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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
2学期編
84/133

第84話 たった一人の地下鉄防衛

 逃げる乗客を機敏に躱し、十号車へ優気(ゆうき)は急いだ。現在六号車、何も起きて無ければいいと切に念じるも、案の定何も起きていないことは無さそうだった。後方の号車から逃げる乗客がドアの周りから次々と出てくるを確認する。


「どいてくださぁい!!」


大きな声で道を空けさせるが、優気の意図とは裏腹だった。乗客は身なりからして恐怖の化物と似て非なる異常者がやって来るという印象が強く、畏怖から道を空けるのだ。当の本人は自身に対する印象など頭にはなく、敵となる化物の姿を確認するまで一心不乱に進む。


 「やっぱり居やがったか!」


八号車に到達すると化物がフラフラとこちらへ向かって来る姿が見えた。速度を緩めず、寧ろ神力(じんりょく)をさらに高める。


化物たちが優気に気付きこちらを向かうも、走り馬に鞭打つかのごとき追い上げにより、かなり離れた位置でジャンプ。化物の顔面へ届き、完璧な蹴りを贈った。その威力は凄まじさを孕んでおり、次車両の九号車中間まで吹き飛ぶ。


「ギャシャァァアぁぁぁぁぁあァァぁぁギキィィいいぃぃぃいいいぃぃぃぃぃいいいいぃぃぃぃいぃぃぃぃぃいいぃぃぃぃぃィィィィ!!!!!!!」


「シャギャグリヤャぁぁぁぁあああああああああああシャぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっっ!!!!!!!」化物たちの咆哮により、集団攻撃が始まった。


 基本的に敵は知能が低く、ただ襲いに来るだけの攻撃パターンしかない。その分隙が多く、教わった攻撃方法や神力の放出などを当てるだけで十分に戦うことが出来た。集団ともなるため、敵の攻撃は絶え間ないが、攻撃をいなし、カウンターを食らわすことによって徐々に数を減らしていく。


「大分倒したはずだけど、まるで次の号車に行けるビジョンが見えないな…」


 最後の十号車までの道のりには化物はぎっしり埋め尽くしており、まともに相手をするなら十分はかかる見込みだ。スサノオのような力と戦闘センスも無ければ、怜真(れいま)のような知恵も無い。第二形態の四神(ししん)化は電車のサイズを考慮すれば不可能。


為す術無しという択は絶対にない。何かないのか。


表示と違う導光板、周りを覆う広告、壁に飛び散りさらさらと消えていく化物の一部、路線図、開かぬ扉、揺れるつり革、こんな状況でも快適な空間を作り出そうと懸命に働く空調、銀色の格子でできた荷物置き、化物が倒れた座席、化物が動く際につかえていた握り棒、歪いびつで高低に差があり、様々な体の形をしている化物、奥には開けっ放しの連結ドア。


周りに目をやり、策を見出す。近づく化物の軍勢は思考する時間など与えるはずがなかった。


どうしても先に行きたい。論理性が導いた感情的な解答が優気を突き動かす。


目の前の物と力は全部使う。そう決めると数歩後退した。


 助走をつけ、化物の群れの頭を超える跳躍。頭上を跳び越える優気に手を伸ばす姿は条件反射のようである。掴まれると非常に危険という意味と成し、九号車と十号車の連結部近くに溜まる化物の腕を蹴とばし、更には神力のエネルギー弾を床に放ちスペースを作り出す。


スペースと言ってもあまりの化物の多さに数秒しか持たないと判断し、前後にエネルギー弾を放つ。狙い通り少しでも新しいスペースを作り出すことに成功し、十号車へ完全に入ることを可能とした。


 辿り着いた十号車で化物の発生源を探るため、電車上部の荷物置きへ飛び乗った。


すると、号車端に花の苗のようなものが一列に並べられている。数としては五つを確認し、さらには花弁が落ちると化物が小さな姿から徐々に大きくなり、ある程度の大きさになるとこちらへ向かって来るといった流れが繰り返されていた。


落ちた花弁の部分はだんだんと次の花弁が成ることを視認。誕生のメカニズムも知るも、なかなか理解し難い現象であると共に、対処法が分からない。試しに神力のエネルギー弾を放つ。すると、苗を庇うように数体の化物が身を挺して守りに動いた。


「あの苗に攻撃の耐性が無いってことか!」


化物の増殖を防ぐためにもエネルギー弾の発砲に重きを置いていると、こちらに登ってこようとする手が伸びてきており、場所移動を考える。


早速、苗付近と優気の位置を考慮し、真ん中辺りの場所へ照準を変え放出すると空いた場所へ飛んだ。後ろを向くと数体の化物たちが足場となり、荷物置きへ手を届かせようと画策していたことを知る。


「知性が付いてきてるのかな」


早めの対処を狙い、大きなエネルギー弾を生成すると眼前の群れに解き放つ。急いで苗に近づき神力を込めると花弁が落ち、目の前に化物が生成された。どちらを優先させるかは迷ったものの、取り敢えず苗を壊すことを目的としてエネルギー弾を放った。苗はさらさらと消えるも、目の前にした化物は成長を続け、優気の顔に鞭を打つように腕を振るった。


想像よりも威力は大きく、群れまで飛ばされるが、ここまで来てやられることは絶対に許されない。残り神力は四割ほど。さらにエンジンを吹かし、周りを囲う化物を一掃すると、間隙(かんげき)を縫い苗を狙って攻撃を行う。


残り一つ、化物に防がれた苗に近づき、先程攻撃を受けた化物と相対する。


「さっきはよくもやってくれたなぁ!」片手にエネルギー弾を生成すると敵は腕を大きく振り上げた。


「ギッシャァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁああああ!!!!


鋭い腕を振るう攻撃を躱し、敵の身に直接砲撃を食らわせた。先程の花弁が落ちるようにさらさら消えていくのを見送り、残った苗を破壊した。


それに呼応するかのように周りの化物も消えていくことを目にすると優気は思わず合掌をした。正体は分からない。危害を加えるために生まれてきたことはわかっている。ただ、生命として活動したことに尊重をせざるを得なかったのだ。


「行かなきゃ」一言残し、反対方向の一号車へ向かって走った。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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