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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
蔵前高校編
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第39話 再会

 クシナダを中心とした集会から翌日。野球部のミーティングが終わった放課後に優気(ゆうき)璃久瑛(りくあ)健勇(けんゆう)、ゼウスの四名は事のあった蔵前くらまえ高校へ赴いていた。都内にはありがちな密接マンションと老朽化し寂れたシャッターを雑談ついでに横切っていく。


「にしても、ゼウスさんって嫁のヘラさんと仲いいですよね」

「確かに楽しそうだな!!」

「そうそう!いいなぁ~コミュニケーション多くて相手のこと思い合う夫婦…僕も憧れちゃいますよ!」


優気が強く賛同するも、ゼウスは手を立たせて「いやいや」と横に振った。


「それはね。ただ気が強くて、儂が尻に敷かれてるだけなんじゃよ」

「確かにそういう感じはしてたけど…まぁ、仲がいいことは良いことですよ」

「確かに、女性にはおしとやかであってほしいってのはありますけどね」

「おっ!優気君はそういう女子(おなご)がタイプなのかな!?」


高齢者が好きな女性のタイプを聞くシチュエーションは親戚の祖父に聞かれる位のものだが、時代が進むにつれて高齢者が次々に亡くなる世の中ではそんな事象は特別中の特別である。また、もし親戚の祖父が居たとしてもレアケースであることは間違いなく、このような場面に璃久瑛は若干の違和感、もとい抵抗があったが、優気は全く嫌な顔せず、寧ろ乗り気で話を進めた。


「やっぱりさっき言ったのと同じで、おしとやかで周りへの気遣いが出来て、僕に尽くしてくれる家庭的な女性ですかね~」


「随分具体的じゃなぁ!もしかしてそういう女子が近くいたりしてぇ~??」

そういうとこだぞ、璃久瑛は心の中でツッコミを入れる。


「いやぁ、そんな人見つかるわけないですよ!!」

「本当かぁ~??」したたり顔でねっとりとした声を施設の並ぶ道路に響かせる。


 少し道を行ったところで大きな信号を渡る。「ここらかな」とゼウスが一言述べると高々とジャンプし、建物の屋上に着地した。


「打ち合わせ通り、ここらで儂は見守っているからな。何かあったら駆け付ける」

「わかりました!」

「了解です!」

「はいっ!!よろしくお願いしまぁぁあすぅ!!!!」

「おい、健勇声デカすぎ」

「うっせえうっせえ」


ゼウスと別れ道を進み、蔵前高校の正門付近にまでたどり着く。三人は目標そっちのけで凱矢(ときや)との話題で盛り上がっていた。


「凱矢にちょっとでも会えたらいいよな」

「ま、本人には迷惑でしかないけど」

「けど会いたいよな!!」

「本当だよ。1日くらい会っても別に俺ら大丈夫だろ」


三人とも凱矢が何かしらの理由があって高校に進学したことは知っており、敢えて距離を取っていた。中学三年途中から不登校になっていたことが答えであり、実際に何度も家を訪ねるも追い出されるばかりで、家の雰囲気や怪しい者の出入りなどから何となく反社会的勢力との関わりがある家庭だと理解したのだ。当初は受け止めるのに時間がかかったが、本人の意図を汲み、今となってはその事実に慣れていた。


「凱矢、元気だといいな!!」

「そうだなぁ。どうする?神力(じんりょく)ある目標が凱矢だったら?」

「流石に無いとは思うけど…りっくん縁起でもない言うんじゃないよ」


 コンビニの前を左折し、正門を前にする。門柱には「東京都立蔵前高校」と名称のプレートが貼られており、夕陽の差し込んだ見たことがないグラウンドはこちらをノスタルジックな気持ちにさせる。


「ほぇー凄いな。隣が隅田川だ」

「なんだか他校って緊張するよな」

「わかるわそれ。俺いま心臓バクバクだわ。健勇は遠征でよく行ってるだろうけど」

「おう!今週末も行くぞ!!ってあれ凱矢じゃないか??」


健勇の指の指した方を見ると何やら遠くで一人ブツブツと何かを話している高校生が見えた。風貌は中学の頃と変わらなかったため、健勇はすぐに気づいたが二人は視力があまり良くないためなかなか気づくことができなかった。


「だから違うって。そういうことじゃないんですよね」


こちらに薄っすらと聞こえてくる声が三人を確信へ誘う。


「おーい!!凱矢!!久しぶりだな!!!!」


健勇の呼びかけに気づきこちらに向かってくると、近づいたおかげでようやく二人も認識することができた。しかし、一人で話している様子は変わらず何度もブツクサと会話が途切れることはなかった。


