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The Brides of Destiny - 運命の花嫁たち  作者: Telda Caladlimion
第二部 第一篇 A New Journey - 新たなる旅立ち
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パクステルナ

第二部 The Two Homes - 故郷と祖国


第一篇 A New Journey - 新たなる旅立ち



<第一章 Devotion - 自由への舟出>


大理石でできた大きな石柱に支えられた、荘厳な神殿。

だが所々には、造りかけの部分がまだまだ目立っている。

そんな場所で、長い黒髪を後ろで束ねた一人の逞しい青年が、

背負子を担いで石材ブロックを運んでいる。

その瞳は灰色だが、赤みのある虹彩が光の中に映える。


「おっと! おじいさん、大丈夫?」

目の前でよろけた老人を、青年が支えた。

「いつも悪いねぇ、リュカ」

「ううん、いいんだよ」

そしてリュカは、老人の背負子からブロックを一つだけ取り下ろす。

「全部は持てないけど、これは僕が持っていくね」

そう言ってリュカは、そのブロックを肩に抱え、力強く歩いて行った。



「ふう。やっと昼か。じゃあいつもの場所で食べようか、リュカ」

明るい栗毛色の髪の青年が、リュカに声をかけた。

リュカ同様に逞しい体をしていて、背丈は少しだけ高い。

青藤色の瞳でまっすぐと、そして優しくリュカに視線を向けている。

「そうだね、行こう。エドワード」


そしてリュカとエドワードは昼食を受け取り、

彼らのお気に入りの大階段に腰掛けた。



「お水、どうぞ」

少年の奴隷が二人に水を差し出した。

「ありがとう」

リュカたちが笑顔で受け取ると、少年は他の奴隷にも水を届けに行った。


「ここに来たばかりの頃は、俺たちもああして、雑用をしてたな。もう随分と、昔の話に感じるよ。あれから、十年くらいは経つのか?」

パンを頬張り、そして芋粥を啜りながら、エドワードが呟いた。

「そうだね。冬と夏を、もう十回は繰り返したよ」

暫し黙り込んで食べる二人。


「いい加減さあ、ここを出たいよな。永遠にこんな場所にいるなんて、まっぴらだぜ!」

「声が大きいよ、エドワード。また懲罰房に入れられるぞ?」

しかし鼻息荒く、勝ち気な表情でエドワードは続ける。

「上等だよ! 懲罰が怖くて、奴隷が出来ますかっての」


「でもさ、ここから脱走なんて、無理じゃないかな。四方を海に囲まれてて、どこにも逃げ場なんてないぞ?」

溜息混じりにリュカが嘆いた。

「だったら、あの連絡船を奪って……」

そう言うエドワードを、食い気味に否定するリュカ。

「ダメだよ! そんな事したって、殺されてしまうだけだ。船は特に、警備が厳重なんだから」

「まあ、そうだろうなぁ……」


そして小さな干し肉の欠片を口に頬張り、

それを力強く噛みながら、エドワードが真剣な表情で言った。

「でもな、リュカ。最後は男として、覚悟を決めないといけない時だって、あるぜ?」

リュカは否定するでも、肯定するでもなく、ただ黙っていた。



 やがて、彼らの近くで監督官が、青銅の直管ラッパを吹き鳴らした。

つんざくような甲高い音が、大理石の神殿の中で鳴り響いている。


「やれやれ、正午の祈りが始まったか……」

うんざりすると言った表情で、エドワードが小声で唸った。

「さあ集まれ、咎人共!」

鞭を片手にした監督官たちが、周囲に散らばる奴隷たちを広間に集めた。


「奴隷に身を窶(やつ)せし、哀れなる咎人たちよ。さあ、祈りましょう。真(・)な(・)る(・)神(・)に。

貴方たちの罪が清められんことを……」

正面の祭壇に登り、神官が祈りを捧げ始めた。

リュカたちは少し後ろから、それを聞かされている。


「古き神は、死にました。しかし、嘆くなかれ! 間もなく、新たなる光が、この世を救わんがため、降臨なさります。古きものは過ぎ去り、新たなる秩序が、もたらされましょう。貴方たち咎人もまた、救われるのです。さあ、祈りなさい……。

