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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
2学期編
89/133

第89話 またもやテストに乱入者

 九月最終週。優気(ゆうき)たちの通う船堀(ふなぼり)高校では中間テストが始まった。定刻のチャイムが鳴る数分前に各生徒は最後の知識を少しでも取り込もうと教科書やワーク、配布プリント等に目を凝らす。


「いいか?授業でちょいちょい促してたってのもあって、絶対にここの『日本で二院制が採用されてる理由』は出る。この写した3つを覚えること。そんでもってここの経済収支の問題、『旅行や輸送による収支が含まれる』を覚えておいて」


「ありがとう神崎(かみさき)。いやー政経の授業結構寝てたから助かるわ」


「まぁ6時間目と修行翌日だからキツイよな。何なら本辺(もとべ)は部活もあっから更にキツイだろ?」


「部活はもう夏の大会で終わったから。もう大分楽になったかな」


「なら、ちゃんと授業聞いとけな」


「んぉぉおおおおおおおぉぉぉぉおおおお!!!!!!!」


優気は隣の本辺美奈(みな)と話していると、前の席から雄叫びが聴こえた。しかし、大きな後ろ姿からは高速でノートを捲り、一見すると何をしているか検討が付かない。


「無い!何も書いてない!!思えばまともに政経の板書を写した記憶すらない…やらかしたぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁああぁぁあっ!!!!」


「落ち着け健勇(けんゆう)!!俺のノート見せっから!!」


「何なら今まで勉強してなかったのね…」


優気は大急ぎで重要単語や点数配分の大きな記述の問題を教え込む。日本プロ野球の十二球団スカウトは夏の甲子園で大きな活躍を魅せた健勇のことに注目しており、恐らくドラフトで指名される可能性は高かった。幼き頃から夢見ていた憧れのプロ野球選手という囲碁とに就業するためには何としても卒業をしなければならない。


 「はい、参考書しまえー」


試験監督を務める教師が教壇に立つと、ぞろぞろと席を移動していた者らが自席へ向かう。生徒たちがバッグに参考書などをしまうギリギリまで健勇に範囲を教える。教師の目が優気へ向かうと急いでノートをしまった。辺りを散見し、問題が無いことを確認すると、教員は解答用紙と問題用紙を順番に配り始めた。


 「チャイムが鳴った後始めるように。そして、カンニングは全教科0点扱いになるから絶対にしないこと」


優気は担当教員とで目が合うと気まずいのか、教員は目を逸らす。それもそのはず、教員は前回の中間テストにて優気とカンニングでの揉め合いとなった桂被郎(かつらかぶろう)だったのだ。


この前には優気を狙い来たルシフェルという者が銃を向けていたことを視認してしまった。その後ジャンジャンが結界を張ったことで急に姿を消したことが余計に恐ろしく、自分が幻覚を見ていたのかと結論付けたが、優気の外を覗こうとした行動理由が現実味を帯びさせていたのだ。


桂は心霊現象のような恐怖体験を思い出したくもなかったが、奇しくも前回と同じテスト科目であり、何かが起きそうな予感がしてならない。


 怖気増す気持ちを生徒たちに悟られぬよう押し殺していると、テストの開始を告げるチャイムが鳴る。「始め」と若干小さくなった掛け声を発し、異様な事は始まるなよと内心でつぶやいた。


___________________________________


 「残り10分だ。終わった者は見直しをすること」桂は最初の掛け声よりも元気な声は試験から四十分が経過した。ここまで何も起こらず、桂は胸をなでおろす所作が漏れてしまう。


 桂の想いとは裏腹に、問題を解き終えた優気は外に怪しき神力(じんりょく)を微かに感じた。


神の使者からは感じたことのない特異な神力。ルシフェルとはまた別の禍々しさだが、当の優気は三、四か月前の神力など記憶には残っていない。それでも、初めて感じ取った異様な神力であることは間違いなかった。