「まさか統合失調症か…?」


「いや違うわ!って優気…それにりっくんと健勇まで」


約四年ぶりの再会に戸惑いが走り、お互い膠着状態となってしまう。しかし、健勇にとってそんなことは関係なく、近づくとポンポンと肩を叩き「久しぶりだな!!元気してたか!!ん!!??」とテンション高い声をかける。


 「これが朱雀の力を持ったやつかぁ??随分ほっせぇナリしてんなぁオイ」


「まさか、直々に来てくれるとはな」


するりと、何事もなかったかのように二人の男が会話をしながら透明の空間から現れた。元々そこに居たかのような登場であり、あまりの唐突さに健勇と璃久瑛は驚きを隠せずにいた。凱矢が会話していたのはこの二人だとするとあまり考えたくはない答えに辿り着いてしまう。


「凱矢、お前まさか」


優気が低めの声を発すると、過去に決めたことを思い出したと同時にその少ない言葉を理解した。その場から走り去り、校内へ逃げるように戻っていく。


「健勇!追ってくれ!」

「お、おう、わかった!」


凱矢の一番近くに居た健勇に指示を促し、去る凱矢の姿を雄たけびを上げながら追っていく。口の悪い男、ギルガメッシュはそれを阻止しようと振り向くが健勇の足の速さは異常であり、人間の中でも常軌を逸していたため、思わず「あいつ足早ぇ!」と驚いていた。


「まぁ校内は凱矢のテリトリーだ。彼の運動神経含めどうとでもなるだろう」

「確かにアレスの言う通りだなぁ。さぁて、どっちを殺すとするか」


ギルガメッシュは発言後に右手が光始め、やがて右腕全体が特殊な装備を纏う。大きさはギルガメッシュの身体よりも二倍より大きく、地面に手の甲が着いてしまっていることからロボットの腕を無理矢理装着しているような風貌をしていた。


それと同時に結界を張ったような感覚が神力を通じて感じた。璃久瑛の持っている『神力遮断結界装置』を展開していないため、敵の使者の動きだと予測できる。


「おいおい、ガキ共殺すのに大当たり武装かよ。ちと勿体ねぇ気がするがぁ、まぁいいかぁ」


「いや、朱雀の継承者は殺してはいけないぞ。殺したいなら横にいる者にするんだな」


肩をぐるぐると回し首を鳴らすアレスの言葉と先のギルガメッシュの能力発動が相俟って璃久瑛は怖気づく。優気も内心はビクつくが璃久瑛を守ることが念頭にあり、四神ししん化で朱雀の力を身に纏った。


「おぉ!これが朱雀の力か!!やっと本物を見れたぞ」

「ったく…アレスが間違えてなかったらもう終わってたんだよ!」

「なんだと!ギルも『この高校が匂うな』って言ってただろうが!!」


 言い争いの最中、突如としてギルガメッシュがグラウンドまで蹴り飛ばされた。物凄い勢いと火力であり、グラウンド奥のテニス部が使っていた壁打ち用の壁に激突する。


唐突な衝撃にアレスはそちらに目を向けている間、裏拳で顔を殴られ、凱矢が逃げ込んだ下駄箱近くまで吹き飛ぶ。風に揺れる銀髪を靡かせ絶望の場面で現れたのは輝かしい栄光を持つ神の使者、ゼウスだった。


というのも、遠くで学校中に注意を張り巡らせていたゼウスにとって、結界が張られることこそ助けに駆け付ける合図であったが、この結界が相手の物と理解し、予め攻撃体制を整えていた。また、神力が無いゼウスの不意打ちが決まることはほぼ必然的だった。


「策通りだな…」

「はい。上手くいきましたね」

「ゼウスさぁん!ありがとうごぜぇやすぅ!!」

「しっかし、こうも早々と使者にご対面とはの…もう1つの決め事通りに、もうダメそうなら逃げることだけを考えるんだぞ」


ゼウスの言う通り問題はここからだった。不意打ちは決まったとて大きなダメージとはならず、本気で相手をしてくる二名をどう対処するかがカギとなる。正直優気の実力はこの二名に遠く及ばないと察しはついていたため、もしピンチとなれば撤退することを取り決めていた。


「痛ってぇなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!?」

再度忠告をしていると壁に全身を強打したギルガメッシュは雄たけびを挙げて怒りを露にする。


「毎度毎度不意打ちばっかりしてきてよぉ、卑怯でつまんねぇと思わねぇのかよクソジジィ!!アぁンっ!?」


「嘗て甚大な雷で戦場を制圧していた男が聞いて呆れるな!」


二名の使者は立ち上がり怒りを向けて攻撃を仕掛ける。ギルガメッシュは離れた場所から猛スピードで迫ると、強化された右腕をゼウスの身体全身を狙って振りかざし、アレスは神器となる槍を展開し突き刺す。


アレスが向けた槍はギルガメッシュの攻撃よりも圧倒的に速く、過去の戦闘本能でなんとか躱すことができた。追撃となる迫りくるギルガメッシュの拳に対応しなければならないが、それをも見越してグラウンド中央へジャンプし躱すことに成功した。