神聖な(Per)る光の(Ordinem)秩序に(Divinae)よりて(Lucis)……」


「ペル・オルディネム・ルーキス」


「ぺるおるでぃねむるーきす、はいはい。終わったか? くだらねぇ……」

「しっ! エドワード、聞かれるぞ……!」

しかめっ面で吐き捨てるエドワード。

リュカは近くに監督官がいないかと、辺りを見回す。

そしていないことを確認して、安堵した。


神官が祭壇から降りると、すぐに監督官たちが太鼓を叩いて、

奴隷たちをどやし始める。

「さてと、作業に戻るかね。じゃあ後でな、リュカ」

そう言って、エドワードは持ち場へと戻っていった。

エドワードを見送り、そしてリュカもまた持ち場へと急いだ。



 「ご苦労さま。そこに置いていって。あとはやっておくから」

他の奴隷が石材を運び込んできて、それをリュカが受け取った。

その時ふとエドワードと目が合うと、

「当たりだな」と口だけ動かしてリュカに合図を送ってきた。

石材運びに比べれば、エドワード曰く”当たり作業”だという。

大まかに割られた様々な大きさの石材を分類し、

職人が指示する通りに表面を均したりといったことをする。

リュカはその日の午後、その職人補助の作業に割り当てられた。

エドワードも少し向こうで同じ作業をしていた。



 しばらく作業を続けていると、向こうに石材を運ぶ老人がやってきた。

リュカの持ち場ではなく、もっと奥の現場に運ぶ途中のようだった。

しかし体力が足らずに、よろめいて転げてしまう。


「貴様ァ! 貴重な石材に傷を付けおって!!」

すぐ横にいた監督官が老人を怒鳴りつけた。

「これしきでよろけるとは、信仰の心が足りんようだなァ! そんな不信心モノには、”神の愛”を注入してやろう!!」

そういって監督官は、持っていた鞭を振り上げた。


ビシッ!


