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勇者

前話で本編いけなかったのでここでようやく本編入ります。楽しんでくれたら幸いです。

※少し余裕があるので今日中に投稿しておきます。

そこは真っ暗な世界だった。まるでこの世界の闇を、深淵を覗いているようだった。


「…?なんだ…?」


俺は不思議な気配を感じて振り向く。そこには白いレースの服を着て、頭上に光輪があり、まさしく天使と呼ぶのにふさわしい姿をした女がいた。

だが、天使族の天使とは全く違う。あれと似てはいるが気配が天使族のそれじゃない。もっと神々しく、それこそ神に近いようなそんな気がした。

俺は思わず声をかけていた。


「お前は誰だ?何者だ?」


ゆっくりと天使(?)が口を開く。その動作すら、俺を魅了する何かを感じさせた。


「私は天使。この世界を創った、創造神です」


「…はぁ」


創造神?

俺はよくわからなかったがその言葉には妙な納得感があった。


「あなたにはしてほしいことがあります」


「してほしいこと?」


「ええ、この世界を救ってほしいのです」


「…へ?」


思わず、素っ頓狂な声が出た。

この世界を救ってほしいだって?

「お前、馬鹿なのか?」


「そう思われるのも仕方ありません。それだけのことをお願いしていることはわかっています」


「そもそも、俺は死んだんだ。救うことなどできないじゃないか」


「そうおっしゃるということは、救うこと自体が嫌というわけではなさそうですね」


「…」


横暴な神だ。俺はそう思った。


「というか、この世界を救うって俺こそが元凶じゃないのか?俺は大魔王だぞ」


そう、俺はこの世界で暴虐の限りを尽くした。魔族たちを率いて、何百万人という数を殺してきた。そして、俺は殺された。つまり、世界には平和が訪れたはずなのだ。


「確かにそうです。ですが、事実は異なります」


「は?」


「あなたはもともとこの世界を救う勇者として、人間に生まれるはずだったのです」


「ちょっと待ってくれ」


理解が、できない。俺がもともと人間に生まれるはずだった?勇者のはずだった?


「そんなこといきなり言われても理解できるはずないだろうが」


俺は思わずそう言葉をこぼした。


「ですから、今は理解できなくてもいいです。のちに理解できるようになります」


俺は顔をしかめていた。まったくもって理解できないからだ。だが、それでも一つだけ確かめておきたいことがあった。


「…一つだけ聞いてもいいか?」


「もちろんです。ただ、先ほどのことに関する詳しいことはお話しできませんが」


「俺は、どうなるんだ?救うって言われても死人には何もできないだろう?」


「それはご安心ください。私の力で、転生させてあげます」


転生か。


「それは人間として、ってことか」


「はい」


なるほど、つまり、人間に転生して第二の人生を歩めるようになるってことか。


「…だが、敵が見えてこないとどうすることもできないぞ。いきなり救えって言われただけじゃ何もできない」


「敵は、勇者として生まれるはずだったあなたを大魔王にして、自らが倒される運命から逃れようとしている者です」


天使はきっぱりと言い切った。


「なるほど、まあとにかくそいつを倒せばいいってわけか」


「そういうことです」


まったくこれっぽっちも敵が見えてこないし、理解もできないが、とりあえず俺は転生して人間に生まれ変わる。そして、大魔王の全く真逆の勇者として生きるという感じだろう。


