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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
夏休み編
71/133

第71話 道筋と結果(ゴール)

 何度か乱闘を繰り返し、疲労感に見舞われる凱矢だったが、新薬が予想以上に広まっているため、相手となる者が少なく済んでいた。


「おぉ!凱矢じゃぁ~ん」


単独で行動していた凱矢の前にふと現れたのは、面識深く、この案を共に練ったロキだった。事前の打ち合わせで遭遇機会は無いかもしれないとのことだったが、異郷の地、責任感を持つポストに立っていたことで緊張感が一気に解かれる。


「まさか会えるとは思ってませんでしたよ」


「僕もだよ~。計画は順調そうだね」


「はい。これも全てロキさんが貸してくださった兵が暗躍してくれたおかげです。本当にありがとうございます」


深々と一礼するも手を横に大きく降り感謝を拒否される。


「次は大元(おおもと)の政府を叩くのはどうですかね?全ての元凶と言ったら強ち嘘ではないですし」

「それはダメ。もう手を仕込ませてるから」

「ど、どういうことですか?」

「ひっみつぅ~」


簡単な話を何度か交わすとずっと気になっていたことを質問する機会だと踏んだ。普段会うことが少ないことに加え、あまり話す機会すらないロキに対してこれはチャンスである。


「ちなみに、事前に忍ばせた兵とは一体誰なんですか?」


「あーそれは僕の兵というか、友達というか知り合いというか?まぁはっきりしないけど、合成獣(キメラ)って言って、人型の動物みたいなやつらがやってくれたんだよ。個々の特徴活かしたりして家に忍び込んで手早く、穏便に薬仕込めたってわけ。あ、ちなみに路上にいた奴らには僕が善人装ってペットボトル配ったんだけどね」


軽く笑っているが、やっていることは非人道的行為として、悪意に塗れた行為であることを二人は気がついていなかった。


「でも、本当にこれで良かったのかい?」

「と、言いますと?」

「クルド人の中には本当に困窮している家庭や真っ当に暮らしている者もいる。中には今回の計画を覆すような、(あたか)も日本人の心遣いしてまーす、みたいな人だっていたんじゃない?」


どんな民族、コミュニティでも考え方が皆一緒という事はなかなか無いことだ。誰かしらが目標や夢が異なり、特技も個性も違う。このコミュニティではマイノリティーかもしれないが、ロキの疑問はこの計画の穴を突いている。若干の笑みを浮かべているところから性根にへばりつく意地の悪さが伺えるが、ロキなりに凱矢の答えを聞き出す方法でもあった。


「確かに真っ当な人だっていると思います。俺よりも、今日率いた不良なんかよりも善い性格の人が居たかもしれません。だけど、彼らは他者や社会に迷惑事を繰り返し、咎められてこなかった。だから、僕らがやるしかないんですよ」


真っ直ぐな瞳が信憑性を強める。心からの発言を察知した。


「強引で、間違っているかもしれません。だけど、政治家も自治体も当てにならないなら、こんなことが起こっても仕方がないんです」


「小さな犠牲で、大きな犠牲を防ぐ。筋は通ってるんじゃない?」


「そうおっしゃっていただけると幸いですよ」


浮かない顔を浮かべる凱矢に掛ける言葉がロキには見つからなかった。わかっていたことだが、考えを交わすことと実際に行動するのとは違う。犯意から沸く重責と共に自身を納得させるだけの材料を視界から得ようとするのには苦痛が強いられる。


「これで変わるなら、結末が良くなるのなら、正しさの1つだと感じます」


「ま、結末に期待だね」


何とか自身と向き合うことに結論を遠のかせ、逃げるように前を向いた。勿論、自身のやったことは悪しきことだ。道徳に背き、法の枠組みに収まる国家の中でも、悪辣極まりないだろう。だが、国を治める者らが、気概を無くし、自らのためだけに権力を利用する国に法を適用することが正義なのか。


凱矢の中で、法をも倫理をも逸脱とした行為に、不思議と罪悪感は無かった。胸が痛むこともなく、ただ平然としていた。


それもその筈。これまで形成した価値観、この世を生きる人々にとって最も必要な感覚は全て()()()()()()()()()()()()()()()のだから。そんなことも知らず、彼の胸は達成感で満ち溢れている。


___________________________________


 その後、埼玉県のクルド人コミュニティ制圧作戦は無事成功。ロキの根回しもあり、後日報道される内容は『コミュニティの内部分裂』というものに変更となっていた。


SNSなどでは多大な安心の声が目に付く。しかしながら、当の実行犯である凱矢はその意見には完璧に肯定することは出来なかった。


擁護に入れば人間としての尊厳と、生きる意味から大きく脱線してしまうような気がしたのだ。つまり、今回の作戦の意義の元、日本人の尊厳の警守を掲げていたことに対し、矛盾を感じていた。


また、出来事の変更により凱矢たちに疑いが掛けられることはなかったものの、不良たちを束ねている存在だと次第に周知され始め、蔵前高校の誰もが怖れや懸念を抱かれる人物となってしまった。


凱矢の中ではこれも計算済みだが、受け止めきることができるのか。とりあえず近々に控える文化祭の準備をしに学校へ向かった。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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