試験
そろそろ大魔王の力が出てきます。試験で事件が起きますが元大魔王兼勇者な彼はどうするのでしょうか。今回も楽しんでくれたら幸いです。
※言うの遅れましたが、話を書き終わった時点で投稿しようかなと思ってます。不定期投稿になってしまいますがご了承ください。
その場所は、思ったより人が多かった。鷹鳥魔術学園はこの世界で最高峰の魔術学園なだけあって、入るのには試験を受けることになっていた。その試験を突破するため、あたりにいる人間はみな、相当な実力を持っているように感じた。
俺は、これだけの人たちがこんなにたくさんいるのはさすがに最高峰なだけあると思っていた。
それはユイも同じらしく、「たくさんの実力者が集まっていて、圧がすごいですね」と言葉をこぼしていた。
この魔術学園の入学式は普通の入学式とは全く異なる。まず第一次試験を受けなければ入学式を受けることはできないし、入学式自体が試験となっているのだ。
俺は、少しだけ不安を感じていたものの周りがこの感じであるならば突破は余裕だろうと思っていた。
と、そこで、近場のスピーカーからチャイムが鳴った。
「新入生の皆様、今日は鷹鳥魔術学園への入学式参加、おめでとうございます。入学式にあたって、いくつかの連絡事項がございます。まず、入学式の会場は当学園が保持する体育館にて開催いたします。それから-」
「会場は体育館か。それって、広さ的に大丈夫なのか?」
「何を言ってるんですか。鷹鳥魔術学園の体育館は一般的な体育館の少なく見ても10倍はあります。とんでもなく広いですよ。まあ、実際は体育館とは名ばかりの競技場的な場所でもあるようですけど」
「そうなのか」
初耳だ。まあ考えてみれば、実力者が集まっているのにただの体育館程度なわけがないか。一瞬で耐え切れなくなってしまうだろう。
「ちなみに、お兄様は試験を突破できるんですか?」
「何を言ってるんだ。こう見えても俺は強いんだぞ?」
「試験でこの人数が半分になりますけど」
「な、そうなのか!?」
「お兄様ちょっと知らなさすぎじゃないですか?」
ユイからあきれられてしまった。だって仕方ないだろう。そういうのをいちいち確認したくないに決まっている。
「そういうのをいちいち確認したくないって顔してますね。お兄様」
顔に出てしまっていた。
「-では、会場にお集まりください。」
ピンポンパンポンとなって、アナウンスが終わった。どうやら、今から体育館に集まらなければいけないらしい。
「さて、行きますよ。お兄様」
「ああ」
先ほどまで軽口をたたいていたが、内心、かなり楽しみである。なぜなら、今の俺の実力を正式に確かめることができるからだ。
俺たちは体育館に向かって歩いて行った。
そこは、予想よりもだいぶ広かった。
「圧巻ですね。予想よりもだいぶ広いです」
「にしても、広すぎやしないか」
先ほどまでいた人の大群もこの空間の中ではまばらに見えた。
「確かに、ただの試験にしては広すぎる気がしますね」
そこで、キーンとマイクの音が鳴り響いた。全員の視線が、ステージ上の中央に集まる。そこには一人の女性が立っていた。
俺はその女性に対して、何か既視感を覚えた。
「皆様、本日はお集まりくださりありがとうございます。当学園はこれより入学式とは名ばかりの試験を始めさせていただきます」
自ら、入学式とは名ばかりの、と言う態度に少しだけ驚いた。厳格なイメージがあったからだ。
「試験の内容としましてはバッジを2つ以上所持したまま、一定時間たったら合格という形になります。また、配るバッジの数は一人一つとなります」
「なるほど、シンプルで分かりやすい」
「ただ、簡単にはいかなさそうですけど」
それはそうなのだ。周りにはさっきから言っているが、相当な実力者が集っている。そいつらを倒して、バッジを奪い取らなければならない。
