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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
青龍編
53/133

第53話 時間を稼げ!

 内に潜む朱雀(すざく)と接触し、友人たちが抗戦する青龍(せいりゅう)と同等の力を得るために優気(ゆうき)は木陰に佇む。


 目を瞑り、スサノオとの修行で身に着けた時を思い出す。祈るようにして、何度か朱雀に呼び掛けると、その姿がぼんやりと見えてきた。顔ははっきりと視認できないが、大きな姿と広がる羽が特徴的で、名の通りにオレンジに近い朱の色で全身を包んでいた。


「あなたが、朱雀…」


靄がかかった見た目だったが、馴染みない体験と壮麗で壮大な見た目から声を失う。驚喜という表現よりかは驚愕と恍惚と言った感情が混じり合い、朱雀の姿に見惚れていた。


__________この領域に踏み込むとはな。


優気に対する返答とは正確な答えではなく、曖昧なものだったが、目の前に対する者は朱雀で間違いないようだ。息を吞み、再び言葉を交わそうと試みる。


「あの、僕はさっきあなたの力借りて青龍の力を宿す人と戦ってたんですけど、戦いの最中青龍そのものが目の前に現れたんですよ。合体したのかわからないですけど、そいつは」


__________知っている。ここから見ていた。


慌てる優気の言葉を遮ると、それなら早いと言わんばかりに日が差したような表情で思わず口を開く。


「じゃあ、その!青龍みたいに僕にも更に力、貸してくれませんか?」


沈黙が生まれ、「お願いします」と頭を下げても沈黙が続く一方だった。目の前の怪鳥は何を考えているのか理解が出来ず、少々困るばかりである。


__________無理な相談だな。


「えぇ…っと、それは何故でしょうか?」

唐突な拒否に優気は露骨に嫌な表情を浮かべると少しずつ普段の声量に近づいていく。


__________私が青龍のように力を貸すと貴殿の肉体が神力(じんりょく)に耐えられなくなる。


「えっ。そしたら本辺(もとべ)さん、あっと、青龍の力を宿してる人間は耐えられていないってことですか?」


________否、彼女はまだ生きている。恐らく何かしらの能力か技術が介入されているかわからないが、無理矢理青龍の力を引き出している。あの神力は普段の青龍のものとは異なっているため、元々あの少女から潜在的に発せられた力ではないことは明らかだ。


 クラスメイトの安否を確認することができ、ほっと胸をなでおろす。特に相手の四神の情報を聞き出せたことは大きな収穫だ。第三者の関わりによって本辺が操られているような形だと認識できる。


________しかし、その分かなり肉体と精神には負荷がかかっているだろう。とても耐えられない状況に置かれているのは確かだ。大人しく青龍の力を超える力を持つ他の者を頼るしかないな。


「…っ!止めるには、もう僕と外で今時間を稼いでくれている親友たちしかいません。今すぐにでも止めないと後々街に被害が出るし、死人も出る。そんでもって何より、青龍の力に操られてる本辺さんを助け出さないと!」


厳しい現状を説明し朱雀を説得する。どうにかして救い出さなければ第三者、恐らく改革派の良いように人間社会がこねくり回されてしまう。これが許されれば、更に被害が増え、彼らの計画を阻止することも全て終わりの一途を辿ることとなる。今自らの力でこの場を収めることに全てがかかっているのだ。


_______貴殿は何故青龍の苗床となる少女を救う?ここまでして傷つけられ、更には他の者らを傷つけようとしているが、一体何故そんなにも己のことのように護ろうとするのだ?


「何故って…そりゃ」


優気の中では愚問に等しいが、慣れない環境と疲労、前に出過ぎた感情が言語化を困らせる。


間を取り、深々と呼吸を整え、自身の答えを整理すると、すらすらと返答が湧き出てきた。


「誰かの手を求めてる人が居るんなら、俺の手に届く範囲の人はできる限り救いたい。青龍の、本辺さんはこれまで起こった辛いことをずっと一人で抱え込んでたんだ。相談もできない孤独の中、苦しみに耐え続けた。普段あんまり関わりのない他人で、深いことはわからないけど…」


下を俯くと暴れ出した本辺、三沢(みさわ)和野(わの)の心配する姿、その三人が仲良く話し合っていた居た姿を思い出し、拳を強く握る。


「だけどさ、こんな状況になったら!例え偽善だと言われたとしても、手を差し伸ばしたくなるだろ!?」


落ち着きと焦りを含んだ強い声で解を示した。秩序と倫理。感情と論理。その両方から、苦しむ人を、助けを求める人を救うことは当然のことであるという考え方は今も昔も変わりはしない。


「俺は人間、色んな人と支え合うこととか、やっぱり誰かと楽しむためにも生きてると思ってるんです。だから誰かが悲しむ結末は見たくないし、作りたくない!」


言葉を続けて更に回答を深掘った。他者と共に楽しみと喜びを感じること、時に助け合うこと、平和を願うこと。これこそが神崎(かみさき)優気たる所以であり、神崎優気を在らしめる答えである。朱雀はその言葉と姿を見て、何かを思い出したかのように小さく笑った。


