泊まれないのかって? こっちも商売だからね、あんまり言いたくはないが……。まあ、二人で一つの寝床を共有するって手も、あるぞ」
「え!? そんなことしてもいいのか!? だったら、一昨日の夜だって、10ティエラで良かったじゃないか!」
エドワードが強めに食って掛かった。
「言っただろ? こっちも商売だって。でもな、あんたらもやってみりゃ分かると思うが。寝床共有するってのは、思った以上に疲れが取れないもんだ」
「そうだよ、エドワード。僕たちはあの日疲れ切っていたし。ちゃんと三床借りて寝たのには、意味があったと思うよ」
「まあ、リュカがそう言うならな……」
少し納得していない様子だったが、エドワードは引き下がった。
「それで、どうするね? 今夜は二床にするか?」
「はい、僕とエドワードが、同じ所で寝ます。二床でお願いします」
「私だけ、一人で使わせてもらって、なんだか申し訳ありません……」
「いや、流石にね。これは仕方がないよ、ローラ」
申し訳なさそうなローラを、エドワードは庇った。
こうして、その夜の宿代は、10ティエラに節約できた。
今度は食堂に三人は移動した。
「お、昨晩はいい飲みっぷりだったね。今夜も行くかい?」
そう言われて、苦笑するエドワード。
「まずはパンとスープを一人前ずつ。これはちゃんと食べたほうがいいと、僕は思う。今こそ、体が資本だからね」
「そうですわね。パンとスープだけでも、十分な活力は得られると思いますわ」
そう言うリュカとローラに、エドワードはこう主張した。
「待ってくれ! 全然、十分じゃないぞ! 肉だよ、肉!! 肉食べないと、明日、動けないぞ……!」
悲痛に懇願するエドワードに絆されて、肉皿を一つだけ、
リュカたちは共有することにした。
しかし昨晩のロースト肉よりも少し安い、ソーセージを頼んだ。
当然ながら、エドワードの無言の圧にも負けずに、
ミードはおろか、酒類は一切頼まなかった。
食事を終えて、会計へ。今晩の食事は三人で5ティエラに抑えられた。
宿代と合わせて、この日は総額15ティエラの出費。
これで手元には18ティエラが残った。
翌朝になって、リュカたちは宿の主人に、
サンセルモまでの路銀がおおよそ幾らくらい必要かを質問した。
「サンセルモまで、歩いて直に行けるとは思えないね。まずは途中の町を目指すことだな。中継するなら、『ツァウベルハイム』が定番だな。
そこまでだったら、そうさな……。俺もそんなに詳しくはないから、明言はできねえが。食い物とか最低限のもの集めるだけで、少なくとも10ルナは、要るんじゃないか? 当然これは、食い物とか諸々だけでの話だよ。装備も買いたいなら、そこから更に必要だな。
『ルナ』ってのは、銀貨だぜ。1ルナは20ティエラで交換できる。まあ要するに、最低でも200ティエラ以上ってことだな」
これを聞いて、リュカたちは目眩を覚えた。
「丸一日働いて、切り詰めても、18ティエラだぞ……。こんなことしてたら、あと十日以上なんて、体が持たない!」
「そうだね……。宿のおじさんが言う通り寝床共有だと、疲れが思った以上に取れなかったよ」
「これは早急に、何か考えねばなりませんね……」
こうして三人は話し合い、少しでも稼げる仕事を探すことにした。
そして、人足仕事を紹介してくれた男の元を訪れる。
「ああ、お兄さんたち。どうしたの?」
「俺たち、もっと稼げる仕事が必要なんだ! 別に、冒険者の仕事をくれとは言わない。せめて、少しでも稼げる仕事だったら、それでいいんだ」
男は少し考えて、そして答えた。
「何やら事情があるようだね。いいよ、紹介できるよ仕事。ただちょっと危険だけど、それでもいいんだね?」
三人は街の外での、伐採の仕事をもらった。
そこまで危険ではないが、魔物に襲われる事もあるため、
その分、給金が良い仕事だという。
