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魔の組織と本当の力

前回、かなり長くなってしまったので今回で短く感じてしまうかもしれないです。すみません。

これから、1話を3500文字以内におさめて、長すぎたりしないように努力しますので、今回も読んでいってくれると幸いです。

「…行くぞ」


俺は立ち上がる。たったそれだけの動作なのに体が満ち満ちているような、何かがはち切れそうな感覚がした。


「何をしたかは知らないが、次はどんな攻撃をしてくるんだ?楽しみだなあ」


サイカはにやにやとしながらそんなことを言った。

そんなサイカに向かって俺は一歩踏み出す。

ただそれだけの行動。

なのに俺はサイカを越えて壁にとんでもないスピードで激突してしまった。


「…は?」


遅れてサイカの声が聞こえてきた。

軽く足を踏み出しただけで今までの俺のスピードよりも速いスピードだった。

自分の中にはこれだけの力が眠っていたのか。


「…これならいけるかもな」


と俺はつぶやいた。

今実感した。この力を出せば、サイカは確実に倒せると。

俺は、サイカに対して思ったことがある。サイカは攻撃してこないけれど、防御はする。つまり、攻撃力はなくとも防御力だけはとんでもなくあるというタイプなのだろう。


「これが、リミッターを解除した力…」


ユイが驚きの声を出していた。

俺は今度こそミスらないように慎重に、されど思い切りサイカに向かって走りだした。今度は反射神経も活用して、拳を走りだすと同時に突き出した。

音が、なくなるのを感じた。圧倒的なスピードに音が追い付いていなかった。次の瞬間には目の前にサイカがいる。俺は拳をサイカに向かって突き出す。

見事に直撃した結果、とんでもないスピードでサイカが吹き飛んだ。拳には骨が折れる感覚が伝わった。

遅れて、鼓膜が破れそうになる轟音と衝撃波が届いた。


「…これが俺の本当の力か」


だが、体に違和感が生じる。その違和感は一瞬で大きくなり、立っていられなくなる。


「お兄様!」


ユイの声が聞こえるときにはもう意識はなくなっていた。





♢♢♢♢♢♢♢♢





本当に、一瞬だった。

お兄様の体にかかっているリミッターを解除するイメージで封印魔術を使う。

正直、そんなリミッターを解除して大丈夫なのかという心配はかなりあった。けれど、相手もいまだに信じられないお兄様の圧倒的な力での攻撃を受け止めていた。


「…行くぞ」


お兄様がそう言った。


「何をしたかは知らないが、次はどんな攻撃をしてくるんだ?楽しみだなあ」


サイカがそういった直後。

次の瞬間にはドォォォンと大きな音が聞こえた。

それはお兄様が、壁に激突した音だった。

そのあまりにも早すぎるスピードに私は。


「これが、リミッターを解除した力…」


と思わず驚きの声をこぼしていた。

次の瞬間だった。

お兄様の姿が消えたと認識した瞬間、鼓膜が痛くなるレベルの衝撃波と轟音が聞こえた。私は思わず耳をふさいだ。

サイカと名乗っていた男はそのスピードの攻撃を防げず、目で追えないスピードで吹き飛んでいった。

私は驚きのあまり声も出なかった。けれど、お兄様はあれだけの力を出して、大丈夫なのだろうか。

私の予想は的中し、お兄様が何かをつぶやいた直後、お兄様の体がふらついた。


「お兄様!」


私は急いで駆け寄り、その体を抱きかかえた。やっぱり、息は荒くて疲労困憊の状態だった。

ただ、お兄様の体は強靭であれだけの威力を出したというのに、この状態で済んでいるということはお兄様は何かの力を隠しているに違いない。

私は少しの間、それが何なのか考えてみたが結局見当もつかずあきらめた。

そして、サイカのほうはというとあの攻撃を受けてなおまだ意識があるようだった。


「ハハッ、流石だなあ」


「あなた、まだ生きているの…?」


サイカはゆっくりと立ち上がり、こちらに歩いてくる。

まずい、こちらはお兄様は意識がないし、お兄様のリミッター解除をしたせいで、私の魔力も尽きている。

この状況で戦うのはあまりにも不利だ。逃げようにもお兄様を抱きかかえているせいで逃げられない。


「安心しろ、もう戦うつもりはない」


だが、サイカのほうは違うようだった。

だけど、まだ安心はできない。だから、私もサイカが歩いてくるのに合わせて距離をとる。