「ギルガメッシュの能力である『無作為の神器(ランダムアームズ)』。その中の一種である改造右腕。当たったら耐久力無視の攻撃を与える『貫通』与護よご持ち…先の攻撃を直撃することは死を意味するな」

「んでんなこと知ってんだ、あぁ!?」


相手がこちらに近づく時間に事前に入手した情報を相手に開示し動揺を誘う。


「そしてアレス。初撃が通常の攻撃速度と比べて格段に上がる『始撃速』の与護を持つ者。間一髪じゃったわい」

「どうやらこちらの情報はバレてるらしいな」

「こちらには()()()()()()が確立されているからな」


相手の戦闘情報を語っているとギルガメッシュが不意を突いて腕を振るうも再び大きく移動し躱す。しかし、相手も先程と同じ行動を取るわけではなく、躱された攻撃を勢いのまま地に大きな腕をバネにすると、跳び箱のようにゼウスの方向へ向かっていく。


アレスもそれに合わせるようにゼウスの元へ攻撃を差し向けるも、シルエットが目の前に現れる。ゼウスのように不意打ちを食らわせようと神力を断つために一度四神化を解除した優気の姿がそこにはあった。再度四神化し、上昇したスピードを利用すると、見事に体当たりを食らわせることができた。数的不利な状況下のゼウスから距離を離すことに成功したのだ。


「タックルとは、なかなか思いがけないことをしてくれる!朱雀の継承者よ!」


アレスは別棟の校舎に打ち付けられ、優気は体当たり後に素早く距離を取りアレスのカウンターに備える。


ゼウスは大きくジャンプし、校舎にグラウンド球技のボールが校舎へ飛ばないように設置された高台ネットの上へ移動する。過去の傾向から、二者に結界を張るような行動は推測できず、もう一人の使者が関わっていることは間違いない。グラウンド、砂場、部室棟、プールなど目の前に広がる学校内の光景に目を泳がせる。


ギルガメッシュは大きく反動を付け、こちらに向かうことを把握すると、離れた高台ネットの頭に飛び乗った。追いかける格好となるギルガメッシュは能力で大きくなった右手を広げ、押しつぶそうと試みるも、鮮やかな跳躍により離れたサッカーゴールのポストに着地した。そんなフィールドを存分に生かす戦い方でゼウスは逃げ続けた。


 しかし、碌に戦闘もせずただ逃げ惑う戦法を取るゼウスに嫌気が差しながらも、ギルガメッシュは周りの障害物に目を配る。すると、グラウンド内で戦闘現場のデータを送る璃久瑛が目に入り、いい策を思いついた。


「しまった!そちらを狙うか!?」


「りっくん、逃げろぉぉぉぉおっ!!」と逃走を促すも璃久瑛は蹲り、シューズの靴紐の中央部を引っ張りグラウンドの空いたスペースへ全力で走り始めた。


 それもその筈、今回のために予め履いていた試作品、『ガチ逃げシューズ』の力を発揮させたのだ。命名者はジャンジャンのため、壊滅的なネーミングとなっているが、靴紐の中央を引いた後に走り出すと使者たちと同じ位のスピードで走ることができる代物であり、早速効力を発揮してギルガメッシュのスピード程度の速さで攻撃を躱すことに成功した。


「んだよこいつはぁぁぁぁあああああ!?」


ギルガメッシュも驚きの様子で、ただの人間に攻撃を躱されたことに苛立ちを感じずにはいられなかった。再び追撃し、璃久瑛が止まったところを狙い右拳を向ける。璃久瑛はもう一度躱そうとするも途中で『ガチ逃げシューズ』自体の効力が切れてしまった。一度利用すると数分のインターバルが必要なため、時間を置かねばならないのだ。璃久瑛はシューズの失効に戸惑い、その場に立ち止まってしまう。


「あっ、えっ、マジかこれ。やばいな」


迫りくる拳から逃れるために自身の脚力で精一杯逃げるも、攻撃から逃れることは難しく、死を覚悟する。優気も璃久瑛のヘルプに入ろうとするも、そもそもの位置が悪く、全力で駆けつけるもどうしても間に合わない。


「まずは1人ぃ!!脱落だぁぁぁぁぁぁあああああ!!!?」


 すると、多大な神力を持った使者がグラウンドの上空から感じられる。自身と似て非なる神力であり、不思議な感覚に陥ったギルガメッシュは璃久瑛を追い詰めた右腕を急いで引く。


ギルガメッシュの予想通り。先程あった右腕の場所に一名の使者が蹴りを入れたかのように片足で着地し、外したことを知るや否や両足で地を踏んだ。


「我のダチに…我のダチに…何しやんだボケェぇ!!!!??」

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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