第43話 親友の定義
グラウンドでは優気とヘラクレス対アレスとギルガメッシュとの戦いが続いていた。優気の不利な状況となるとヘラクレスのフォローが入り、その度に相手をスイッチする。
優気の相手がギルガメッシュとなったところだった。使用している神力も攻撃手段も大きく変えていないのにもかかわらず、相手の体力か神力が落ちてきたのか、一気に優気の攻撃が深々と追い詰める。
急激な変化であり、何より手応えがない。敢えて手を抜いているのではないかと勘繰るも、何故こんなことをする必要があるのかが理解ができない。
「クソぉー」棒読みで声を上げるギルガメッシュの言動に懐疑さが増す。
「優気!そのまま殴り飛ばせ!!」アレスを相手に余裕があるのだろうか。ヘラクレスが優気へ声援を送る。言葉のままに神力の出力を高め追撃に転じようとしたその時だった。
「おい!!何やってんだよっ!!」
校内からグラウンドに飛び出てきた凱矢が大きな声で優気の言動を止めさせた。
「凱矢…」
すたすたとこちらに歩いてくる凱矢は、殴り合い切りつけ合いの激しい攻防を無視して優気の元へ近づいていく。一度覚悟を決めた己の行動は最後まで果たす。その言動は中学時代から変わっておらず、度胸ある性格は今もなお健在であることが証明される。
優気はグラウンドに入ってくる凱矢に危険でありながらも、懐かしい顔と行動に何か安堵するものがあった。しかし、近づいて来るにつれて黄色信号が灯る。怒りの表情が優気に向いているのではないかと判断できるのだ。
「優気ぃ!前!!」
遠くから声援を送っていた璃久瑛がギルガメッシュの振り上げた拳を危惧して大声を上げた。その場を離れ、神力で練ったエネルギー弾を数発ギルガメッシュに放ると相手は躱す素振りも防ぐ素振りも無く、ダメージを与えることに成功する。
「んあークソー」棒読み具合から大きなダメージになっていないことが分かるが、戦闘よりも凱矢の様子が気になって仕方なかったため、距離を取ると同時に凱矢に近づいた。
「凱矢…?」近づき、確信する。目の前にいる中学時代までの同級生は自身に対して怒りを寄せている。
「おい、優気。これはどういう事なんだよ…?」
「どういう事って、神の使者からお前を守るために抵抗して…」
「守るってふざけんな!!俺はあの人たちに救われたんだぞ!?」
衝撃的な発言に優気は言葉を失った。理解に苦しみたじろぐ優気は『救われた』という言葉に疑問符をつけ躓きながら繰り返していた。凱矢は胸倉を掴み優気を現実に引き戻す。
「あぁそうだよ。退屈で孤独な俺にゆとりを作ってくれた人たちだぞ…そんな人たちに、なんでそんなことが出来んだよ!?」
強く握りしめられる力と力強い眼からひしひしと情動が伝わってくる。そんな中、これまで凱矢に何も力になれなかった優気からは何も言葉にすることができなかった。否、その資格がなかったのだ。これは遠目から様子を見守っていた璃久瑛と健勇も同じことであり、何も出来なかった。
熱い訴えの中、アレスは携帯していた機械のボタンを押すと二名の改革派付近の空間がそれぞれ裂け始めた。
「撤退だ。凱矢はついてくるか?」
「あぁ、そうするよ」力を込め掴んでいた手を離し、優気を背に追い越していく。
「ヘラクレス、今日の戦闘はとても価値のある戦闘だった。いつか再び手合わせ願いたい」
「機があればな。こっちも戦闘ボケ直せたわ。じゃあな」姿が消えると、「こっからだったってのに」と声を漏らし、残念そうに大剣を消した。
「やっぱり違う!」
ギルガメッシュの近くにある空間の裂け目に向かったところで凱矢に足を止めさせる。
「そいつらは人間の未来を好き勝手する悪人だ。現に俺らの命を狙ってたからな。目的のためなら死をも厭わない。そんな奴らだよ!!きっと、凱矢は騙されてる!そんな奴らに付いていくのか!?」