 優気が感じ取れた神力は極少量だったが、何とか感じ取れたことにはクシナダの張った結界が関わっていた。


前回のルシフェルの襲来を踏まえ、クシナダは強固かつ、結界内部にいる者には探知がしやすくなるといった、おまけにしては大きなバフが作用しているのだ。しかし、その探知力があろうともここまで神力を抑えられるということは中々出来ることではない。


 だが、教壇には前ひと悶着あった桂。警戒心が必然と働いており、すでにこちらに視線を感じる。優気にとっては再び問題にしたくないこともあり、外を覗くことは自分から行わないと決める。


_________その瞬間だった。異様な神力が窓付近に近づいていることに気付くと、視線を窓へ向けてしまった。そこには眼鏡をかけた男性が大きな虫のような羽を広げてこちらに飛び込んできたようだった。


そう。()()()のだ。窓と虫の羽を広げる男を迎撃するように、多くの髪を立ち上がらせた見覚えのある男が右肩から左脇まで斜め一直線に蹴りを放つ。学校から追い出すかのような、そんな意図が感じられた。


「うわぁあああ」


するとその姿は忽然と消えると、秋の風にしては珍しい突風が窓を軋ませた。桂の反射的に発せられた声は非常に弱弱しく、教室中の生徒から視線を集める。一般人として、桂はこれで二度神の使者たちの抗争を目撃したこととなった。


「大丈夫ですか?先生」優気の幼馴染である咲音(さきね)から心配される。これも桂にとっては二度目の出来事。


「もうまたかぁ…」

小さく弱音を教壇に吐き捨て、カツラの頭皮を全ての指を使ってぐりぐりと刺激する。そんなことをやっては桂のカツラがずれることは分かっていた。しかし、そんなことなどは気にしてられない状況だ。


再びにわかに信じがたい現象を見たことで、何か自分に危険なことが降りかかってくるのではないかと、勘ぐってしまう日々が続き始めることだろう。


優気は本日のテストが終わり次第アジトへ向かうと決めると、目の前のテストのことを思い出す。


見直しをすると、一問だけ誤字を見つけ、すぐに修正。その後、終了を告げるチャイムが鳴り響いた。


 答案用紙を一番後ろの席に座る者が回収し、試験監督の桂に届ける。疲弊した桂は全員分の名前を確認する学級委員を他所に疲れ切っていた。


「ねぇ神崎」優気の隣に座る美奈が話しかける。


「誤解だったらアレなんだけど」

あれってなんだよ。優気はツッコミたくなるも、『アレ』の正体はもう大方勘付いていた。手招きする美奈に抵抗があったが、席に着いたまま大きく足を踏み出して近づく。美奈はなるべく小声で話したい内容であったため、手で口を覆う。


何だか校庭から神力っぽいもの感じなかった?


首を振って応じると「やっぱり」と一言。基本的な戦闘能力は若干美奈の方が優れているが、神力探知においては断然優気が上である。そのため、美奈の感じた探知力ではあまり自信が無かったのだ。


敵の使者見た?


もう一度首を振って応じる。


「え!」反射的に驚くと周りから視線を感じる。


「どうなったの、敵は?」大きな声を抑えるように人差し指を口元に指して歯の隙間からたくさんの空気を吐き出す。


優気と席が近く、親密な健勇や璃久瑛(りくあ)からに話の内容を聞かれつつ二人の関係を茶化される。一見するとくだらないやり取りだが、テスト用紙に名前の記入漏れがないか確認していた、咲音の手は止まる。


___最近ゆーくんと本辺さん仲良さげだなぁ。


御堂(みどう)。確認終わったか?」


内心何があったか気になり、視線が優気に向いていた。時が許すならば早々とこの教室を去りたいと一心に思っていたためだけに、声に力が入っている。咲音は戸惑いながら受け渡すと、すぐに号令をかけ、足早に桂は教室を後にする。


___出来ることなら、もうあの教室には入りたくないものだ…


少しズレたカツラに気付かず、顔を手で覆いながら早々と職員室へ向かっていく。廊下に居た生徒からはひそひそと噂となり、カツラである決定的瞬間を観れたなどと悪洒落を垂れる高校生たちは、テストで良い点数を取った時よりも満悦な笑みを浮かべるばかりである。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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