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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
青龍編
52/133

第52話 作戦会議

 川沿いに住宅が並ぶ路地へゴロゴロと吹き飛ばされると、丁度そこへ怜真(れいま)健勇(けんゆう)を引き連れた璃久瑛(りくあ)がやってきた。


全身から大量出血をし、まともに動けない優気(ゆうき)の姿を見て何度も呼びかけるも応答しない。璃久瑛はまさかと悪い予感を建ててしまうが、優気の視界はぼんやりと見えてくる。


死ぬかと思った。

何とか振り絞ったか細い声が三人を安堵へ導く。


「良かった!!まだ息がある!!直ぐにスサノオさんたちを呼んで処置を」

「それが!」

怜真は柄にもなく、大きな声で話を遮る。何やら嫌な予感がしていることはこの場に居る全員に伝わってしまう。


「それが…無理だった」

暗く、答えたくもない答えを押し殺しながら返した。


「ええっ!と、なんで?」


「学校から入れなかったんだ。だから連絡してみたら向こうのアジトで訳の分からない強力な結界が張られてて、あの部屋から脱出できないって返答がきたんだよ」


認めたくないのか、怜真の声色は震えており、目線を深く落としてしまった。健勇も視線を切り、この状況が危機的状況だと理解する。今後のビジョンが見えず、見慣れた地元の川の宙。青き龍の咆哮が虚しさを引き立てる。


「そんなぁ…」璃久瑛の視線は倒れ込む優気へ向かうと共にその場にしゃがみ込む。


「おそらく今まで本辺(もとべ)さんが青龍の力を宿していたとは考えにくい。これは予め計画されたことなんじゃないか?」


「璃久瑛の言うことは間違いじゃないが、それは後で考えるとして。今はここにいる抵抗できる3人で何とかするしかないってことか…」

しかしながら、発言者本人、怜真からは「まぁ、戦える訳ないか」と勝機を捨てる発言を続けられた。


「けど、今ある武器を使って奴に対抗しなきゃ、この世がどうなるかわからんぞ」

「健勇の言ってることは正しいけど、ここにあるのは俺と怜真が持ってる拳銃だけだ。使えないことはないけど、正直言ってあんなドラゴンに大きなダメージは見いだせないよ」

「だからと言って抵抗しないのかよ!」

「抵抗はするけどもっと色々考えないと!」

「考えてるうちにあいつが結界外に出て街で暴走したらどうするんだよ!?」

「2人で争ってる場合じゃないだろ!!」


怜真が一喝し、その場を収める。このような危機に扮した状況はパニックになり、ただひたすらに時間を潰すことがタブーだ。どれだけ冷静に立ち振る舞えるか、そんな対応が求められる中、怜真は微かな抵抗を実行するために落ち着きを払う。


「とりあえず今わかることは、ここに倒れてる優気にこれまで助けられてきた分、今ここで俺たちが果たす番だろ」


ここで死ぬかもしれない。ボロボロになった親友を横にそんな危惧が頭をよぎる。唇を嚙みしめ、覚悟を決めた。


「人間共に笑い合える、楽しみ合うために生きる。それが優気の信条だろ?なら俺はそんな日々が送れるよう、今、鮮血を注ぐよ」


少しの沈黙が挟まれると璃久瑛が小さな笑みを浮かべた。


「かっけぇこと言いやがって…あぁ!怜真!そういうこった!やんぜ俺は」


「もちろん俺もやるぞ!!!2人とも助けて平和を掴み取るッ!!」


 そうと決まると、怜真と璃久瑛は自身のポケットから拳銃を取り出し準備を進める。

「せめて弱点さえあればな」怜真が願いを吐露すると弾薬を確認していた璃久瑛は頭を搔き「あのさぁ…」と自信なさげに口を開いた。


「すげぇありきたりだから逆にあり得ないとは思うんだけど…」

「勿体ぶらなくていいぞ。神の使者なんてあり得ないことばかりだからな」

「あぁ、うん。それなら…」

緊張と唾飲み込み、人差し指を大きな龍へ向ける。


「恐らくだけど、青龍の身体の真ん中にあるコアっぽいやつが弱点なんじゃねぇか?」


何度も円を描き、「ほら!あそこの小っちゃい赤丸!梅干しみたいなやつ!」と璃久瑛の言葉に力が加わると怜真は視認した途端たじろぐような表情を見せた。


「わかりやすすぎて逆に怖いが…確かに今はやるっきゃないかんな」

「少しでも可能性がある方に俺は賛成だ!!いつでも突入できるぞ!!」


固定ロックを外し、弾を発射する準備を先に整えて置くと、優気が起き上がり近くの電柱に寄りかかった。無理をするなと三人から止められるも、心配を振り解いて背中で全身を支える。自己治療を全身に注いだからか、ほんの少しだけ回復が捗り座れるくらいまでは通常の状態に戻ることができていたのだ。


