第40話 優気の秘策
ギルガメッシュに向けた大声がグラウンドに響き渡り、近くに居た璃久瑛は驚くほかなかった。ヘアバンドをしてはいるとは言えど、金色の髪束と世俗とかけ離れた姿に既視感があったからだ。
「あなたは確か…」思わず璃久瑛は声を漏らす。
「ヘラクレスぅ…」
「久しぶりだな、ギル。100年前の大戦争以来だな」
ギルガメッシュの怒りの表情と同じようにヘラクレスも厳格な表情で見つめ返す。
「テメェ何で邪魔すんだよぉお!!あぁっ!?」
「この者らは主に日本の文化を教えてくれたからな。今日も凶本新喜劇を観に大阪まで行ったものの、お前らが優気の居るとこでむちゃくちゃ神力発してて、嫌々来てみたら何しやんだよ!?何で普通の人間殺すんだ!ぁぁあ!?」
「そりゃぁ~俺らの目的だからだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!」
ギルガメッシュから再び戦いの火蓋が切られると、ヘラクレスも左手に大剣に出現させそれに呼応する。目には目を歯には歯を、怒りには怒りをぶつけ見えない火花を散らし始めた。
傍から会話の内容を聞いていた優気は途轍もない怒号に困惑していたが、先程の会話から一つの疑問が生じていた。
「どうやらヘラクレスには結界の神力制御無しに神力を感じ取れる与護があるらしいな」
優気の抱いていた疑問に答えたため、若干の驚きを見せるも、そんなことに目もくれず、アレスは甲冑の土煙を叩き落とす。不確定な言い回しから、交戦したことが無く情報も落ちていないと推測できるが、これも与護の力なのかと戦闘思考を張り巡らせる。
ギルガメッシュの対応をヘラクレスがするのであればゼウスはアレスに対して優気と共に二対一と数的有利な状況を作り出すことができる。
しかし、この機会を利用し、ゼウスは結界を貼った別の使者を探しに行くことを決めた。神力を持たないという性質を活かすべく、ゼウスは暗がりの物陰からカサカサと動き回る害虫のようにこの場を離脱した。見事誰にも気付かれずグラウンドから抜け出すことに成功し、別棟から第三者を探し出す。
ゼウスがそうこう考えている時にアレスと優気は会話を進めていた。「朱雀の継承者!」突発的にそう呼ばれ、不意に大きな返事をしてしまう。
「君と戦うのは少し楽しみでもあったんだ」
「そうですか…さっきの攻撃見て、こちとら何も楽しみじゃないですけど」
「まだ実践が無いからフェアじゃないな。そうだ!私の能力を説明しよう!!」
全く相手の話を聞いていないことに後ろにいた璃久瑛は絶句する。
「ズバリ!私の能力は『それぞれに能力のある神器』を扱うものだ!さぁ私に勝てるかな!!?」
「アニメでナレーションが言いそうなこと言ってんな」
「というか神の使者は総じて基本戦闘狂なのか?」
二人は相手のことを貶すも先程と同様に当の本人は全く話を聞いていない様子で、優気の攻撃を受けに来る体制を取り始めていた。
先程死を間近に体験した璃久瑛は優気におどおどと勝利の望みを聞くも「恐らく100.1%勝てない」とジョーク交じりかつ、本気に答えられてしまう。「逃げる準備だけはしておいてくれ」と頼まれ緩んだ靴紐を結び直す。
璃久瑛が靴紐を結び終えたことを確認すると、全体的に神力の出力を上げてアレスへ向かっていき、何発も連撃を食らわせる。優気は後半への温存も考慮して、出来る限りの速度と攻撃を与えようと必死だが、対するアレスは余裕ある表情で防御に徹する。
「どうした!それで終わりか?」
そんな煽りを受けて、神力と怒りを込めたエネルギー弾がヒットするもビクともせず、再び近接攻撃を浴びせようとするも簡単に躱されてしまう。優気の中では今持てるパフォーマンスはほとんど披露したが、相手にはやはりお遊び程度、少年男児が行う戦いごっこの延長のような扱いをされ、かなりのショックを受けていた。しかし、優気には最終兵器ともなるとっておきの秘策があり、全てを懸けるためのお膳立ては既に済んでいた。
「どうやら俺はアンタに勝てないな」神力を弱めてアレスに近づきながら会話を進める。
「もう降参か?まだ戦えるならそれは終わりじゃない!最後まで戦ってこそ一流の戦士なんだぞ!」
「そうだぞ優気!お前にしちゃぁ、諦めるには早くないか!?」
「安心してくれりっくん。俺はまだ諦めちゃいねぇよ」
それにしても戦う意思の無さと敵にゆっくりと近づく行動から意思を汲み取ることはとても出来ない。何か策があるのだろうかと少しだけ期待して璃久瑛は希望を委ねた。
「諦めちゃいないとは言っているが、神力はみるみる落ちていくぞ。言っていることとやっていることが違っているが、何を狙っているんだ?まだ見せてない能力の解放か?それとも降参を含んだ裏切りか?」
どんなことでもかかってこいと再び発破をかけられるが、本当にこいつは敵なのかと璃久瑛は疑問が浮かび始めた。
再び神力を込めて四神化すると雄たけびを上げ更に力を込める。すると、四神化で覆われた装備がみるみると剝がれ、右足のみに装備が残る。もとい、右足の先に神力が集中し、一瞬でそれをアレスの金的へクリーンヒットさせた。
アレスとしては神力を込めていたことは察知出来ていたが、先程までとは明らかに違うスピードに対応できず、油断もあった。
それもその筈。アレスの望みは全力の戦闘を心待ちにしていたため、迂闊に手を出してこないことを見越したうえで優気はこのような選択を取ったのだ。更には狙いが予想だにしない金的だったことか反応を鈍らせた。
苦肉の策で外道でもあるこの攻撃方法に優気は若干の負い目を感じながらも手応えを感じていたが、「金的入ったぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」と当人以上に璃久瑛は喜びを嚙みしめていた。
…っ
その場に立ち尽くすアレスは声にならない声を漏らしている。攻撃がかなり効いたのであろうか、何だか悪いことをした気分に陥りこの場脱するため足早に距離を取る。
「の私が…」
何か呟いているようだがはっきりと聞き取れない。アレスの言葉は相手に聞かせるようなものではなく、独り言のようなものとして口にしていると伝わる。
「この私が…れると思って…のか」
取り敢えず危機感だけは伝わり二人の顔が曇り始める。
「この私がぁ!!たかが金的如きでぇ!!倒れると思っていたのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!????????」
ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m




