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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
夏休み編
78/133

第78話 サプライズ

このエピソードは4話前からの続きとなります


お手数ですが、前話から読むことをお勧めします!

 「健勇(けんゆう)があと20分くらいで来る!急いで片づけて飯とサプライズの準備しなきゃ!!」


「おい、飯どーすんだゆーき!」


「皆なんか食いたいのあるか?早くデリバリー頼まないと間に合わないかも」


「ピザとフライドポテトは確約」「明太ポテトサラダ」「チャーハン!!」「それはなんぼでも作るから今度な炎示(えんじ)」「じゃあローストビーフ!!」


挙げられた夕飯に加えフライドチキンとピザの種類を三種ほど注文する。スマートウォッチで投影された空中ディスプレイ画面を連打する様子が慌てる優気(ゆうき)を物語っていた。


 注文を終えると届け時間が表示された。約二十分と表示され、ギリギリ間に合いそうな時間に加え、健勇が来てからなるべく出来立てを食べられることも相まって安堵に包まれる。


 優気は簡単なサラダを作るためにキッチンに移動し、野菜を広げると次第に手を付けていく。怜真(れいま)たちは机にあった勉強道具を片付けると事前に買っていたクラッカーを準備する。


炎示と凪行(なぎゆき)は口喧嘩をしながらも装飾に勤しみ、璃久瑛(りくあ)は掃除機をかける。テレビ前を掃除していると、先から付けたままの画面が目に映る。つまり、『アイエンブ!』のブルーレイ画面が映し出されたままだった。続編第二期が気になり、周りを見渡すと皆の視線がチラチラと画面に集まるのを感じた。


_______今は我慢


割り切り、画面を消すと一斉に目線が離れるのを感じる。


「露骨だな…」


そんな一言を漏らすと、何のことだ、と言わんばかりに一同は作業に集中し始めた。何かの目的のために室内を整える姿は、まるでスーパーマーケットの店内改装のような規模であり、それ以上にやる気と楽しみに満ち溢れていた。


 インターホンが家に響く。


「天啓が来たぞぉぉお!!」


凪行が珍しく大きな声を上げた。「誰か開けてやってくれ!」とキッチンから声がすると怜真がインターホンを操作し、エントランスのドアを開放した。


それほどまでに焦りと楽しみが混ざっているようで、皆がクラッカーを手に出迎える準備をしていく。優気はあと盛り付けのみとなったサラダ作りを中断し、玄関へ向かう。


 再びインターホンがなった。一同は困惑し、優気は目を合わせる。凪行が再び「天啓が来たぞぉぉお!?」と言い出し、笑いを誘う。柄にもない大声と、間の取り方が非常に上手く、怜真に至ってはツボにハマってしまった。


笑いながら目を見開いた優気は、忘れされた記憶が唐突に流れ込み「デリバリーだぁぁあ!」と大きく発言した。凪行の真似も加味されており、一同は再び笑い転げる。


 「これ、健勇とデリバリーでどっちが先に来るんだろうな」

「絶対健勇でしょ。先に来たんだから。怖いこと言うなよ、りっくん」

「ごめんごめん」軽口をたたく璃久瑛は反省の色のない謝罪を告げる。


「けど、それはそれで面白いな」


「どこが面白いんだよ。寧ろ恥ずかしいし、向こうが困るだけだろ」笑みを交えながら怜真が言うものだから、もう既に面白がってるじゃないか、と優気は言いたくなる。


「って言いながら笑ってるじゃねぇか」炎示に先を越された。同じ魂胆に笑いを隠せない。


「お前らずいぶん楽しそうだな」


「凪行クン。こういう場面どうゆう顔をしたらいいか知っているかい?」


「わからないな」


「『『『笑えばいいと思うよ』』』」


「4人でハモるな!」


 くだらないやり取りで盛り上がっていると先程と異なるインターホンが鳴る。この天啓はドアを挟んだ向かいに来坊者がいることを伝えるもので、種類が違ったため、全体にいよいよと意気込みが増す。優気が部屋内のインターホンへ足早に向かう。


「鍵が開いてるから入って来て!」


インターホン越しにそう伝え、再び玄関に戻るとガチャリと目の前の扉が開いた。姿よりもドアノブが傾いた音でクラッカーを開く者、しっかりと扉が開いた時に開く者、その中間で開く者と様々なタイミングで安っぽい破裂音が小さな空間に轟いた。


「うぉっ!」


「『『『『健勇!!甲子園ベスト8進出おめでとう!!!!!』』』』」


クラッカーよりも大きな声で歓声を上げるマンションのフロアの端から端まで声が反響した。鳩が豆鉄砲を食ったような顔で留まる健勇は次第に口角が上がっていくと笑みが声に漏れる。


