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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
夏休み編
76/133

第76話 ウルトラ勉強会 ~中~

このエピソードは前の話の続きです。


お手数ですが、前話から読むことをお勧めします!

 中学の頃に家庭科の授業で作ったエプロンを着用し、食材を準備した。怜真(れいま)は待っているのも退屈だったため、何か手伝おうとキッチンに近づく。


食材や調味料などが準備されているが、キ全てのキッチン用品の中で最も異彩を放つ、大きな中華鍋がコンロの上に置かれている。あまりのチャーハン頻度により買ったのだろう。優気(ゆうき)は気を遣ってか、怜真はリビングへ帰す。上下関係などないため、罪悪感が拭えず、優気の遠慮を跳ね返そうとするも、「客人はもてなすべき」と強制的に追い返された。


優気が相手に施しをすると決めた時、なかなか曲げることはない。根が頑固なのだろう。違うベクトルに頑固さが向いていたらここまで交友関係は築けていたなかったと思いつつ、怜真は飲み物だけ準備することにした。


 鍋が温まったことを確認し、卵を焼くと米、予めカットしていたネギとチャーシューを入れ、おまけに市販で大人気のニンニクベースの調味料を少し加え豪快に炒める。更に追い打ちをかけるように醤油と塩胡椒を少量混ぜ更に炒め続けた。香ばしい香りが家中に広がり皆の食欲をそそる。


凪行(なぎゆき)を除いた三人が先に食すこととなり、目の前に置かれる前に禁断の技である『フライングいただきます』を利用すると、机に置かれた瞬間食べ始めた。


「美味い!うますぎる!!」


「美味ってやつだこれ!!!ゆーきすげぇじゃん!!」


「味付けはもちろんだが、何より米がパラついてて食べ応えがある!」


「そりゃ何よりだ!凪行の分も作っちゃうぞ」


手を挙げて返答すると優気には聞こえそうにない声であと少しと小声を漏らす。ちょっかいをかけるように炎示(えんじ)がレンゲに掬ったチャーハンを凪行に近づけるもびくとも反応を示さなかった。


一度やり始めたら何が何でもやり遂げる凪行にとって、如何なる欲も許さない。その意思が強すぎるあたり、真面目と言われる所以なのだろうと怜真は何気なく感じていた。


 「正直ここまでだとは思ってなかった」


普段と変わらぬ表情だが凪行の手は止まる気配なく、目の前の料理が減っていく。おかわりは無いと釘を刺されると三日三晩この食事だけで過ごせと言われたかのように唐突なペースダウンが目に付いた。


 「あ、優気ブルーレイ貸してくれね?」


「いいけどどうして?」

許可が下りる前にガサゴソと璃久瑛(りくあ)の大きく膨らんだ鞄からアニメの円盤を収用されたディスクが見える。


「俺が3周した一押しアニメ。『アイエンブ!』をみんなで見るんだよ」


先程まで寝不足だった目は光を取り戻していた。「ちょっと待った」凪行が大きな掌を見せる。


「俺は御免だぞ。受験生たるもの、勉強しなければならないからな」


「まぁ休憩時間だけならいいんじゃない?それ、円盤1巻で何分あるの?」


「2時間くらいか?」


「今日の勉強時間と同じじゃないか!?ふざけるな!」


当たり前の作業のように優気は凪行を宥め、怜真を見ると先程まで賛成しようとしていたが曇った表情で「流石に長すぎるよな」と厳しさを露わにしている。


「大体よー、まだ飯食べ終わってない奴が文句言う筋合いねぇだろうがよ」


炎示にしてはまともなことを言うが、どんな理由であれ今休むことができるのであれば何かと理由をつけて休みたかっただけである。


とりあえず璃久瑛のねだり姿も気持ちが悪かったため一話だけ見ようという結論となった。生き生きとディスクを取り出しブルーレイに挿入すると慣れた手つきでリモコンを操作する。


