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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
夏休み編
58/133

第58話 快諾

 続いて取り組む内容は神力のコントロールを練習することとなった。美奈(みな)にはクシナダ、優気(ゆうき)にはスサノオが付きそれぞれのレベルに合わせて進めていく。美奈は自身の神力をエネルギーの塊として具現化させることを目的にして行うこととなった。


「四神化して身体に広がる神力をどんどんと圧縮して掌に送り出す感じで」

「うぬぬぬぬ…」


目をつむり眉間に皺を寄せながら神力を抽出していく。先程にかなりの神力を消耗したためなかなか上手くいかない様子だったが、クシナダは自身の淹れた緑茶を啜り気長に待っていた。


「そうね、雫が手のひらに落ちるようなイメージでやるといいかも」 

「そのイメージでやってみます」


 優気はジャンジャンが作った『乱れ逢い』という神力を乱し、コントロールを難化させるグローブを両手に装着し、数メートル先の的へ当てる練習に打ち込んでいた。何とも卑猥で十八歳以上の販売サイトで見たことあるような道具名だが、その効力は抜群の性能を誇っていた。


連続で神力を溜める場合、かなりの疲労がその部分に累積するため連続使用は危険というほど神力制御のレベル高く、精密に作られた発明品なのである。


この特訓は咄嗟に神力を放出しなければならない状況への対応や、一つ一つのエネルギー弾の制度を高度なものへと強化できるため、かなり汎用性がある特訓であった。当の優気はグローブを装着した両手で神力を練ることは可能となったが、なかなか量が足りず、出たとしてもほとんど数センチ放出されるレベルが限界であった。


息が上がってきたところでスサノオがグローブを外させ、お手本を見せることとなる。


「まずここに溜めんだろ?ここまでは出来てんな。それを前に押し込む感じで。ほい」

「全く参考になりません」


驚くスサノオだったが、感覚的なことばかりで論理が通ってないことから常人には理解が出来ないのは当たり前のことだった。いつものことではあるが、スサノオは戦闘において神力を放出して攻撃を与えるといった行為はほとんど取ったことが無いため、こればかりははっきりとしたアドバイスを送ることができないのだ。


「だからこう、こっから『すうぅうっ』ってやるだけだよ」

「『すうぅっ』ですか?」

「そう!試しにやってみろ」

「はい!」


実践してみると先程よりか神力のエネルギーが放出されるスピードが速くなったが、すぐに消えてしまった。何度繰り返しても同じくらいの場所で消えてしまいしばらく足ふみ状態が続く。




「おかしいな。もっと『すうぅうっ』っとやればいいんだけどな」


「『すううぅうっ』ですか?」


「そう!それでやってみよう」



再び実践すると距離こそ的に届くほどになったが、あまりにもそれは弱々しく、神力のエネルギーとは呼ぶことに相応しいと言うレベルのはものではなかった。嫌なものを見たような顔で再び口を開く。


「うーん…難しいな」

「『ずヴぅぅううう』ですよね?」

「そう!」

「『ずがぁぁぁあああ』ですよね?」

「それだ!」

「嘘だ!!!!!」

「えっ…」


唐突にリアクションが硬派になりスサノオは思わず戸惑いを隠せずには居られない。優気の表情は崩れることなく迫真さを感じさせるままだ。


「だって最初は柔らかめの『すうぅうっ』って感じだったのに、今では『ずがぁぁぁあああ』だ!何なら『ずヴぅぅううう』の時も肯定してたことからこれは絶対テキトーなフィーリングだ!!」

「ま、まぁとりあえずやってみようぜ…な?」


スサノオの申し訳なさそうな対応を受けるとこちらが悪いように感じ、渋々言われた通りのイメージで実践を試みる。


___________________________________


 「んっぱ出ねぇじゃんかぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁああ!!!?」

「ごめん!ごめんって!」

「それも何にも出なかったって、退化してるじゃないですか!!」


スサノオの前身を巨大な大木を振るわすようにわさわさと揺らし、精密なアドバイスを求める。


 「できた!」

優気の激詰め中にあまり大きな声ではないものの、喜ばしさが凝縮されたその一言に鼓膜は振動した。その声の方向を見ると神力をエネルギーとして具現化させることに成功した本辺の姿がそこにはあった。