そしてリュカとエドワードは伐採夫として働き、
ローラはその世話をする雑用仕事についた。
こうして男二人はそれぞれ15ティエラ、
そしてローラは10ティエラで、合計40ティエラの稼ぎになった。
「まあ少しは、稼げたか?」
「これなら毎日、25ティエラは貯められるよ!」
「それでも、遠いな……」
リュカたちはエドワードを励ましながらも、
こうして毎日真面目に仕事を続けた。
そして伐採仕事に就いてから、九日目の終業後、
伐採場から街へと戻る、その帰路にて事件が起きた――
街への帰り道、バリアンも鎧に入って同行している。
リュカたちは疲れた体を引きずるように、道を歩いていた。
そんな折、道の向こう、森の木々の裏手から悲鳴が聞こえた。
リュカたちは急いで声の方へと走る。
グルルルル……
犬のような頭をした、小さい人間、またはゴブリンのような姿で、
しかし武器のようなものは何も持っていない。
そんな魔物が数体、女性を取り囲んでいた。
「おい! 何してやがる!」
エドワードが叫ぶ。
そしてリュカも一緒に、女性と魔物との間に割って入った。
剣を抜く二人。
そして犬ゴブリンは一斉に襲いかかってきた。
しかし先頭の一体を、難なくバリアンが剣で斬り倒す。
勢い余って飛び込んできたもう一体も、同様に斬った。
そして一斉に群れは四散して、森の中へと消えていった。
「大丈夫ですか!?」
リュカが女性に駆け寄る。
「はい。助けて頂き、有難う御座いました」
そう言うと女性は立ち上がろうとする。
しかし立てずに、よろめいてしまった。
咄嗟にリュカが女性を支える。
女性は足を挫いていた。
「ここは留まらず、移動すると致しましょう。コボルク共が、戻ってくるやもしれませぬ」
バリアンの忠告を聞いて、
リュカたちは伐採場の休憩広場まで戻ることにした。
「お怪我なさったのですね。今、治療いたします」
そういってローラが、女性の足を癒した。
そして女性は立ち上がれるようになった。
一息つき、落ち着いて見ると、それはとても美しい女性だった。
焦茶色のふわりとした長い巻き髪を背中まで伸ばし、
その瞳は明るめのヘーゼル色で、少しだけ緑がかっても見えた。
そして、とても上質な服を身に纏っている。
「改めまして、皆様。お初にお目に掛かります。私、リリアナ・モンテドラードと申します。是非、皆様のお名前を、お伺いしたく存じます」
恭しくドレスの裾を摘み、そして膝を静かに曲げると、
優雅にリリアナはリュカたちに向けて挨拶した。
「私はローラと申します」
「俺はエドワード」
「僕はリュカです。そして、こちらがバリアンです」
バリアンは鎧を前に傾け会釈した。
「つかぬことをお伺い致しますが。モンテドラード家とは、私が先日お世話になった大食堂を経営なさられている、あのモンテドラード家にございますか?」
「はい、恐らくは、そうであるかと存じます」
「まあ!」
ローラが驚いているところに、エドワードも質問した。
「そのモンテドラード家? のお嬢様が、どうしてこんな、街の外を一人で歩いていたんだ? 俺たちが通りかからなかったら、結構危なかったぞ」
この質問をエドワードがすると、リリアナは両手を握り胸に当て、
そして俯き黙ってしまった。
「あ、いや! 別に責めてるわけじゃ、ないんだ……」
エドワードが焦って言葉を添える。
ローラは彼に、むっとした表情で窘めるような視線を向けた。
そしてリュカが今度は、優しくリリアナに質問する。
「リリアナさん。何か事情があったんじゃないですか?」
リリアナがゆっくり顔を上げ、そして少しずつ話し始めた。
「彼が、アロンソが怪我をしたと、聞かされました……。アロンソは私の、幼き頃よりの友です……。かつて彼の父君は、当家で執事を務めて下さっていました。しかしその父君が病により身罷られ…。それ以来、アロンソと一家は、親類を頼って移り住み、私たちは離れ離れとなりました。