_______15分。今の私が地上へ現前する力を貸せる時間だ。好きな時に熱願の想いで神力を込めろ。さすれば力を享受することができる。


「本当ですか!?」


_______力を操るのは貴殿だ。行動を想像すれば私がそれに応える。


「マジかすげぇ!これなら勝てそうだ!」あまりの興奮で朱雀への緊張感はすでに無くなっていた。


_______だからこそ、貴殿の想像力が重要だ。互い利のある結果を出すことに専念することを約束してはくれぬか。


「はい!えぇと、朱雀さんの迷惑になんないようにそこは配慮します」


_______今更敬意など要らぬわ。さぁ己の目的を存分に果たすが良い。


「おうよ!よろしくな!」


___________________________________


 「次、璃久瑛(りくあ)!!右方に注意を引き付けてくれ!」

「了解!」

健勇(けんゆう)は次の手順のために移動してくれ」

「わかった!!」


怜真(れいま)が司令塔となり、青龍の攻撃を躱しながら目標の時間を稼ぐことに尽力していた。


対神の使者用弾丸。命中すれば、それなりのダメージを負わせることが出来るため、時間稼ぎにはかなり有効な手立てであることは、青龍の苛立ちから間違いないだろう。


弾薬が切れる頃合い。それ以降のことは未だノープランである。約束の時間まで何とかして持ち堪えたいが、どうすればいいか。


「避けろぉぉぉぉぉおおおおぉおおおぉぉおおおぉぉおおおおおぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!!」


健勇の声に現実に引き戻されると青龍の口元が光り、神力の砲撃が来る吉兆がする。砲撃は川を割り、直撃した部分は見事に干上がった状態となっていた。


「璃久瑛!もう弾切れだ!」

「こっちもあと1発だ!」


残りの弾薬は璃久瑛の持つ拳銃のみとなり、遂に追い詰められた。怜真は周りに武器となるものを必死に探す。目に付いたのは石ころしかなく、仕方なくそれ取って青龍に投げつけた。人類最古から存在する攻撃術、投石だ。


離れた健勇の傍に数個石を送る。地面から数個手に取った健勇は野球部で鍛え上げたリリース方法と持ち前の肩力で青龍へ力強く石を投げる。


歪な形の石を思い切り投げたことにより、健勇の中指が擦り切れるも、保険をかけず全力を込めた結果、注意を引くことができるほどの威力が担保され再び砲撃の合図が上がる。


「健勇、俺らと離れろ!」


「了解っ!」ベースランニングで日頃鍛えた脚力で逃げることに成功すると、注意を引き付けた隙に璃久瑛が青龍に近づいていく。


「怜真!これなら至近距離でかませそうだけど、どうする!?」

「わかった。そのままぶち込め璃久瑛!絶対死ぬなよ!」


青龍の中央部に存在するコアのような部分を狙って引き金を引く。反動で肘関節に馴染みのない痛みが走るも、弾は見事に命中し、呻き声を上げよろめく青龍はダメージを負ったように見えた。


「すぐに離れろ!攻撃がまた来るぞ!」


青龍の尻尾が肘を押さえる璃久瑛をはたき潰すように振られると、必死に左右に動いてギリギリのところで躱すことに成功した。しかし、偶然に過ぎずすぐに追撃が来ることから走行の気はまだ緩むことが出来ない。健勇の投石で何とかクリアし、危機から逃れることに成功した。


「肘が痛ぇ…マジで死ぬかと思ったぁ…」

「よくやったぞ璃久瑛」

「けど、もう策がないぞ!」


健勇の言葉通り、もう時間を稼ぐための策は尽きた。万事休すとはまさにこのことである。あれから二十六分が過ぎようとしているが優気はまだ来ない。


 「優気、頼むから来てくれ…!」


怜真の強い思いは言葉の形をして発さられた。青龍がこちらに目をやり攻撃に入る。


もうここまでか。半ば諦めていた時、額から血を流し、体の至る所が怪我まみれの人物が三人を抜き去っていく。


「きたか優気!!」「ようやく主人公様の登場か!」「ギリギリ間に合ったか…」


待ちに待った優気の到着に三人は近くへ集まっていく。親友たちに先の自身のような大きな傷や怪我などは見えないものの、疲れ模様が垣間見え、何度か死を直面したことかわかる。


「3人共ありがとな。それじゃ行って来るわ」


労いの言葉を送り前を向く。大きく息を吸いいつものように神力を解放するが、いつも以上に熱く、救済たる強き願いが籠っていた。


「来い!すざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああくっ!!!!!!」


優気の全身が朱色の光を帯び、さらに周りを朱色の神力が包む。大きな爆風が吹き荒れると、次第に神力に包まれた光が大きくなっていく。


 やがて光は鴻鵠(こうこく)の姿を形作り、神力も強大なものへと進化していく。


羽を広げた大きな怪鳥、朱雀が同じ四神の青龍を目の前にこの世へ現前した瞬間である。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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