「よく出来たわね!それじゃ、あっちの的に向けて放ってみて」

「えぇい!」


美奈の放ったエネルギーは弾として的へ一直線に向かい、見事に命中した。時間としては約一時間を回った頃のことである。


「凄い!やったじゃない」

クシナダの褒め言葉に笑顔が漏れ、自然と顔が笑みが浮かぶ。優気は駆け足で近づき、美奈、クシナダ、的の順に目線を動かし、起こった事の整理を行った。


「俺、神力の放出に2ヶ月かかったっていうのに…」

「2ヶ月!?アンタ才能無いんじゃないの?」

「そんなズバッと言うな!!こっちはガチで妬いてるんだからな…」

「普段ずけずけと言って来るくせに、全くどの口が言ってんだか…」


項垂れ姿の優気を無視し、スサノオは関心を寄せる。


「まぁそうだな。こないだの神力感覚が残っているとすれば、習得が楽になるのも納得できるな」


コツコツと努力を重ねたのに対して異様なステップアップですぐに追いつかれると優気の立場は大変ちっぽけなものとなってしまう。スサノオの考察を聞いて優気はホッとし、気が楽になるのを非常に感じた。


「スサ、今更思ったんだけど、本辺さん私たちに協力すると言って無くない?」

「あっ…た、体験させてから誘うって決めてただけで!これは敢えてってやつだ!!」

「絶対忘れてた」追い打ちをかけるよう優気は小さく口ずさむ。


しかし、対として美奈がこの世界に変革を齎そうとする神の使者、『改革派』に付くならば、優気たち『維持派』にとって敵となる。この決断はクラスメイトであり、日々関わりのある優気にとって大きなものとなることは間違いない。


「本辺さん、説明遅れたわね。この世界には人間を操ったり無理を強いれることで理想を作ろうとしてるグループが着々と準備を進めているわ。それに対抗して今の宇宙やら世界やらを守ろうとしてるグループが私たちなの」


「す、すごいお話ですね…」


「確かにそう思うのも無理もないわ。戸惑うのは分かるけど、あなたに協力を要請したいの。この世を絶望や地獄に陥れないよう、守り抜くの」


「きゅ、急に言われてもまだ何が何だか」


「もちろん今答えを出せとは言わないわ。理解が追い付かないのが当たり前だからね」


困惑する美奈はクシナダの言ったことに答え合わせをするように再び話を振り返る。しかし、美奈は存外整理がついている様子であった。ここまでの修行や自身に宿った力は普通の人間には成し得ないことであるため、それを受け止められると自然と理解が追いついていくのだ。


「そうねぇ…」小さく呟き回答を探り寄せる。


「わかりました!協力します」


「それは良かった!ちなみに決め手はなんだったの?」


クシナダの質問を受けると、本辺は優気へ一瞥を送り再びクシナダに視線を戻した。


「どこかのアホ男と約束しちゃったんですよ。今まで迷惑かけたり恩になった分清算するって。だけど、人間に自由が約束されなかったり、むやみやたらに死んじゃったりしたらそれが出来無くなっちゃうなって思ったんです」


「そう!立派なことじゃないの」


「あとそれに、褒められることなんて親友以外、上辺のことばかりであんまり嬉しくなかったけど、今日は私の行動について褒められたから嬉しいなってのもあるんですけどね」


照れた笑顔は幼子が見せるくしゃっとした顔のようだった。その表情はこの場にいる他の三人を安堵させ、明るい雰囲気を齎す。


「あのさ、本辺さんって男の人が嫌い!ってキレ散らかしてけどあれから2週間くらい経って今はどう思ってるの?」


「んー殺したい」


「えぇ!?ちょ、えぇ!?」


「冗談よ。けど、まだバリバリ抵抗感があるのは事実よ」


「なんなんだよ…」

息を吐きだしながら言葉を漏らし、胸をなでおろす。


というのも、この組織には男が九割以上を占めるため、優気はこの先何とかやっていけるか心配だったのだ。またキレ散らかされるのも面倒だし、その光景を見る側となっても心苦しいものがある。この懸念が消えると今後、本辺美奈(みな)が生きていくうえで大きな成長につながり、今後の降りかかってくるであろう無理難題や懸念が大きく減少することは間違いない。


「なら、それも一緒に克服出来ればいいな」ってことで第一歩、と手を差し出し握手を求めた。


唐突に放り投げだされた手に若干戸惑いを見せつつ、空中に重りを載せているかのような手で優気と握手を交わした。向こうの軽い握手の中に芯があるのを感じ、本辺はだんだんと強張った手が柔らかに落ち着いていく。


「改めてよろしくな」


「うんっ!」


優気の笑顔に美奈は笑顔で返す。晴れて、青龍の力を宿した本辺美奈を維持派に引き込むことができたのであった。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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