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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
2学期編
88/133

第88話 動き出すそれぞれの野望

偶には優しい時間に投稿~

 地下鉄事件から約三時間後、亀有にて。映画を観終わったシャーヴィンたち護持派(ごじは)一行は併設されたカフェにて休憩を取っていた。


まだ十四歳の美作修治(みまさかしゅうじ)はチョコやクリーム、キャラメルなどがふんだんに使われた濃甘のカフェオレに目を輝かせている。カフェすら初めての修治はいざ、自分が頼んだ商品に口を付けると声にならない嬉しさが漏れだしていた。


「どうだ?美味しいか?」対面に座るシャーヴィンに問われるとこれ以上の喜びは無いように「うんうん!」と二度頷く。


「それは良かった」シャーヴィンも注文した飲み物に口をつける。

「ヴィン。映画の最中にフィルセルから電話が来ていたんだが」


あまり聞き馴染みのない名前に鈍い反応を示すシャーヴィンだったが「あぁ維持派の」と覚えのある記憶を一瞬で掘り起こす。


「そうだ。もうバレたか」


「まぁな。最後の方に朱雀の継承者に神の使者であることは見透かされていたこともあったし、元から時間の問題だ」


飲み物が入ったプラスティックの容器をテーブルに戻し、ヘラクレスの方を向き直る。


「とりあえず電車に出現したあの怪物の出所を知りたいな」

「ホルスとツクヨミに探索させるか?」

「いや、ホルスだけでいいかな。あいつには移動の利点もあるし、神力(じんりょく)探知もある程度備わってる」

「じゃあそういうことで連絡しておくか」

「ちょっとちょっと!」


シャーヴィンの前の席に座る修治が話を進める二名の使者にツッコむ。いけない事を口走ったことや修治のことをとやかく言ったつもりはないが、何故かシャーヴィンに罪悪感が生じる。


「映画を観て、ゆっくりくつろいでるんだから仕事の話なんかあとあと!今はもっと楽しい話しようよ!」


「そーです!修治くんの言う通りー!」


「ヘスティアはもっと使者らしくなってくれ…」顔を覆い、大きなため息をつくシャーヴィンだったが、修治の言ったことには納得がいった。


「…で、どこの陣営が動き出したんですか?」


修治は呆れた目つきで問うとヘラクレスがニヤニヤと笑みを浮かべた。

「結局修治も話してるじゃねぇか」

「2人が話すからです!それもせっかくシャーヴィンさんたちと遊べるってのに時間奪った敵が憎い…」


小さく握る拳と言い、メラメラと燃える目つきから本気度が窺えた。容器ごと溶けてしまいそうな熱量に距離を置いたヘスティアは「本当に修治くんはシャーヴィンさん大好きねー」と軽く油を注ぐ。


「そりゃそうですよ!僕の人生に希望を持てたのはシャーヴィンさんのおかげですから」最初こそは大きな声だったが、どんどんと落ち着きを取り戻し、飲み物を口に近づけた。まるで、エンジンが切れていくかのようだったが、心の中ではシャーヴィンの想いは燃焼中といったところだろう。