「お兄様が心配です」
「そうか?俺は勝ち残れる自信しかないけどな」
「その自信はどこから来ているんですか。いつもだらけているのに」
ユイは相変わらずのあきれ顔でそんなことを言ってくる。
「まあ、見とけばわかるよ」
俺は自信満々にそう告げる。
「…ひとまず、私から離れないでくださいね」
そんなに心配することはないのに。知らないのだろう。俺が努力家なことを。
「では、試験を開始いたします」
そう、ステージ上の女が言った直後、全体が緊張に包まれる。それと同時に手元にバッジが現れた。
「すごいな、これだけの人数に一斉に配れる魔術なんて見たことがない」
俺はふと、これだけのことを軽々とやってのけるあの女は何者なんだろうと気になった。だが、これから試験が始まるというのにそんなことを気にしている余裕はないのですぐに周りに意識を向ける。
すでに、近場にいる人はこちらにも意識を向けているようだった。
「はじめ!!」
そんな掛け声が聞こえてきた瞬間、あたりから爆発音やら何やらが一斉に聞こえてきた。
「お兄様!!」
ユイが俺のそばにやってくる。腕をつかみあたりに防御魔術を発動させた。
「なにボーっとしているんですか!やられたいんですか!?」
ユイの顔には緊張が浮かんでいた。
「大丈夫だって言ってるだろ」
「大丈夫じゃないから言ってるんです!」
すると、近くから声が聞こえてきた。
「こんなところでいちゃつくなよ。くそカップルが」
俺はすぐそちらに振り向く。すでに、魔法陣を展開していて、瞬時に魔術が放たれる。
ドォォンと爆発音がする。だが、ユイの防御魔術のおかげでこちらは無傷だった。
「ほう?俺の魔術を防御するなんて高度な防御魔術だな」
「誰だ?」
「ンなことはどうでもいい。どうせ敵同士なんだし、お前に名乗る名はねえ」
そして男は巨大な火の玉を発現させた。その大きさから察して、相当な威力を持っていそうだ。
「はああ!!」
男が叫ぶと同時に火の玉が豪速で飛来する。流石にユイの防御魔術でも厳しそうだった。なので、少し実力を出してやるとしよう。
俺は飛来してきたそれを手を薙いだだけでかき消す。
「…は?」
男の素っ頓狂な声が聞こえてくるが、それを無視し魔術を発動する。発動させた魔術は男の魔術のように巨大な火の玉だ。だが、男が発現させたものよりはるかに大きく、はるかに早く、超スピードで飛来させた。
圧倒的な威力を持っていたそれは、男に直撃する。
「ちょっとやりすぎたか?」
男の姿はもうそこにはなかった。ただ死んだわけではなく、遠くのほうに吹き飛ばされていた。
体育館なのだから地面がえぐれてしまわないかと思ったが何らかの魔術が発動されているのか全くダメージが無かった。
「……は?」
すぐそばから、素っ頓狂な声が聞こえた。ユイだった。
「ど、どういうこと?意味が、分からない」
ユイはひどく困惑したほうにうろたえていた。当たり前だろう。今まで弱いと思っていた、兄が、こんな力を持っていたのだから。
「どうだ?見直したか?」
すると、ユイは俺の体をペタペタと触ってきた。
「ちょ、なんだよ。くすぐったいぞ」
俺はユイの手から逃れようとすると、簡単に逃れることができた。
「いきなりなんだよ」
「…本物ですよね」
「本物だ!」
どうやら、あまりに想像とかけ離れていたようで本物かどうか怪しくなってしまったらしい。
仕方ないと言えば仕方ないが。
「まあ、いきなりこんな力を持っていたなんてびっくりするとは思っていたけどな」
俺がそういうとユイは顔を赤らめて、
「ほんとですよ!どうして今まで黙ってたんですか!?」
と大声で言われてしまった。まあ俺自身、こんなに威力があるとは思っていなかったから、そこまで驚くのもうなずけた。