鋭い鞭打音が現場にこだまする。


「なんだァ? 貴様はァ?」

リュカが咄嗟に老人に覆い被さり、その鞭を背中に受けていた。

叩かれた場所の衣服は破れ、赤くなった肌が見えている。


「だ、大丈夫?」

「リュ、リュカ! おまえさんこそ、大丈夫かい?」

これに監督官がさらに激昂する。

そしてもう一度、リュカの背中を激しく鞭打った。

苦痛に表情を歪ませながら、老人の上で耐えるリュカ。

そしてもう一度、今度は更に大きく、監督官が鞭を振りかぶる。

しかし――



「それくらいに、してもらえませんかね?」

鞭を振りかぶるその腕を、後ろからエドワードが掴んだ。

「貴様も、反抗的な目をしているなァ!」

そして振り向きざまに、監督官がエドワードの頬を殴る。

エドワードは片膝を突いた。頬は腫れ、切れた口からは血が滲む。

しかしそれでも、監督官を睨み続けている。


「どうやらまだ、殴られ足りないようだなァ……」

そして今度はエドワードに向けて鞭を振りかぶった。

しかしその時、数名の監督官が駆けつけてくる。

「何の騒ぎだ! やめよ!」

先頭の監督官がそういって、それを制止した。


「お前たちは奴隷二名を拘束して、房へ連れてゆけ。お前も、詳細の報告を忘れるな」

縄をかけられ拘束されるリュカとエドワード。

そして地下の懲罰房へと連れて行かれた。



 薄暗い地下牢獄。その頑丈な鉄格子の扉を開けて、

監督官がリュカたちを中へと乱暴に押し込む。

そしてコトンという音とともに、その扉の鍵は閉められた。

房の中に明かりはなく、外廊下に一つだけ松明が燃えている。


「いててて。あいつ、思いっきり殴りやがって……」

「大丈夫?」

「いや、傷で言ったら、お前のほうが酷いぞ。大丈夫だったか?」

「うん、エドワードが止めてくれたから、そんなに酷くないよ」

「そうか」

二人の話し声が、静かな房の中で響いている。


「いやしかし、正直言ってもっと酷く殴られると思ったけど、結構拍子抜けだったな。今日はツイてる日なのかもな!」

いたずらっぽく笑うエドワードの顔が、

外から差し込む松明の光に照らされている。

「ツイてたらそもそも、こんな風に懲罰房入ってないよ」

「確かにな」

リュカとエドワードは、房にいることを忘れたように笑った。


「さて、”今回は”いつまで、ここに入れられるのかねぇ。まあ、寝て待つしかないな……」

そう言ってエドワードは萎れた藁床に横たわる。

それを聞いたリュカもまた、その隣で横になった。



 リュカは足音に気付いて目を覚ます。

どれくらい寝たのか分からないが、出房の頃合いかと考え、

隣で寝ているエドワードの肩を優しく叩いた。

「ん? もう懲罰終わりか?」

目をこすりながら、エドワードは上体を起こした。

「分からないけど、誰か来るみたいだ」

そしてリュカは房の外を可能な限り覗き込もうと前へ乗り出す。

すると、一人の監督官の姿をした男が、房の扉の前に立ち止まった。


「君たちは、リュカと、そしてエドワードだね?」

そういう男には、リュカは見覚えがあった。

あの時、エドワードへの暴行を止めさせた監督官だった。


「私の顔は、知っているね。この区画の監督官長の、アルフだ。先程はこの懲罰房送りにして、済まなかったね」

そう言ってアルフは頭を下げた。


「それで、その監督官長様直々に、俺たちを房から出して下さるってことですかい?」

少し食って掛かるエドワード。

しかしそれに構わず、アルフは続ける。


「いや、出すことは出すが、一つ頼みがある。聞いてもらえるかね?」

「内容も話さずに、はいとは答えられないね」

少し意地悪な声色でエドワードが答えた。

「もちろん、そうだろうとも。頼みたいこと、というのはだね……」


そう言うとアルフは言葉に詰まり一瞬黙った。

そして決心したように続けた。

「頼みたいこと、それは、私たちと一緒に、この施設、パクステルナ大神殿から、脱走してほしいという事だ」


リュカもエドワードも吃驚し、目を丸くした。

そしてリュカは他の看守の存在が気になり、外を覗こうとする。

「大丈夫だ。人払いは済ませてあるからね」

リュカの気持ちを察したように、アルフはそう言った。


「あんた、教団の関係者だろ? だったら脱走も何も、自由に出られるんじゃないのか?」

エドワードは訝しそうにアルフを睨んだ。

「私たち信者は、君たち奴隷と大して変わりはない。一度入信し、私たちのように『奉仕者』になれば、もう自由に出入りすることは許されないのだ」

納得したような、していないような、不思議な顔のエドワード。


「でもさ。その奉仕者がどうして、ここから逃げたいんだよ?」

これを聞いた瞬間、アルフの顔色が悪くなったことが、

松明の光しかない暗がりでも、リュカには分かった。


「私の、娘が……。娘を、助けてほしい……」

そう言うと、アルフの目からは涙が零れ落ちた。


「妻を亡くした私は、悲しみに暮れ、無気力になった。そんな私を救ってくれたのが、このルミナリア教団だった。私は、すぐに奉仕者となることを決めた。そして修道会、光臨会の一員となり、ここに来た。

