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大魔王の危機

第6話です。いよいよ、学園生活が始まります。そして、大魔王である彼に危機が訪れます。どうなるのでしょうか。今回も楽しんでくれたら幸いです

意識が戻った時にはすでにサイカはいなくなっていた。代わりにユイに頭を抱きしめられていた。息が苦しくなったので「おいおい、息が苦しいぞ」と言ってその手から逃れた。

やはり、体は疲労困憊しており、特に力いっぱい地面を蹴った足は立ち上がることさえできなくて機能していなかった。


「大丈夫ですか」


ユイに心配されてしまった。

俺は大抵のことではまったく疲れない。けれど、ユイにもすぐ気づかれてしまうほど体調は優れていないらしい。

俺はなるべく心配させないように言った。


「大丈夫だ。ちょっと疲れただけだ。すぐに回復する」


そうして、俺はなるべく楽な体勢になる。そういえば、さっきまで何か話し声が聞こえた気がする。もしかして、ユイとサイカで何か話していたのだろうか。

気になったので俺はユイに訊いてみることにした。

それに、サイカの正体に俺は薄々気づいている。あのとき、ユイが突然サイカに攻撃されそうになったとき、俺がとっさに動けたのも俺の中の何かが危険信号を出したからだ。

それはおそらく、あの天使が言っていた『勇者』に起因するものなのだろう。

そして、サイカはそんな俺を攻撃してきたのだから悪役のタイプだ。

だから、俺は何を喋っていたのか気になった。


「ところで、何かサイカと話してなかったか?」


「聞こえてたんですか?」


「いや、何らかの話し声が聞こえてきた程度だ」


ユイは俺が聞き取れるようにと思ったのかゆっくりと口を開いた。


「実はサイカから情報を入手したんです」


「な、情報を!?」


まさか、サイカが何か喋ったのというのか。俺は勝手にサイカのイメージを、何も自分のことを喋らない奴だと決めつけていた。

それもあり、俺はめちゃくちゃ驚いた。

俺は顔をずいっと近づけて訊いていた。


「情報は何だ?」


ユイは少し、面食らった顔をしていたが気にしない。


「サイカは『魔』という組織の人らしいです。私たちがその組織にとって邪魔だから排除しろと言われて攻撃したと言っていました」


『魔』そして、組織。

そいつらは俺が勇者だということを知っているということなのか。そいつらがあの天使の言っていた真の悪か?

ユイは私たちと言っていたが、きっと対象は俺だ。俺が、勇者だから邪魔なのだろう。

俺はふと思った。『魔』という組織は俺たちが魔術学園に入学する所を狙って攻撃してきた。つまり、俺が魔術に磨きをかける前に、まだ未熟な時に始末しようとしたのではないか。

俺は前世が大魔王だった。それはあの天使いわく、真の悪によって生まれる種族が異なってしまったからだという。

きっと、『魔』という組織は『勇者』という俺を確実に倒すためにあの異常なほどの実力を持ったサイカを送り込んできたに違いない。

だとするならば、俺が大魔王の力を持っていて、それで倒せなかったのなら、『魔』にとって予想外なことだったのかもしれない。

これは大きな利点だ。

だけど、真の悪がそいつらだとは限らない。けれど、少なからずこれからのことに影響は出てくるはずだ。なら、この利点を有効活用することで出し抜くことができるのではないか。

