第55話 報告
青龍を倒した旨の連絡を送ると、アジトにかかっていた結界が解除されているとの返答を貰ったため学校へ戻る。
また、本辺は学校に荷物があることや、大切な親友たちの心配など、整理しなければならないことも多かったため、学校にて別れることになった。
時刻は十六時四十分を回る頃、結界は予想通りに解かれており、部屋に入るとソファーの後ろに手を回すスサノオと椅子に腰を掛けるゼウスとヘラの姿があった。スサノオは大きく足を組みながら貧乏ゆすりをしていたため、若干苛立っている様子がわかる。
クシナダによるガードの固い結界と厳重なセキュリティ対策によって日頃アジトには安全が担保されていた。まさか、それらが破られるとは、維持派のメンバーからしてみれば思いもしない出来事である。
「おぉ、君たち。無事だったか」
最初に気がついたのはゼウスで、開口一番安全確認をされる。
完璧な防御態勢故に、優気たちにも何か被害が及んでいるのではないかと予め想定していたこともあり、四人の状態が気になっていた。
「はい。まぁ、4人とも死にかけましたけどね」
「『『死にかけた!?』』三人の使者は大きく驚きを示す。
「死にかけたってのはどういうことよ?敵の使者に襲われたの?」
心配そうに声をかけるヘラの表情は初めて横転した幼子に心配を寄せる母親のようなものだった。
「敵というか、敵に操られてっぽい感じで。クラスメイトなんですけど。なんとかみんなの力貸してもらって勝ちました!今はもう正気を保ててるので相手は心配しないでください」
「良かったわね~」息を吐くとともに心配を吐きだすと「おぉ~ようやったな小僧たち」とゼウスから称賛される。労い意味を込められたお茶がヘラから四人に注がれ感謝と共に軽く乾杯する。
「みんなよくやったな。で、相手はどこの誰だったんだ?」
スサノオも会話に参戦するもいつもよりかは明るい様子ではない。貧乏ゆすりは優気たちが来てからは止まったものの、やはりどこか気が立っている。
「僕と同じ四神で、青龍の使者でした」
「ほーん、四神か!」
「はい。途中で本物の青龍が出てきてむちゃめちゃ焦りました」
「本物?あー第二形態か」
「知ってたんですか!?」
「あぁ。四神をロボット操るみてぇに指示して戦うやつな。確か強えけど制限があって神力も結構食うから扱い難しいんだよな」
「スサさん詳しいですね」
健勇がお茶を継ぎ足しながら話しかける。スサさん、という言い方にいつ交流があったのか気になるところだが、話の内容の方が優先度が高かったためツッコまずにスルーする。
「何回か戦ったことあっからな。朱雀に関しては味方サイドですげぇ近くで見たことあるぜ。そんでその先もな」
「えぇ!その話もっと聞きたいですよスッさん!」
「スッさん!?なんだそのぐっさんみたいな言い方は」
流石にこの呼び方の違和感を拭いきれずにはいられなかった。璃久瑛とスサノオの間に何があったのか知る由もないが、とりあえず交流があったことは間違いない。
「ぐっさん今何やってるんだろうな…」
「怜真、気にするところ間違えてるぞ」
呆然とツッコむとリビングにクシナダが姿を現した。大分疲弊した様子で伸びをしているとヘラが可愛らしいコップにお茶を注ぎ「お疲れ」と労う。スサノオは前屈みの姿勢になり、手を組むと「どうなった?」と問いかけた。
「結界の復旧と出来る限りの上位結界を3枚張ったわ。セキュリティの方も士純をはじめ、4人でアップデートさせて頑張ってるみたいよ」
お茶の入ったコップをソファーの前の小さなテーブルに置くとソファーに寄りかかりマッサージ機能を使い始める。
「そりゃお疲れなっこって」
クシナダの登場に安堵したのだろう、スサノオがいつもの気分に戻る。ソファーを自由に扱えるようにその場を立ちあがると、クシナダは空いたスペースに寝転がりソファー全体のマッサージ機能をオンにさせた。十五連勤後に疲労回復で知られる温泉の湯船に浸かり、あまりの心地よさに思わず声が漏れた時と同じ声を上げていた。
怪訝そうな顔を浮かべる優気たちに「そうだった」と何かを思い出した様子でスサノオは呟く。
「恐らく知ってると思うが、こっちに結界が張られてな。部屋の出入りも出来なくなるし機械も全部おじゃんだったんだよ」
「えぇ!?結界が張られちゃったってのは知ってましたが、そんな事の大きいことあったんですね」
「じゃあここも引っ越さないといけないってことですか?」
「そう。そんでもう引っ越した」
四人は約束されたように驚くと「そうなると思った」とヘラは小さく笑った。
「日本とキルギスにここにつながる家があったんだけど、今は別のとこに引っ越したから大丈夫」
「キルギス!?」