本当は私一人で、来るつもりだったのだ。しかし娘は、私のことが心配だからと。それで、自らも一緒に、奉仕者になると……。それで……。私のせいで、こんなことに……」

そう言ってアルフは泣き崩れた。


「娘さんが、どう困ってるのですか?」

リュカはアルフに優しく問いかける。

その声に少し落ち着いたか、アルフが再び話し始めた。

「娘を差し出せ。そう命じられたのだ」

「誰から?」

リュカの問いに、絞り出すようにアルフが答える。


「光臨会の幹部に、娘を献じるようにと、命じられてしまった……」

若い女性を差し出させて、その幹部が一体どうするのか、

リュカは想像もしたくはなかった。

そしてこれにはエドワードも怒りをあらわにした。

「そんなふざけたこと、させちゃ駄目だぜ! なあ、リュカ!」

「うん! 絶対に駄目だ」


「それで、娘さんを連れて、ここを脱走するんですね?」

二人の熱意に勇気をもらい、アルフの声に力強さが戻る。

「ああ、そうだ。君たちのような若い人の助けがいる。脱走する時も。そして、脱走した後も。

助けて、くれるかね?」

「もちろんだ、任せてくれ!!」

「一緒にここから逃げましょう! 必ず!」

そう間髪入れず、エドワードとリュカは快諾した。


アルフは房の鍵を開け、二人を出した。

そして準備のために二人を自室に隠す。

決行は今夜、そう決まった。



 アルフの計画はこうだった。

連絡船、物資運搬船は警備が手厚いので、これは諦める。

代わりに水路の小舟を一艇確保し、これを使う。

水路の一部は海につながっているので、ここから海に出て、

そして小舟で陸地を目指す。

小舟での海洋航行が危険そうであることは、

この計画を聞かされたリュカたちも重々理解できた。

だがこれ以外に、この絶海の孤島から逃れる術はない。

リュカたちは、そう覚悟を決めた。



 部屋で暫く待っていると、アルフが戻ってきた。

傍らには少し背の低い、若い女性を連れている。

深みのある長い金髪、そして透き通るような天色の瞳。

とても美しい女性だった。


「娘のローラだ」

アルフが女性を紹介した。

「ローラです。お二方、よろしくお願い致します」

そして二人も彼女に自己紹介をする。

エドワードは彼女の姿に少し見惚れていた。


「では早速、用意している小舟に向かおう。二人共、もう行けるかね?」

そう言って確認し、アルフは警備兵の官給品の剣を、

リュカとエドワードにそれぞれ一本手渡す。

そして奴隷の服を着替えさせた。


「この後は何が起こるか分からない。覚悟はいいね?」

「はい!」

「どんと、任せとけ!」

そして四人は部屋を出た。



 警備の巡回を巧みに避けて、屋外へと向かう。

そして水路脇に隠されていたボートを、

男たち三人で持ち上げて水路に浮かべる。

そしてそれに四人は乗り込んだ。


水路の流れに任せて、ゆっくりとボートは進む。

やがて屋内へと入る水門に差し掛かる。

これを手際よくアルフが解錠し、そして開いた。

そしてさらに水路を進む。



 同様にして、いくつかの水門を通り過ぎた。

再び屋外へと出て、また屋内へと入る水門が見えてくる。

その時――


「お前たち! 何をしている!!」

四人は警備に発見されてしまった。


「しまった! まずいぞ!」

そういってエドワードは腰の剣に手を伸ばす。

しかしアルフにそれを制止された。

そして彼は水門を開いて、ボートを中に入れる。

さらにボートから飛び降りて水路に立ち、

外からその水門を閉じ、施錠した。


「さあ、これを!」

その鍵を格子越しにリュカに手渡すアルフ。

「娘を、ローラを頼みます!」


「いやぁ! お父様! お父様!!」

泣き叫ぶローラ。

「ローラ、いきなさい! 皆さん、お願いします!」

そういって水門を背にして、警備兵と向き合った。


次々と集まってくる警備兵から、

少しでも長く水門を守ろうと、アルフは奮闘する。

そんなアルフの決意を汲み取り、

水門に泣き縋るローラを引き剥がして、二人はボートを進めた。



 そこからは水路を道なりに進んだ。

いくつかの水門を同じようにして開け、そして通り過ぎた。