「だから、攻撃するつもりはもうねえって」


「いや、信用できるわけないに決まっています」


すると、サイカは立ち止まり、その場にあぐらをかいて座った。もう戦うつもりがないのは事実らしい。けれど、警戒は怠らない。


「…まあ、またどこかで戦う機会があるだろうな。またそん時だ」


サイカはそういった。またどこかでと言ったのだからやっぱり今後戦うつもりはあるようだ。

それに、サイカは得体が知れない。何を目的に私たちを攻撃してきたのかも不明だ。要するに、正体も何もかも全く分からないのだ。

私は警戒を強めた。


「…俺についてひとつ言っておこうか」


突然、サイカはそう口を開いた。

まさか、自分についての情報を喋りだすとはまったく思っていなかったので私は驚いた。


「……俺は『魔』の従者だ。お前たちは倒す必要があったと組織が認識した。だから、俺がここに来たんだよ。ま、お前たちと、特にそいつとは俺が戦いたかっただけだけどな」


サイカはそう言った。

私は首をかしげた。『魔』の従者とはどういうことだろう。それに組織ということはほかに私たちに危害を加えようとする人たちがたくさんいるということなのか。


「これ以上何かを話すつもりはない。それにどうせいつか分かる。そん時のお楽しみだ」


私はいろいろと聞きたかったし、お兄様を傷つけたのだからここで逃したくもない。けれど、そんなことができる力は私には無い。

だから、後でお兄様にすべて話そうと私は心のなかで決めた。


「じゃあな」


サイカはそういって、歩いて行ってしまう。

そこで、腕の中でモゾっと動く感覚がした。


「お兄様」


お兄様が起きた。

そう思った私はお兄様の頭をぎゅっと抱きしめた。


「…おいおい、息が苦しいぞ」


「あ、すみません」


私はお兄様を離した。お兄様はやっぱり顔色が悪くて体調も優れないようだった。


「大丈夫ですか」


私がそういうとお兄様は微笑んで。


「大丈夫だ。ちょっと疲れただけだ。すぐに回復する」


お兄様は体勢を変えて、足を伸ばして座った。


「ところで、何かサイカと話してなかったか?」


「聞こえてたんですか?」


「いや、何らかの話し声が聞こえてきた程度だ」


お兄様のほうから話を振ってきたので私はありのままに話す。


「実はサイカから情報を入手したんです」


私がそういうとお兄様は目を丸くした。


「な、情報を!?」


お兄様はこれまでにないほど驚いていた。そこまで驚くものなのかと私は少し不思議に思った。


「情報は何だ?」


お兄様は顔を近づけて食い入るように質問をしてきた。


「サイカは『魔』という組織の人らしいです。私たちがその組織にとって邪魔だから排除しろと言われて攻撃したと言っていました」


お兄様は思案顔になり、何も言わなくなる。おそらく、何か熟考しているのだろう。お兄様は何かを考えているとき何も言わなくなる癖がある。


「何を考えているのですか?」


何を考えているのか気になった私はお兄様に質問した。けれど、それが届くこともなく虚空に消えていった。

やがて、お兄様がゆっくりと口を開いた。


「…俺達にはやるべきことができた。まさかこんな早くなるとは思っていなかったけどな」


「え?」


私はお兄様の言っていることがよくわからなかった。

やるべきこととは何だろう。


「…まぁ、今日は帰るとしようか。また後で話すからちょっと助けてくれ」


そういったお兄様は足がガクガクと震えていた。

当たり前だけど、限界を突破した力を出していたのだ。いくらお兄様といえそんなの耐えられないに決まっている。

私はすぐにお兄様の肩を持ち、何とか立ち上がって帰路につくことにした。すでに体育館の中から人は消えており、残ったのは私たちだけのようだった。

けれど、ふとこの体育館は少し頑丈すぎないかと思った。あの、限界を突破したお兄様のとんでもない一撃を繰り出した時だって、この体育館のダメージは普通ならとんでもないはずなのに、この体育館は傷一つついていない。

いったいどんな魔術ならこのレベルの耐久度にすることができるんだろうと私は疑問に思った。


少しユイ視点を書いてみました。今後、結構こういう表現多くなると思います。楽しんでくれたら幸いです

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