____流石朱雀の継承者。勘付かれたか?
アレスは優気の投げやりのような言葉に疑念を抱いた。少しの沈黙。凱矢はその間で考え、静かに答えを出した。
「俺が正しいと感じる答えを見つけるまで、俺は付いていくよ」
最後に言葉を告げた時、それまで背を向けていた凱矢は身体全身を優気の方へ向き直し、真剣な面持ちで返答をした。
「その頑固さは小学生の頃から変わらないな!!」
「確かに変わらないな。夢に真っ直ぐな健勇も、いつも可笑しなことやってる璃久瑛も、お人好しな優気も。案外みんな変わってねぇのかもな」
若干笑い交じりの言葉には焦燥感が潜んでいる様子だった。
「じゃあな」
吐き捨て、裂けた空間に身体を向ける。
「ま、待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええぇええええ!!!!!凱矢ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」
健勇が裂けた空間に直行するもその行いは虚しく、ギルガメッシュに連れられ旧友はその場から姿を消した。同時に貼られていた強固な結界も消え、優気たちから何かが欠落したような気がした。
ヘラクレスは二名の改革派の狙いは優気の朱雀の力だと踏んでいたが、先の凱矢と優気のやり取りを傍から見て、優気の外堀から精神的に追い詰めていき、自発的にこちらに力を貸すよう仕向けていると考えられた。
「だとすると一杯食わされたな」そう呟いた後、心配そうに璃久瑛と健勇が優気の方へ集まっていた。
「優気!ごめん!!凱矢を止められなかった!!」
「俺も優気とヘラクレスさんに庇ってもらわなきゃ死んでたし、何より足引っ張りまくっちゃって、来るべきじゃなかった…本当に申し訳ないな…」
三人は揃って重い面持ちを浮かべ、優気は沈黙を続けた。
「けど大丈夫」先程とは全く異なる明るい表情となった優気は顔を上げて二人を諭した。
「あいつは俺に本気で向き合ってた。あいつの本心が伝わってきたんだ」
「確かに、そうだけど…」
「結果が連れてかれちまったんだから大丈夫じゃないだろ!!」
「まぁ落ち着けって」焦る二人に冷静を求める。斜め下を向いて息を吐き言葉を整理する。
「だからだよ。本心で向き合ってくれてる分にはまだ友達だ。親友の定義ってのは、どれだけ距離に隔たりがあっても、互いが本心で向き合って、なんでも言い合える仲があることだと俺は思う」
優気の強い説得に二人は圧倒され、息を呑んだ。
「それに、『みんな変わってないのかも』って言ってたからあん時から俺らの関係は変わってないと思う!」
「確かに、無反応じゃなかったし、ぶつかり合うだけの気持ちあるってことかもな…」
「そうなると、優気の言う通りかも!!」
先程までと対になるほどの明るい雰囲気が形成されるのをヘラクレスは感じていた。こいつが居れば何とかなる。優気にそんな期待を乗せ安心しているとゼウスに声をかけられる。
「改めて助かった。お前が居なきゃ終わってたところだったわい」
「いやいやなんのなんの、恩を返しただけよ。礼なら優気に言うんだな」
戦闘中に外れたヘアバンドを再び装着しながら視線を同級生の仲間内で盛り上がる優気の方へ向けると「彼のこれからが楽しみだな」と一言、望みを込めた言葉を託した。
「では、我は大阪観光に戻る!じゃあな」
「ヘラクレスさん!ありがとうございました」
あいよー、と適当に相槌をすると大きくどこかへ飛び上がって行った。
「では、儂らは一度アジトに戻って報告だな」
行くぞ、とゼウスの統率により蔵前高校を引き上げる。少し後悔が尾を引き心残りが僅かに生じたためか、優気はグラウンドを振り返って歩いていた。
時刻は六時前後。夕暮れに吹く優しい風がその気持ちを安らかに断たせると、再び前を向いて歩き始めさせてくれた。
これにて蔵前高校編終了
次回からは新章です!
ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m