その彼が、怪我をしたと……。そう聞かされて……。それで、居ても立っても居られず……」
ローラがリリアナに寄り添い、慰める。
そしてリュカが再びリリアナに問いかけた。
「だったら、お父上とか、誰かに相談できないのでしょうか? 流石に、独りで会いに行くのは、やっぱり危ないですよ……」
しかしリリアナは首を横に振る。
「お父様に話せば、きっと反対されます。いいえ、私は外出できないよう、閉じ込められるやもしれません。だからもう、ロドリゴにも相談できず……」
「お金はあるんだろうし、傭兵ギルドに護衛を頼むとか?」
エドワードの提案を、リリアナは残念そうに否定する。
「それも誠に遺憾ながら、出来ません。ギルドに依頼すれば、それは必ずお父様の耳に入ります。だから……」
「だったら、僕たちが送り届けよう! どうかな?」
リュカの提案に、エドワードもローラも、即座に賛同する。
「そうだな、それしかない!」
「ええ、そうですね!」
リリアナはそれを聞いて初めは恐縮し、逡巡する。
「しかし、これ以上皆様に、ご迷惑をお掛けする訳には……」
だがすぐに、何かを閃いたように続けた。
「皆様は、冒険者様方とお見受け致します。ならば、私を護衛する、その依頼をお受け願えませんでしょうか?ギルドを通さない、個人的な依頼となってしまいますが……」
突然の提案に、リュカたちは少しの間言葉を失った。
しかしすぐにエドワードが目を輝かせる。
「はい、その依頼、受けます! もちろん受けますとも! 大船に乗ったつもりで、任せてくれ! やったぞ、リュカ! 念願の、初依頼だ!!」
「ちょっと、エドワード。はしゃぎすぎだよ」
そう言って小躍りするエドワードをリュカが諌めた。
そんなエドワードを、ローラは困り顔ながら微笑んで見ている。
「リリアナさん。エドワードが言った通り、僕たちにはこれが初めてとなる、仕事の依頼です。それでも、よいのですか?」
リュカが恐る恐る聞いた。
しかしリリアナは即座に、これに笑顔で答えた。
「勿論です! 皆様のことを、私は信頼致しますわ!」
こうして、リュカたちは初めての依頼を受けることが出来た。
日が暮れゆく中、すぐにでも出発したがるリリアナを諌めて、
リュカたちは彼女をシエラ・ブエナの街まで送り届けた。
そして彼女が帰路についたのを見届けて、一行は宿に戻った。
「おかえりさん。ずいぶん遅かったね。今日の現場は遠かったのか?」
随分と打ち解けた様子で、宿の主人が出迎えた。
「いつもと同じ、二床でいいかね?」
しかしここでリュカが遮る。
「いや。今夜は、三床お借りします!」
これには主人だけでなく、エドワードたちも驚いた。
「随分と、景気が良いじゃないか。うちとしては大歓迎だよ。明日はよほど、大事な予定でもあるのかね。
まあいいさ。まいど」
そして食堂で、いつものテーブルに付いた。
「リュカ、俺は思うんだ。寝床だけじゃ不十分だって。明日のためにはもっと、英気を養っておいた方がいい。だから今夜は、ロースト肉皿、に、二枚頼もう!!」
これにはローラも吃驚してエドワードを諌める。
「そんなに贅沢したら、お金が……」
しかしそれを遮って、リュカがエドワードに賛同した。
「よし、二枚…頼もう! 明日は僕たちだけじゃない、リリアナさんの安全にも関わるから……。万全にしないと!」
「そうですわ……。そうですとも! 私も今夜はお肉、食べます!」
三人の晩餐は、こうして盛り上がった。
袋の中でバリアンも一緒に、ぷるぷると震えていた。
「じゃ、じゃついでに、お酒のほうも……」
「それは、駄目です」
「うん、駄目だね」
「はい……」
こうして三人と一匹は、明日への英気を十二分に養い、
そして初依頼のために万全を備えた。
来週金曜19時10分更新予定