「何でそんなところに…」
怜真の浮かべる疑問に加え、璃久瑛は金の出どころに興味があったが、神の使者という存在を前に、愚問になり得るだろうと質問は控えることにした。
「じゃあ俺は修行してくっけど、優気は…って今日は塾だっけ?」
「あっ、はい。よく覚えてましたね」
「そりゃ弟子のことを把握するのも師匠の役目よ」スサノオは腰に手を当て自慢げに話す。
「はー!一生付いていきます!!師匠!!」
「ってことでまた明日な。他はどうすっか?一応そこの老い耄れに稽古つけてもらうか?」
「誰が老害だ!!」
「いやそんなこと言ってねぇよ!」
「あっそうか」
「老害だぁ…」
「ヘラはそんなこと言わないでくれぃ!!」
「まぁみんなと帰った方がいいか。ってことでジジィは寝てろ」
「コラ、スサ!!全盛期の時の儂ならそれが遺言になってたぞ」
「昔のことでマウントを取ろうとするのかがもう、なんとも…」
「ちょっとカッコつけたかっただけだから!本音じゃないから!頼むから儂の心を討つのはやめてくれ…」
一連のゼウスいじりの流れが終わり、結果として健勇も帰宅することになった。「それじゃあな」と見送る三名の使者に返答し四人は部屋を出た。
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どこかの大部屋。一室の明かりは蠟燭の灯だけであり、ロキの目の前にある高貴な椅子が一段と目立つ。周りには本がたくさん並び、頬杖をついて寄りかかる者と話を進めていた。
「青龍は朱雀を討てなかったか」
「ちょっとしくじったよ。けど心配はいらないよ」
「誰にでもイレギュラーは生じるからな。次叩くとするなら麒麟を使うか?」
「いやぁ~まだ完成には時間がかかるんだよね。何度か実験を重ねなきゃ」
「そうか。何より吉報を待つこととする」
緻密な内容だが、興味のない会話を進めるようなスピードで端的に済ませる。
ロキが部屋を出ていくために後ろへ歩き始めると「四神の成長性を侮るなよ」と声をかけられる。
「それはこちらにも言えるが、相手にも言えることだ」
ロキは歩幅を変えずに出口へ向かう。出口の前で立ち止まると、首だけ横へ向かせ、「了解したよ」と片手を上げる。ニヤついた表情のまま部屋を出ていくと部屋にある全蠟燭が消灯した。
「やはり怪しさは拭えぬか」
溜息とともに出た言葉に高貴な椅子に一番近い蠟燭が再度大きく点火した。改革派の王は、いつも静かに呼吸を整えるばかりだ。
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「これはこれはロキ殿」そう声をかけたのは小柄なロキよりも圧倒的に背の低い老爺だった。深々と頭を下げる姿にロキは感情が湧くことはない。
礼節を弁えることを忘れない知恵のある者。白衣を身に纏ったその姿は医者、或いは何か発見する発明者のようなものにも見えるが、何を信条として探究する者なのかはロキすらも分からない。もとい、分かろうとする必要はなく、ただ利用する。そんなシンプルな思考がロキをここへ導いている。
「じぃさん研究者。どうかな?調子は」
「もう少しでどちらも完成ですぞ」
「そうか。それなら順調ってことだね」
「はい。勿論のこと。この私にかかればどんな不可能もこの世に出ていない最新最高の手でやり遂げてみせますぞ」
大きなカプセルに入った人間と角が二本生えた人間のような生物の姿を前に会話を続けた。
「この発見された遺体は修復中でございますぅ」
「このことは勿論誰にも公言していないよね?」
「はいぃ。他の使者様も知り得ませんぞ」
「なら安心だ。麒麟はどうだ?」
「はいぃ。10月に65%、来年2月に81%完成ですぞ」
「そうか。そうか…」
ニタニタと不敵な笑みを浮かべるロキは「また手駒が増える」と高ぶる気持ちを堪えられず息を巻く。
「あのぉ、これが上手くいけば報酬の方も…」
「あぁ約束するよ。それも、想像以上に出来が良かったら倍にしてね」
「うぅうぅ…またまた喜ばしいことを…これには再びやる気が漲って来ましたぞ」
その場を後にし、他にも立ち並ぶカプセルに目を通す。紫や黄緑の液体の中に閉じ込められた者らはどれもこれもそれらは全て死者であり、あり得ない生物であるが形を保ち復元されるように日々調整と変化を行き来している。
「来たるべき時が楽しみだ」
先程とは異なる調整が為されている、角の生えた人擬きの生物。奇抜な髪型の人間の大人。二者にそう言葉を告げるとその場を後にした。
青龍編終了!
次からは夏休み編です
ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m




