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TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
来訪者編
23/133

第23話 護衛の結果

 今度はジャンジャンを狙って発砲されるが、スサノオがすぐさまカバーに入る。巻き起こる弾丸の嵐に竜巻のような刀捌きで対応する姿は、ありとあらゆる神の使者において、戦闘に秀でる者としての証明に十分過ぎるほどのものだった。


「スサ、私は使術しじゅつで身を守るからもしものことは気にするな。なんなら、アシストはいるか?」


ジャンジャンの助力提案に対して、光速を何十倍をも上回る銃弾が降り注ぐ中、スサノオは少し頭をひねる。


「んーと…ならオレの動きを加速する使術をかけてくれ」


「速度強化だな。了解した」激しい状況下で会話を終え、ジャンジャンは手のひらをスサノオ向けて使術を唱え始める。


「『与えられし力を超え、求める者よ。これを独善と呼ぶに値する愚者の行いであろうが、(しゅ)は希望と信ずる者を重ね、受諾し、今授け、そして享受せよ。悪しき事柄に利せず、自身と守る者に利せよ。さすれば独善からは解放され、真の善となるだろう。加担、そして付与。演舞が終る時までには利するものに仕えようではないか』」


スサノオの全身を赤いオーラが覆い、だんだんと体内へ取り込まれていく。


「第1の使術、『加援争儀かえんそうぎ』!!」


「うっしゃ!サンキュー、ジャンジャン」


そう感謝を残し、先程よりも速いスピードで弾丸の雨を移動して宙に舞うルシフェルの元へ飛んだ。ルシフェルは続けて弾丸を撃ち続けるため、体を上手く捻りながら躱し、再び腕を狙って右足で回転蹴りを食らわせる。


ルシフェルは勢いのまま蹴りが来たことに対応するが、もう対処できないほどのスピードであったため、腹をくくり、一か八かで正中線上を目掛けて何発か発砲する。


確かに至近距離なら当たる可能性が高いが、スサノオの反射神経を加味すれば躱される可能性が上回る。だが、それも承知の上、掠めてくれれば上出来といったところの、敗北の少し上を目指した一手である。


ルシフェルの発砲は虚しく、狙った正中線上には当たらなかったが、肩や腕など何発かはスサノオの身体を掠めた。


しかし、スサノオの蹴りが左腕に命中し、腕が曲がらないはずの方向に折れながら地に落ちた。


スサノオは元居た場所に回転しながら着地し、ルシフェルが落下したことでその周囲から砂煙が舞う。その中から最初とほとんど変わらない落ち着いた見た目の男が立ち上がって姿を現した。腕を片手で覆い、使術を掛けて治癒を促している。


「やはりこれでは一方的にやられるだけか」


「いやいや、オレに5割くらいの力出させたなんてすげぇことだぜ。なんなら怪我も負ったし、大したもんだ。スピードだってジャンジャンのアシストあったし。まぁあるかないか微妙なモンだったけど」


「酷すぎるだろおい!もうお前には2度と使術を使わん」


激しい攻防が終わっても交戦が始まる前とあまり変わらないその態度にルシフェルの自信は失墜した。


実力差においても、二度のカウンターの異次元さが大きく聳え立つ山のような彼の矜持に亀裂を入れ始め、全てが瓦解したのだ。


その反動か、少し下を俯きながら不吉な失笑を何度も繰り返し始め、それを見たスサノオは心配の気持ちも無くはなかったが、先程の真面目な態度と打って変わった姿に当惑していた。


 「ならば、私も全身全霊をかけて戦闘に赴こうではないか」


「いや、正直急なキャラ変更に付いていけないけど…ま、来いや!!」


スサノオの言葉を契機にルシフェルの周囲を淀んだ泥のような黒色の神力が取り囲み、潜在的な神力の増加すると、それら一体が吸収されていく。


 現れた姿は先程の才色兼備で慎ましやかなものと全てが裏返ったようなものだった。ガッチリとした肉体を黒いスパイスーツなようなものが覆い、その上に中世の甲冑のようなものを装着していた。仕草も落ち着きがなく、今にも戦いたくて仕方がない戦士のように見える。顔にもバイクのフルフェイスマスクに似たようなものを装着しており、防御も攻撃も万端という外見に変化している。先程の状態を天使バージョンだとしたら、現在のこの姿は悪魔バージョンといったところだろう。


「これはオレもナメてっとぶっ殺されんな…」所持していた刀を収め、代わりに刀を持つジェスチャーをして神力を込める。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっ!!」


雄叫びと共に強大な神力が込められると、そこには神秘なる美しき刀が君臨した。


「久しぶりだな、愛刀、天叢雲あめのむらくも」うっし、さぁやろうぜ、と声掛け、スサノオの戦闘準備が整ったことを確認できたのか、ルシフェルは語彙を失った声を張り上げ、武器も持たずに装備に覆われた拳のみを構えた。


その後間もなく黒き羽根を広げながらスサノオに向かって行き、それに対抗するようなスピードでルシフェルに向かう二人の姿が結界の中でぶつかり合った。


 勝負は刹那の速さで決着した。食い違い、後ろ向きの二人の姿の状態が暫く続いた後、ルシフェルの黒色の甲冑全体に大きな斬跡が付き、それらはサラサラと消えていった。


それと同時にルシフェルの姿も最初のものに戻っていき、フゥーと大きく息を吐く。スサノオの現在させた神器、天叢雲もお役御免かの如くサラサラと形を消し、「勝負あったな」と一声掛けたところでルシフェルの方向を振り返った。


「完敗だな。今日のところはここらで去らして頂こう」


どこか満足気な顔を浮かべたルシフェルはスサノオの方向を振り返ると、あからさまに何か言いたげな表情をしており、「今日のところはじゃなくて、もう来んな!!」と追い払う。それに付随して、先の一対一の戦いを離れた場所から見ていたジャンジャンが「そうだそうだ」とヤジを飛ばした。


勿論、結界範囲内ギリギリのところまで身を引いていたジャンジャンからは声のボリュームとのギャップが酷く、何の説得力の増しにもならなかったため、その姿にルシフェルは小さく笑ってしまう。


「最後にカラマノランジャン。あの衝突で()()()()()()すまなかったな。次は最も強固なものを張ることをおすすめする。では」


そう告げると美しい羽根を広げ、大空へ去っていった。ジャンジャン、スサノオ共に、先のぶつかり合いで結界を壊したことには気づいておらず、途轍もない神力が外部に漏れてしまった。


というのも、テスト中の優気は百歩譲って良いとして、その他の神の使者にここで争いをしたという悪いアピールとなってしまい、素性を隠す者らにとって、一番避けたかった事故でもあった。


「これは…ある意味、オレらの負けってことか…?」

「まぁ…そうなるな…」

「これもしかして()()()にバレたか??」

「バレてるだろうな…」


ここにはいない『アダム』という者の名前を出し、反省の色が濃くなっていく。その中で三時間目のテストを終えるチャイムが鳴り響く。それはこの二人の終わりを示すようなものであった。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

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