第91話 仲間として
ここでお知らせ~
なろうとカクヨムに1話から誤字、表現を直したものを上げ直します
二時間目のテストが始まり、十五分ほど経ったところだった。ゴンッと重みのある何かが倒れたような音が教室に響き渡る。ほぼ同じタイミングで鉛筆が勢いよく床に落ちる音が響いた。
テストという事もあって、音のする方向を向くことは避けることが当たり前だったが、美奈は右隣、音の鳴る方向を向いてしまった。
「神崎!?」
ころころと転がる鉛筆だけが返答に応じる。不自然に首が美奈へ向き変わる。思わず漏れ出た声が周りの目を引く。虚ろな目からは生気を失ったような雰囲気さえ感じさせた。
「先生!神崎が!」
試験監督として教員が近くまで来ていたが、不意に大きな声をあげてしまった。美奈はテストなど忘れるほど、目の前の優気の心配に没頭する。それもそのはず、先のテスト中に現れた神の使者のことから何か嫌な予感が美奈を募らせていたのだ。
「とりあえず保健室に運びましょう。職員室に他の先生を呼びに行ってきますので、皆さんは引き続きテストを続けてください」
「出来るだけ早くしてください!」
そんなことは分かっているのは承知だが、考えも無しに口にしてしまった言葉を他所に維持派に関わる周りのクラスメイトが声を上げ始めた。
「優気!大丈夫か!?おいっ!!!!」
「健勇。とりあえず落ち着け」健勇の芯のある声が教室が更にざわつかせると、わざわざ遠い席から怜真がやってくる。
「本辺。さっき何かあったな?」
「多分。使者っぽいのが校庭に居たみたい」
「結界は張られてたのにな…」
「朱雀の力で治らないのか?」小声で璃久瑛も会話に参入したタイミングで男性教員が二人やってきた。
「お前ら席につけ!!」「いいからテストに集中しろ!」
恐らく何らかの能力だと思う。そう怜真が一言残し、それぞれ自席へ戻って行った。
気づけば優気は口から泡を吹き出しており、病に詳しくない高校生たちも流石にとてつもない重症であることを察知した。女性の試験監督は小走りで担架を持ってくると、そこに男性教員が優気を掛け声と共に乗せる。
「ゆーくん!!!!」
学業において最も重視するテストに構うことなく、幼馴染である咲音が声を上げた。運ばれる優気に飛びつくように近づくと女性教員に抱擁され、動きを止められる。何度も叫ぶ声は悲痛にも聞こえ、入り乱れた感情と絶望が入り混じったものだった。
教室から優気の姿が完全になくなると、暫くしてテストが再開される。試験時間が十分程度延長されるも、第一発見者の美奈は途中から問題を解く気力が湧かず、後半の解答用紙には空欄が目立つ結果となった。そんなことも気にせずにテストは約一時間続いた。
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三時間目のテストが終わり、ホームルームが始まる前。維持派に関わる美奈、怜真、璃久瑛、健勇は美奈の席に集まった。
「神崎、どうなったんだろう…」
「本当にいつのタイミングで殺されるか、分からないな…改めて恐怖を感じたわ…」発言と共に身体をビクつかせた璃久瑛の皮膚に鳥肌が立っていた。「一応救急車で搬送されたってのは耳にしたけど…本当に大丈夫なんかな…」
「おのれ…許せんな!神のs」大きくなる声を予想していた璃久瑛が健勇の口元を手で塞ぐ。
「とりあえずこの後、俺はアジトに向かう」
「私もそうする」
「俺も」
「俺も!」
「オレも!!ってどこに行くんだ?」
背後から炎示が便乗すると一同はたじろいでしまう。炎示には維持派のことを打ち明けておらず、もちろん神の使者のことも知らないため、素直に話を進めるのは控えなければならない。
「ま、何?優気が治ったら?面会行こうかな?って」目線があちらこちらに移動する璃久瑛の発言に炎示は懐疑的な目を向けた。
「まだ治るってのもわからないんじゃないの?」