「で、どこの誰なんですか!」

「おぉーエンジン再点火ぁー」おだてるヘスティアもストロベリー系統の飲み物に手を付ける。


「恐らく()()()。ラー陣営だろうな」


「だけど、改革派の方々は『人々の上に立って統治すること』が目的なのに、人を襲うような怪物さんたちを使うことってなんだか怪しくないですかー?」


「それだ。僕もそこが引っかかっていた。これには何か事情があるんだろうね」


「まぁホルスの探索に真相もわかるといいな」ズズッーと飲み物を飲み切る音を立てるとヘラクレスは捨てに立ち上がる。


「それぞれ、動き出したな」ヘラクレスの声に呼応するかのように顔を上げると覚悟の決まった目で真っすぐ、前を向く。


「僕たちも動き出そう」


「くぅぅぅ!!シャーヴィンさんかっくぃぃぃいいいぃぃぃいい!!」

「これじゃ締まらんわ!」


端麗な容姿から勇ましい顔つきで発せられた言葉に修治は憧れてしまう。「もぅ…」と不貞腐れるシャーヴィンは席を立ちヘラクレスと共に出入口へ向かう。


「ちょっと!僕まだ飲んでますよ!」

「ほんとですー。早いですー」

「早くしろ。夜ご飯食べるの遅くなるぞ」


座る二人にそう呼びかけ店を出る。ヘラクレスは大きな欠伸をすると肩を回すなど十分にリラックスしていた。動く身体、右半身にシャーヴィンは目をやる。左右とも特に変わりない見た目だが、ヘラクレスの右半身は常日頃、戦闘用に機械の装備品を身に纏っているため、違和感を拭いざるを得ない。


修治との遊びのために解いてきたのだろうと思うと、ゴツゴツとした見た目からは感じられない優しさが少し垣間見えた。


 「今日は何を食べたい?修治」

「んー焼肉かな!なるべく高いのがいいな」

「言うなぁクソガキ!よし、ヴィン頼んだぞ!」

「お願いしまーす」

「お前ら…少しは経済を労われ…」


渋々として歩くシャーヴィンを先頭に、護持派一同は高級焼肉店へ向かうのだった。


___________________________________


 同時刻、どこかの大きな空間。ギリシャ様式の柱が聳え立つ空間は神話で登場する宮殿の内部のような、或いは美術の世界で描かれたかのような空間が広がっていた。そんな一室に大きなテーブルとその左右に席が並べられている。


しかし、並べられた左右の間を取り持つかのように中央に一つだけ大きな椅子が準備されており、既に背をかける者がいた。まるで、高級感溢れる大企業の会議室にポツンと置かれた社長席のようだ。周りの席には計十八名程の神の使者が集結していた。


 「おいおい!すげぇ集合率だなぁ!?」

「確かに残るは問題児2名だけだな」


静まる場で到着したばかりのギルガメッシュが大声を出すとアレスは乗じて会話を始めた。薄暗く、重苦しい雰囲気はあったが、彼らにとって平常通りである。


「『全員集まるなどということは100年近く前の最初の会議以来だ』と感心していたのが、半年前。そこからこうもすぐに集まるとはな」


「これでくだらんことの話し合いならば…儂はすぐに研鑽に走るッ!!」


待ち時間に業を煮やしたのか、うねる長い白髪が逆立つかのような勢いでトールは大蛇のようなテーブルを大きく広げた平手で思い切り(はた)く。広い空間に爆発音のようなものが響き渡り、隣に座っていたアレスは思わず耳を塞いだ。


 流石に容認できず、肌黒い腕がピクリと反応すると暗い中で輝く金髪を揺れる。神の使者、オシリスはムッとした表情を浮かべた。


「静粛にお待ちください。揃わなくとも時間通り、残り6分ほどで会議を始めますので」


「早くしろぉ!!儂は待ちきれぇん!!!」


「大体さぁ、『神の使者』って静かに出来る奴少なくねぇ?大人しく待つことも出来ねぇのかよ」


「何ィ!?」トールの対面に座る男は呆れ果てる。後頭部を頭で覆い、嫌なものを見るような目をトールへ向けた。


「お前は()()()っ!後で戦いだ!」


「カグツチです。いい加減覚えてくださいよ。そして、同じ改革派との戦闘はご法度だよ。そんなことも理解できないなら破門でしょ」


「儂は戦いが出来ればいのだ!承諾も得て、ここにいる。さぁ戦えぇ!」


「俺はそんなこと望んでない。やるなら鏡とでもやることを進めるよ。自分か、或いは鏡の中の自分か。勝負は一発で決着つきますよ?」ニヤニヤと笑いながら語る男は調子付くと足を組み、膝を抱える。