「いや、意味わからん」


今まで、聞き分けよく聞いていたものの、大魔王だった俺が目の前の天使にいきなり勇者として生きて世界を救えと言われた。

普通に考えて、意味が分からない。


「まあ仕方ないですね。これは使命ですので」


「この野郎が」


「私は女です」


一体、どうしたらいいものか。今まで大魔王として生きてきたのに、いきなり人間として生きろ、いや、勇者として生きろとは。


「安心してください。大魔王の力はそのまま魔術を使えるようにして、転生させてあげます。つまり、常軌を逸した力を持ったまま魔術も使えるんです」


なるほど、大魔王の力を宿したまま人間の魔術も使えるようになるのか。

それは俺にとってかなりうれしい。


「そろそろ時間です。こちらにある紋様に立ってください」


俺は言われたとおり、何か書かれてあるものの上に立つ。


「それでは、行ってらっしゃいませ、勇者様」


俺は閃光に包まれ、まぶしすぎる光に目を閉じた。



♦♦♦♦



あれから、俺は大魔王のころの記憶と力を持ったまま転生し、いくらかの歳月が流れた。あの天使とはあれ以来のコンタクトはなく、ただただ人間として過ごしていた。

俺が転生した直後は赤ん坊として過ごして、何かができる年になるまで、親という存在に甘やかされながら育った。親はなかなかに素晴らしい存在で

俺は、サカイ・ディークという名前で、ディーク家の息子だ。ディーク家はディーク王国の王の家系で俺は王子ということになっている。


「お兄様!起きてください!」


ふと声が聞こえてきた。だが、俺はその声を無視する。


「いつまで寝てるんですか!だらしないですよ!」


うるさく思ったので布団で顔を隠す。


「あ、ちょっと!布団引っ張りますよ!?」


「やめてくれ。俺はまだ眠たいんだ」


「それでも起きなければいけないんです!大体、だらしなさすぎるんですよ」


「それはさっきも聞いた」


と言ったところで布団をはがされてしまった。まだ眠たかったのに。

目の前に現れたのはまさしく美少女というのがふさわしい端整な見た目の女の子だ。

名前はユイ・ディーク。俺の妹ということになっていて、こんな美少女が妹とはやはり当たりだなと改めて思うこともあった。


「今日は何の日なのか覚えてますか?」


俺は記憶の海をさかのぼり、それっぽいのを口に出した。


「魔王討伐の日?」


「全然違います。それは来月です。今日は魔術学園の入学式です!」


ユイは目を輝かせながらそう言った。

そうか、そういえばそうだった。

俺らは基本的な学びを得たあと、魔術学園に入学することになっている。父親曰く、ディーク家は長く続く魔術の最高峰の家系らしいので、その名に恥じぬよう魔法に磨きをかけるというわけらしい。

その魔術学園の名前は鷹鳥魔術学園。名前の由来は最初の魔法が空を飛ぶ魔法だったらしいのでその姿を模して、鷹鳥という名前にしたらしい。


「よし、行くか!」


俺は起き上がり、目の前の妹へ向かってそういった。


「パジャマのままそう言われても困るんですけど」


眉毛をハの字にした妹からぺしっと叩かれてしまった。


「兄をたたくとは何たることだ!」


「いい加減、着替えて顔洗ってきてよ」


だんだんとマジトーンになってきたのでいわれた通りいい加減に着替え、顔を洗いに行く。

それから、朝食も終えていよいよ魔術学園に出発だ。


「ほら、おいてくぞー」


「待って、お兄様早すぎる」


髪もメイクもセットしている妹を待つ間これからどうなるのか少し想像してみた。

おそらくこれからは波乱万丈な人生を送ることになるのだろう。それに学園にいる間はこの大魔王の力を隠さなければいけない。

大魔王のころはあまり気づかなかったが、人間になってから大魔王という存在がどれだけ影響を与えていたのか知った。俺がこの力を使ってしまえば大魔王の生まれ変わりだと思われて、殺されてしまう可能性だってある。

それに、大魔王の力を使うのは俺の理念にも反する。俺は魔術を扱いたいのだ。

俺の真の目的のためにもそこがバレてしまうと非常にやりにくくなる。


「よし!準備し終わりました!行きますよ。お兄様」


「ああ」


俺たちはまだ見ぬ世界へ、その第1歩を踏み出した。

いよいよ、魔術学園に通いはじめます。面白くするために事件が起きる展開があるかもしれません。ちょっと短くなってしまったので次回は長めに書けたらいいなと思ってます。これからも楽しんでいってくれたら幸いです。

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