維持派一同に暗い面持ちを浮かべながら咲音が割って入る。咲音の言う通り、危篤に近しい状態を目の前にしてあたかも治る前提で話を進める一同に疑念を抱くのは間違いない。
「美奈ちゃんはゆーくんから何か聞いてないの?」
「いやぁ~私は~」
『『『お前も嘘下手なんか!?』』』
維持派男児一同、一言一句異なることなく勢いよくツッコむも声に出さないよう何とか内心にとどめた。咲音は猜疑心が芽生えると眉間に皺が寄る。
「ホームルームやりまーす。席についてー」
教卓を前に前道の一声がかかる。流れに沿うようにそれぞれが自席に戻ると気の抜けた声で「とりあえずオレも誘えよ~!」と炎示が声をかけた。本当に心配しているのかと誰もが疑念を抱かずにはいられなかったが、この全体の動きに咲音も抗えず、遠く離れた席へ戻って行った。
「本辺、そういうことだから」怜真の返答に頷くと大きくため息が漏れる。隠したいわけではないが隠さなければならないことは難しい。
「美奈!」肩の荷が降りた瞬間、美奈と仲の良い三沢智花が両肩に手を置いた。完全にリラックスした後ということもあって肩が飛び上がり、同時に情けない声も漏れ出てしまう。
「むっちゃ驚いてて笑うんだけど。どうしたん?話聞こか?」
「それうざい」
決め声に対するように冷ややかな目で対応すると、三沢は反省を込めて抱きつく。「これはこれでうざい!ってか暑い!」強まる口調に笑顔があることで、どうやら怒りはさほど見られなかった。
「美奈最近楽しそうだね」いい加減離れろ、と和野夢叶はロッカーから持ってきた参考書で軽く三沢の頭を叩くと軽快な音が鳴る。
「どゆこと?」首を傾げる美奈と同時に三沢の包容が完全に解された。
「ほら、男子とも結構話すようになったし、何というか、充実してるって感じ」
「わかる!最近色んな人と話すようになったし、私たち以外の人に自ら話しかけに行くのが珍しくなくなった!」
思い返すと、維持派に加入してからの美奈は優気を中心に異性の神の使者やクラスメイトの男女関わらず、何かきっかけがあれば会話をしていた。今まであった躊躇いなどなかったかのようにとも思えるほどで、本人も意識外だったのだ。
「確かに、言われてみれば」
「何か良いきっかけでもあった?」
「ちっちっち。そんなの恋のおかげに決まってるじゃん!夢叶も分かってるくせに~」
「はっ!?」
「あー神崎くんか」
「はぁあ!?ちょ、意味わかんないんだけど!」
想像以上に大きくなった声を発すると周りから視線を感じた。ホームルームを待機するクラスメイト全員が美奈たちに視線を向けていたのだ。
「とにかく本辺さんの周り!みんな待ってるんだから早く座って!」
「『はーい』」
にやけ面を浮かべた友人二人が席に戻っていった。赤面を浮かべる美奈は担任の前道が今すぐに発言することを強く望んだ。周りがざわつく会話が全て『本辺美奈は神崎優気に気がある』という内容なのではないかと疑ってしまってしょうがないのだ。
「それじゃあ帰りのホームルーム始めます」
ようやくだ。疑心暗鬼の教室に一点、堂に入りスーツを着こなす前道を見上げる。
すると、前に座る女子クラスメイトがこちらを向いており、ぱっちりと目が合った。「ねぇ」一言声をかけられ、はっとする。体感としてそれほどまでに時間が経っていなかったこともあって、ようやく平静を保てて来たといったところだった。
「本辺さんって、神崎くんのこと好きなの?」
「ぶふぅうぅうぅぅぅぅううううぅぅう!」
ふんぞり返る美奈は柄ではなかったため、担任の前道はたじろぐと、再びクラスメイトから視線を集めることとなった。ホームルームは前道が無理矢理進め、幕を閉じる頃には美奈の記憶は真っ白だった。
次からは新章開幕
お楽しみに!
ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m