「ラー様が静寂を求めている。お黙りなさい」

「そうだ。先からベラベラと、見苦しいぞ!」


精霊のような透明感のあるイシスと犬のような頭をしたアヌビスが粛清を促す。カグツチの隣に座る者が舌打ちをすると、一瞬静まった広い空間に響いてしまう。


「もうー便乗して気分が悪いなぁ。そんなに言うなら自分たちが黙ってればいいじゃん」

カグツチの隣に座る男が引き攣った顔で苛立ちを露わにする。スーツ姿に身を包む男は口を開くのに躊躇いがあったが、下級な言い争いに耳が絶えなかったのだ。


「なんだと!ならば貴様も口を開くな!()()!」


「僕は騒いでることに興味はありません。ただあなたたちの同調に矛盾を感じる部分があり、気分が害されたので言っただけです」


「何を言うか!今の言葉!ラー様の侮辱に値すr」


話を続けていたアヌビスの口元を覆うようにテーブルの材質を利用して作られた手のような物が纏わりついた。明らかに知る能力。その利用者、ブラフマーへ視線を向けた。


「もう、苛立つな。落ちつけ」


能力を使った冷静な対処に黒く長い髪の毛が伸びているため、表情を読み取ることは難しかったが、アヌビスの目つきが和らぐと能力が解除される。奥や手前に座る神の使者の冷たい視線や見向きもしない態度から浮かれていたことに気が付かされた。


「わ、悪かったなブラフマー」

「大きな声で喋らなければ、それで、いいだろう」


 少し場が静まると「にしてもよぉ」と空気を読まずにギルガメッシュは口を開いた。


()のカグツチは死ぬほど性格がわりぃ奴だったけど、()のカグツチもなかなかの性格の悪さしてんだなぁ。あぁ?」


「まぁ、敵を殺すのに性格が悪い者なんていませんよ」


「こいつぁ性根から腐ってんなぁ」降参のポーズで呆れると再び「にしてもよぉ」と話を始める。


「横の奴、確かぁ玄武(げんぶ)の継承者だったよなぁ」


「そうです。有沼奨一(ありぬまはじめ)と申します」ペコリと頭を下げると、ギルガメッシュは大きくため息を吐く。


「お前もそうだがよぉ、ロキの実験に関わった奴らは揃いも揃って性格わりぃなぁ」

「いやいや、性格が悪いのはロキさんからですよ」

「まぁそれは言えるな。ロッくんは俺が見てきた中で一番まともじゃないから」


 「何?僕の名前が聞こえたけど何の話してるの?」


遠くから一同が知る声が聞こえる。そして、カグツチと玄武の継承者である有沼からすれば馴染みのある声である。少年のような出で立ちで陽気にこちらに向かって来る男。それは丁度話題に上がっていたロキだった。


有沼の隣に腰を掛けると話していた話題に興味を持っているようで、頬を上げ、にんまりと笑みを浮かべている。


「今ロッくんのこと褒めてたんだよ」

「カグツチが僕のことを?やだなぁ~恥ずかしいよ」


これはどうしようもない。と臭いものを見る目でギルガメッシュは再び呆れ果てた。口を出したのが間違いだったと自分を責め、もう関わることを止めようと心に誓った。


「で、僕が最後だったかな?」


「いえ、後1名です。ですが、残り数秒で定刻となり、会議を始めさせていただきます」


「ふぅ危ない危ない。最近やることが多くってねぇ」


「ロキさん!さっきから喋るだけで野暮な騒ぎに発展したんで静かにした方がいいですよ!」そう注意した有沼に、思わず横に座るカグツチが「クックック」と堪えるような笑いが漏れ出た。


 「悪い。遅れたかな?」


「いや、奇しくも残り1秒で始めるところでした。席に着き、よろしければ合図をください。()()()()()


「そうか。ごめん。みんな」


短い言葉で謝辞を表す中性的な風貌をした男、アダムは、駆け足で空いている席へ、白き髪を揺らして移動する。


 椅子を前へ引きながら手を挙げると、オシリスは中央の席に座る者に合図を送る。待っていたとばかりに小さく息吐き出すと、中央に座する者は声を発した。


「よく来たな。皆の衆。これより()()()の今後について話を進める」


長き黄金の髪と赤き目を光らせた改革派の長、ラーが口火を切ると総勢二十名の神の使者による話し合いが始まった。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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