これはまだ序章だ。

これから、きっといくつもの困難が待ち受けている。俺はもっと強くならなければならない。

俺は静かにその覚悟を決めることにした。


「…俺達にはやるべきことができた。まさかこんな早くなるとは思っていなかったけどな」


「え?」


「…まぁ、今日は帰るとしようか。また後で話すからちょっと助けてくれ」


さっきまで、いろいろと考えてはいたものの、今は体力もないし足も全然動かない状態だ。だから、今日のところはいったん帰ることにした。

俺はユイの手を借りて、そのまま帰路についた。

その日の夜。俺はひたすらに特訓していた。

限界を突破した力を使っていて疲労困憊だったが、俺は大魔王の力を使って無理やり回復した。

サイカがそうだったように『魔』という組織には大魔王のフィジカルに匹敵する奴らがいるかもしれない。

転生して、大魔王の力は弱くなった。ただ、いくら弱くなったといえあの攻撃に耐えたサイカはあまりにも異常だ。

だから、俺は魔術と同時並行で体を鍛えていた。今までも大魔王の時の癖が抜けず筋トレしていたことはあったが、それはあくまで現状維持に過ぎないものだった。

けれど、今回は違う。

『魔』という組織は俺たちに仇をなす存在に違いない。ユイや大切な存在を守るためにひたすらに努力する。

もちろん魔術も同時並行で練習する。魔術はやっぱり楽しかった。魔術を使って他の人を圧倒する感覚はフィジカルで圧倒するのとは違ってすごく楽しかった。

そして、次の日の朝。


「もう!お兄様、どうしていつもいつもそうやって寝てるんですか!」


俺はどこか既視感のある光景に出くわしていた。


「あと、5分…」


「あーもう。いいです。勝手にしてください!」


そう言ってユイは部屋から出て行ってしまった。

なんか機嫌悪くないかあいつ。

俺は先ほど宣言した通りあと5分寝ることにする。睡眠は大切だ。

起きて時計を見ると30分進んでいた。


「やっべ!」


俺は飛び起きて急いで制服に着替える。それから、歯磨きと洗顔をして、朝ごはんは少しだけ食べた。


「お兄様のこと昨日のことで少し尊敬しましたがやっぱり撤回しますね」


俺が登校する準備をしているといつの間にかユイが俺の部屋に入ってきた。


「仕方ないだろ。睡眠は大切なんだ」


「なら、早く寝て早く起きれるようにしてください」


ユイから正論のパンチが飛んできた。それは見事に俺の胸を貫いた。


「すみませんでした」


「分かってくれたならいいです。そういえば昨日はすごく濃い一日でしたね。なんだか、昔のことのようです」


それは俺もそうだ。まさか、ただの試験があんなふうになるとは思ってなかったし、いろいろなことが起きすぎて情報の処理が間に合っていない感じがした。

俺たちは家に向かって行ってきますと言って外に出た。


「確かにな」


「あのサイカとかいう人が『魔』という組織の人間というのは本当なんですかね」


「それはそうだろう。じゃなきゃ俺たちを殺そうとする理由がない」


「あの限界突破したお兄様の一撃を耐えきるフィジカルってやばいですよね」


「やばいってもんじゃない。ユイ、お前は俺みたいにとんでもないスピードで動ける奴を俺以外で知ってるか?」


「そんなの知るわけないじゃないですか。見たこともないです」


「それだけ、俺のフィジカルは強い。なのに、あいつはそんな俺の攻撃を受け止め切った。正直に言ってこの世界であれだけの耐久度を誇る奴なんてあいつくらいだろうな」


「ちなみに気になってることがあるんですけど、どうやってあの力を手に入れたんですか?」


ギクッとした。そういえば隠すことをすっかり忘れていた。

まずい。バレてしまうのか!?


「い、いや、べ、別になんてことない、ぞ?そ、それこそ俺は努力して、手に入れただけだよ。いや本当に何でもないから、気にすんなって!?」


「慌てすぎじゃないですか?」


「くそう、こういう時だけ察しがいいんだから」


「丸わかりすぎるんですよ。お兄様が。で、何を隠しているんですか?」


どうするべきか。

俺は確かに妹であるユイのことは信用しているし、なるべく信頼したいと思っている。けれどあれだけ騒がれた大魔王が実は俺だったと明かしたら、今の関係が崩れてしまうのは明らかだろう。

やはり、隠し通すべきだ。でも、どうやって今の状況を打破できる?


「もしかして、お兄様は大魔王の生まれ変わりとかですか?」


「!?!!??」


ユイはにやにやとしながら言っているのだから冗談のつもりだったんだろうけど、あまりにも勘が良すぎるユイに俺はひどく驚いてしまった。


「え、その反応、まさか本当に生まれ変わりなんですか!?」


「そそそそそそ、そんなわけ」


ユイは俺のことを疑いの目で見てくる。これは終わったな…

俺は絶望し、上を向いて大空を仰いだ。

空が綺麗だな…


「…なんか勘違いしてそうだから言いますけど、たとえお兄様が大魔王の生まれ変わりだとしてもお兄様はお兄様です。なんらかの犯罪とか犯したら当然犯罪者としてみますけどね」


「…本当か?俺が前世でいろいろなことをやっていたとしても俺を兄としてみてくれるのか?」


「当然です。それに前世がどうであろうとお兄様は今の人生を生きているじゃないですか。大事なのは今なんです。前世とか関係ないと思います」


ユイはそういった。

その言葉は俺にとって天恵だった。今まで、自分のことを隠してきていて実は苦しかったのだ。


「…ありがとう」


俺は素直にお礼を言った。


「てことはやっぱり前世は大魔王だったってことなんですか」


「…ああ」


「なるほど、謎が解けました。確かにあれは大魔王の力ですね」


それから、俺たちは雑談しながら学園へと向かった。

昨日見たときは試験のことで頭がいっぱいだったから気づかなかったが、校舎もかなり大きいようだった。

学年は4学年まであって、俺のクラスは1-Bユイは1-Cらしい。


「鷹鳥魔術学園はA~EまであってAクラスが一番高いランクらしいです」


ユイから補足が入った。

つまり、俺たちはちょうど中間くらいだ。正直。Aランクくらい行けてると思っていたから、正直びっくりした。


「なんで、私がCなんですか…」


それはユイも同じらしく、悔しそうな顔で嘆いていた。


「さすが、世界最高峰だな」


「…そうですね」


俺たちは教室に向かって行った。

そこには、目を疑う光景が広がっていた。


「やぁ」


サイカが俺のクラスにいたのだ。

まさかのまさか、クラスメイトにサイカがいるとは。まあ、一応学園の試験にいましたからね。おかしくはないです。そして、今後も読んでいっていただけると非常に嬉しいです。今後も読者として僕の作品を読んでいって下さい

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