___________________________________


 「はい、1話終了。勉強に戻るぞ」


凪行の一言で現実に引き戻されるが、璃久瑛と炎示による幼稚園児のような駄々を捏ね始め、せがみ鳴くとそれらを打ち消すように手を合わせその場を離脱する。


「やっぱり昔話題になっただけあって面白かったな」


「キャラも可愛いかったしね」


「お、優気さん、誰に恋しちゃいましたか?」


「流石にまだ始まったばっかで判断できないよ」


「オレは主人公の野乃果(ののか)が一番だな!!熱心に舞妓になろうとしてるとこが良かった!!」


「単純すぎるだろ…」呆れる怜真だったが内容には満足しているようで全体的に好印象だった。


「また休憩の時に見ればいいんじゃね?」

「怜真もそう思ってたか!」

「なら決まりだな!ってかもう1話だけ…」

「ダメだぞ炎示。凪行がブチ切れる」


当の本人は自身の皿を洗うとコップに水道水を注ぎ飲み干す。こちらに気付くと炎示に睨みを効かせ次の話に手を付けるなと間接的に伝えた。


「つか、凪行はどうだった?面白かった!?」


好意的な感想を待つ璃久瑛だったが凪行の表情はあまり変わらず、相槌を伸ばす。つまらそうな印象だったのかと璃久瑛はだんだんと顔を曇らせる。


「普段アニメを視ない俺が言うのも何だが、良作の部類に入ると思われるな。うん、よく出来たアニメだと思ったよ」

「で、面白かった?」


その問いは卑怯だ。ここで肯定すれば今続きを視ることは免れない。しかし、否定は先程の発言と矛盾し虚言ともなる。無難な解答。それがコミュニケーションを取る上、そしてこの場を乗り切る上で必要な答え。


「それなりに…な?」


こちらをジッと見る視線は変わらない。なんだ、何なんだこの反応は。戸惑う凪行はリアクションの正解を求めることに駆られる。


「よし、じゃあ次の休憩で2話から見よう!」

「じゃあ勉強再開だな」

「炎示も頑張ろうな」

「あいよ…」


助かった。というべきだろうか。とりあえず勉強会は続く。


 あれから二時間が経った。宿題の終わった怜真は炎示に夏休み明け後のテスト範囲を指導しているものの当人のモチベーションはもう意識の飛んでいる様子に近かった。


優気と璃久瑛は順調に宿題をこなし、時折雑談も交えながら楽しく進めている。凪行はというと過去問を解きに解き、難関大学の応用問題に取り組み続けていた。


「もう無理だ!休憩しようぜ休憩!」

「あと少しだって。ほら、あとこの問題さえやれば残り4ページで1つ課題終わるぞ」


このやり取り何度見たことだろうか。上手く怜真が指導する姿に隣にいる璃久瑛も集中力が切れてきたのか、胡麻をすり始めた。それもわかりやすいようジェスチャー付きでだ。


「怜真さん。もう2時間経ちましたっせ?へへっ」

「確かにな。あれからそんなに経ったか」


ニヤニヤと浮かべる璃久瑛の表情が気持ち悪いが、発言自体は間違いではない。軽く頷くと璃久瑛は何か閃いたかのように勢い良く立ち上がり、リビングの大時計を指さした。


「ほら皆の衆、終末時計(しゅうまつどけい)を見よ!縮小針軍(しぐん)III(さん)を示しているぞ!察しの付いている者もいるかもしれないが、その通りだ!」


無言のリアクションにも無常に演技を続ける。


「そうだ!この日ノ本に伝わる錚々(そうそう)たる時、おやつの時間だ!!」


「いきなり砕けたな」


「西洋なのか日本なのか一貫性がないな」


「よっ!おやつにしよう!!フーフー」


「あぁもう!集中できないっ!」


頭を抱える凪行は無理やり休憩を受け入れる形となり、優気は家にあるだけの菓子と飲料を準備した。炭酸飲料とポテトチップスを開封すると璃久瑛がリモコンを操作し続きを再生し始める。始まるとなると皆は静かになり、巨大なテレビに映し出されたアニメに集中する。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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