やがて水路に潮の匂いが立ち込めてくる。

「もうすぐ海に出られそうだね」

リュカがそう小声で呟き、ボートを漕ぎ続ける。


ローラは泣き続けているが、少しだけ落ち着いた様子だった。

エドワードは無言で彼女に寄り添っている。

こうしてついに、海へと出るための最後の水門に辿り着いた。

しかしその時だった。



 そこは少し広い場所で天井も高く、上階につながる通路もあった。

しかしその通路の奥から、なんと巨体の怪物が姿を現す。

七尺は優に超える。長身のエドワードよりも頭二つくらいは大きい。

見上げるほどの巨体の、鬼のような恐ろしい顔の怪物だった。


その巨人を見て、ローラが震える。

「グ、グルウァリス……。グルウァリスです…。光臨会幹部の……。私を差し出せと、父に命じた……」


「ローラぁ。さぁがしたぞぉ! どぉこに行こうと、しているぅ」

不快な野太い声で、グルウァリスが吠えた。

そしてその右手に持つ鋼鉄の金棒を床に叩きつけた。


グルウァリスの両隣には、少し小ぶりな鎧兵がいた。

片方は剣と盾を、片方は両手に斧を装備している。

その背丈は、おそらくローラよりも若干低いくらいだった。



 リュカとエドワード、そしてローラは一緒に、急ぎ護岸に上がる。

彼女は後ろに下がらせ、二人はそれを守るように前に出た。

そして剣を抜き、正面に身構える。

しかし戦いの経験が殆ない二人は、緊張に顔を強張らせた。

「いくぞ、リュカ……」

呼吸荒く、エドワードが震えがちに低く囁いた。

そしてグルウァリスは、この鎧兵たちに襲いかかるよう命じた。



 最初に動いたのは、剣盾の鎧兵だった。

無駄のない動きで、静かに一歩ずつ近づいてくる。

強張って動けないエドワードに狙いを定め、

そして鎧兵は真っ直ぐと向かって来た。

リュカは咄嗟にエドワードの前に出る。

そして一気に間合いを詰めて、その肩に剣を振り下ろした。

しかし分厚い鎧に遮られ、リュカの剣は弾き返されてしまう。

だがしかし――


その鎧兵は、ほんの暫くだが全く動かなくなった。

そしてどうしてか、その鎧兵がリュカたちに背を向け、

グルウァリスたちの方に向いて剣を構える。


それはほんのひと瞬きの間に、鎧兵はもう一人の鎧兵に斬り掛かる。

そして見事なまでの剣筋で、その鎧の間へと斬り込んだ。

斧を床に落としてその鎧兵は倒れ、そして動かなくなった。



 ウガアアアア!

グルウァリスが激昂し、咆哮を上げる。

そしてリュカたちの方へと突進し、金棒を振り上げた。

その前に割り込む鎧兵。

振り下ろされる金棒は、鎧兵の盾へと落ちて、

そしてそれは巧みに床へと流され落下した。

がら空きとなっている腹部を、鎧兵は鋭く剣で突く。

グルウァリスは野太く呻き、そしてよろめいた。


「やああああ!」

エドワードは勇気を振り絞り、グルウァリスに斬り掛かる。

だが少し足がもつれたか、切先が胴には届かず空を切る。

しかし転びがちにも、それはその巨体の脚部を斬り裂いた。

堪らずに膝をつくグルウァリス。

その刹那、リュカは脚いっぱいに力を込めて、前に踏み込む。

そして思いっきりに剣を左から右へと水平に薙いだ。


リュカたちの方にうつ伏せで倒れるグルウァリスの巨躯。

しかしその太い首からは頭が消え、血しぶきを上げる。

その頭は宙を舞い、そしてごとんと落下した。



「今だ、急ごう!!」

余韻に浸るまもなく、ボートに乗るようリュカは皆を急かした。

しかし三人とともに、あの鎧兵も一緒にボートへと乗り込む。


「お、おい。大丈夫か? こいつ、連れて行くのか?」

「大丈夫! そんな気がするんだ」

「そうなのか?」

困惑するエドワード。

「そうですよ! 助けて下さったのですから」

「まあ、リュカとローラがそう言うなら。うん、きっと大丈夫だな! さあ、行こうぜ! リュカ!」


そしてリュカは、最後の水門を開け放つ。

こうして三人は、あの鎧兵も一緒に、自由を求めて海へと漕ぎ出した。


毎週金曜20時20分更新予定

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