「みんな心配かけて、ボコられてわりぃな」


「何謝ってんだよ!!いっつも貧弱だろ?」


「はは…りっくんキツすぎ」


「悪いが優気、それは事実だ。お前の置かれてる現状はまさに『棚から牡丹餅。食べてもイマイチ』といったところだな」


「はは…怜真は別の意味でキツすぎ」


「うう!緊張して腹がぁ~!!」


「はは…健勇はお腹ユルすぎ」


戦闘の疲労が残るがツッコミを利用して安全を確認する。怪我の具合からあと十分すれば痛みはまだ残るものの行動できる程度に回復すると判断した。


しかし、重症を負った身体の治癒には多くの神力(じんりょく)を消費するため先よりかは優位な戦闘として立ち振る舞えない可能性が極めて高い。


だが、優気は薄い勝機を見出していた。いや、現状を打破するにはこれしか方法がない。試してみてぇな、小さく呟き三人に思いを伝える。


「もしかしたら、俺もあれみたいになれるかも知れねぇ」


傷だらけの親友から新たな可能性を告げられると他の三人は怪訝そうな表情を浮かべ、理解した後には目を見開いた。


「『あれみたいなの』って、青龍みたいに優気の見た目を朱雀みたいに変身させるってことか?」


「そんなとこ。あれは恐らく俺がいつも使っている朱雀の力の応用、ってか次のステップみたいなもんだと思う」


「そんなことが見ただけでできるのか!?」


「確かに普段、神力のコントロールとかにむちゃめちゃ手こずってる俺は難しいとは思うけど、あいつにだってできたんだ。なら俺が出来なきゃおかしいだろ」

っていうか俺の方が先に四神の力宿したのに簡単に先越されて恥ずかしいだろ。


妬み言葉と虚しさが籠った言葉を付け足すと皆から同情の目線が優気のプライドを微力ながら立て直させる。優気に対する可能性は見いだせると勝機につながる可能性が高く、今後にも活かせる挑戦かつ進歩の好機である。少しでも生存の確率が上がるのであればそれに縋るしかない。


「わかった。操られているから出来たという薄い線も残ってはいるが、ここは優気を信用する」分析を行った後に二人に了承をもらい、時間稼ぎを本格的に行うことと決めた。


「で、何分あればいい?」


「ん~悪いけんど20分くらいくれないか。動けるようになるのに結構時間かかりそうだ」

「なかなか難しいこと言ってくれるな」

「けどやるっきゃねぇ、だろ?」

「おぉ!!やるぞ!!やるぞ!!うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」

「やかましい!!お前、踏ん張りすぎて本当にうんこ漏れるぞ!」


大声で興奮を表現する健勇は緊迫する場面でいつも通りの健勇を披露すると、段々と本格的に戦闘する雰囲気が作られていく。


「よし、じゃあ璃久瑛と健勇と俺の3人で策を何パターンか用意して直ぐに行動に移る」


「あぁ、わかった。頼んだぞ!!」


本当に良い友人を持った。話し合っている三人を見ていると優気の脳内にそんな言葉が過る。意識せずとも脳内に流れることから本心から思った言葉なのだろう。


 そんなことに思いをはせていると友人らは簡易的に打ち合わせが終わり、確認をしながら青龍の元へ向かい始めた。


「くれぐれも命を最優先にな!!」


安全を呼び掛けると戦場へ赴くというのに各々が明るく軽めなリアクションで応対されたことから、不安がちらつくも彼らを信じ続ける。


 三人が時間を稼ぐ間、こちらもやらなければならないことに挑戦し始める。一刻も早く自身の中にいる朱雀と接触を試みたいと目を瞑り、初めて四神化したあの感覚を呼び起こそうとひたすらに願う。


 二十分程度経った頃だろうか。正確時間は分からないが、羽を広げた鴻鵠(こうこく)の姿が優気の瞑った瞳の奥に薄っすらと見えた

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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