「さぁ入れよ!パーティーしようぜ」


「そうだけどよ、ビックリしたぁ…」


驚きを隠せない様子が腰を引かせているようだが、挽回するように「ありがとな!」と元気抜群に返答した。


健勇が中へ入ろうとすると、背後に人影が見える。


「あの…すみません、ハイハイ配達です…」細々とした声と非情に申し訳なさそうな顔でこの状況に配達員がフェードインする。「ご注文の…品を…」


「ああ!すみません!ありがとうございます」


健勇と入れ替わるように優気が外へ出ると品物を受け取り、料金を支払う。想像以上の高さに濁点を含んだ一言が漏れると配達員が不安気な気持ちになるのを感じる。場違いな気分が加速し、早くここから去りたい。玄関の戸が閉まる前にドタドタと移動するような足音が聞こえる。


優気は会計を終わらす気が先走り、電子決済で表記の値段より多く数字をタッチしてしまうもすぐに釣りが精算され支払いを済ませた。会計音がなると配達員が駆け足でエレベーターに移動する。支払い額を見ると想像以上に出費が高く、もうデリバリーは控えようと強く思った。多くの配達物を持ちながら軽い方の手荷物の手でガチャリとドアノブを下ろす。


「ぬぁあ!?」


「『『『『優気!誕生日、おめでとう!!!!!』』』』」


再び大きな声が上がりフロア内に小さな破裂音が飛び交う。驚きを隠せないことに加え、歓声があまりにも響くため、反射的にフロアを見渡してしまった。


エレベーター前に立つ配達員と目が合うと小さく拍手をしている。小さく頷いて喜びを表現し、笑顔を浮かべながら前を向くと多くの笑顔がそこにはあった。


「お前らぁ~!!(はか)ったな!?」


言葉とは真逆、嬉しさを滲ませた声で急いで家に入る姿がエレベーター越しの配達員には羨ましく思えた。まるで自分が喜びを届けたように思え、先程の申し訳なさは消滅し、次の配達に向かう。


 テーブルに注文した商品を並べると璃久瑛が気を利かせ、キッチンにサラダの盛りつけの続きを行おうと移動するも、凪行が変わりにやるとのことだった。手持ち無沙汰な優気はリビングで腰を下ろす健勇の元へ向かう。


「驚いたわ…まさか俺も祝われるとは…」

「いやそれ俺のセリフだわ!!元々優気を祝うために計画してたんだぞ!」

「いやいや、それこそ健勇の甲子園出場を祝うからって地区大会で優勝した時から考えてたんだよ!」

「いやいやいや、2人とも違うんだなぁ」


怜真がしたたり顔で会話に割って入った。


「実は元々2人を祝うために計画してたんだよ。そしたら2人から次第にパーティーしようやって声がかかったもんだから一気にサプライズしようと思ってな」


驚きで声が出ない。まぁまぁ座ってろって、と宥められると怜真は璃久瑛を手伝いに移動した。


「健勇…お前俺の誕生日会考えてくれてたのか…」


「優気…お前俺の甲子園出場を祝おうとしてくれてたのか…」


少しの沈黙を挟み騒ぎだすと、ハイタッチと握手、そして熱い抱擁を組む。


 次第に料理が準備されていき、他の皆もぞろぞろと集まる。乾杯の準備のため、飲み物が注がれる。それぞれのコップに握るとなんだかソワソワとしてしまう。もちろん何の段取りも決めておらず、誰がこの場を切り出すかと誰もが答えを求める。


「じゃあ怜真から、どぞー」


炎示の適当な振りに「やっぱりこうなるよな」と一同は小さく笑みを浮かべた。ご氏名を受けましたので、前置きするとコホンと咳払いをした。


「それでは、健勇の残した素晴らしい結果と優気の10日遅れの誕生日に…」


「遅すぎだな」「これは間違いなく想像できなかっただろうな」


凪行の一言に璃久瑛は笑いながら答えると当の優気からも声が上がる。


「本当だよ!そりゃこんな予想できないって」


我慢できずにぞろぞろと喋り出す一同が静まるのを待ち、怜真は、いいか?いいか?と周りを見渡す。頷く優気を見てこの場の息を全て吸うようにして、「乾杯!!」と今日一番の大きな声を上げた。


『乾杯!』と最高の()(ごと)が呼応する。それぞれの飲料を飲み込むと、自然と拍手が起こった。


八月三十一日、午後九時三十分。大きな高層マンションの一室には、この世の不安など全て取り払った幸せが生まれている。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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