「というか、あの威力で死んでませんよね…?」
「安心しろ。あそこで倒れてるだけだ。それに当たる瞬間に防御魔術も発動していた。あの程度じゃ死なないだろう」
「…そこまで……」
ユイが何か言いかけていたが、それを無視してバッジを回収するために男のそばに行く。バッジを回収して、ひとまず安堵する。
「よし、あとは一つとれば俺たちはそろって合格だな」
「…そうですね」
ユイが何か浮かない顔をしていたが、いつ襲われるかわからない状況なのでいったん無視する。
俺たちはもう一つバッジを手に入れるためにあたりを見回した。直後、とてつもない衝撃音が近くから聞こえてきた。
「…!?」
俺は、そのあまりにまがまがしい気配を感じ取り、一気に臨戦状態となる。いや、ならざるを得なかった。
「お?なんか、とんでもない魔術がここで起きたから来てみたら、たった二人か」
目の前の男からはまるで、魔族と対峙したかのような魔の気配を感じた。なぜそれを目の前の男から感じるのかまったくわからないが、一つだけ明らかなことがある。
こいつはヤバい。
瞬間、目の前の男の姿が消える。いや、違う、超スピードで動いただけ…!?
「ぐっ……!?」
意識した瞬間にはすでに男の拳が俺に直撃していた。人間とは思えないほどに重みがあり俺の体は吹き飛ばされる。
「お兄様!!」
ユイがこちらに向かって走ってくる。だが男が許さない。一瞬にして背後に回り込み俺と同じように打撃を与えた。
「あがっ…!?」
ユイの体は弾丸のようなスピードで吹き飛んだ。壁に激突し、そのまま動かなくなる。
「お前…!」
「なんだよ。こんなものか。結局魔術を使うまでもなかったか」
「…誰にケンカを売ってるのか、わかってるのか」
「は?何言ってんだお前負け惜しみか?」
男はあざ笑うように表情を歪ませた。
「というか、お前よりも手加減してやったのに女のほうはめちゃくちゃよええな!軽めだったのにもう気絶しちまったぜ?こんなことなら魔術学園に来なけりゃよかったな!どうせすべて無駄なんだからよ」
と男が言った瞬間俺の中で何かがぷつりと切れた。
「……お前死にたいのか?」
俺はユイがどれだけ頑張ってきたのか知っている。努力家な俺だからこそわかる。あいつの努力は普通の人間の比じゃない。どんな時でも魔術に磨きをかけて、さらに座学も一生懸命に頑張ってきたのだ。
それが俺があいつのことを好いている一番の理由だ。それにこの日をどれだけ心待ちにしていたか。
それを、すべて無駄、だって?
「お前は努力している人間をそうやって無価値だと切り捨てるのか?」
「当たり前だろ。どれだけ努力していようが、そこに実力が伴わないのなら無駄だろ」
「…そうか分かった」
俺はブチギレていた。大魔王の頃からそうだった。努力している人間をけなす発言をしたやつはことごとく殺してまわっていた。それは俺のエゴなのかもしれない。けれど努力が俺は大好きで俺が魔術をここまで昇華させたのも努力。
目の前の男は努力を無駄だと切り捨てた。知らない奴をけなしたのであればであればここまでキレてなんかいない。でもユイのことをけなした。それがマズかったのだ。
俺は目の前の男を殺すつもりであの力を、大魔王の力を解放する。
体が一気に軽くなる。今までは死んでいたのかと錯覚するほどの力を感じる。
「…俺の使命を教えてやる」
「は?」
「それは悪を倒して、この世界に本当の平和をもたらすことだ。よく覚えておけ、俺は『勇者』だ」
俺は一歩足を踏み出した。
ちょっといいところで終わってしまいましたが次回期待して待って頂けると嬉しいです。かなり、厨二病感溢れる感じにしようかなと思ってますので来週も見ていってくれると幸いです。




