表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRUE HUMAN   作者: 森野熊参
来訪者編
21/133

第21話 テスト中の侵入者

 雨上がりの帰り道にて、優気は今日のスサノオの対応に感謝していた。もしスサノオが運営する会社が存在するならば、楽しむときには全力で楽しめて、仕事の時には声援をくれる。どんなにミスをしても激怒されることはなく、逆に挽回の念込めて背中を押すスタンスで、優気は喜んで入社しているところだったが、スサノオに経営能力など見出せず、すぐ倒産するだろうと明るい妄想が崩れ落ちた。


 さぁ明日に向けて勉強だ。


傘を腕にかけ、背負っているリュックサックからテスト範囲の英単語を暗記しようとテキスト開いて学習しながらとぼとぼと帰路を辿った。


___________________________________


 定刻のチャイムが鳴り響き、テストをめくる音が教室に何度も耳に残る。様々な物がデジタル化する中で、この学校は紙媒体のテストで統一されていた。大学入試において、試験用のパソコンを予め配布し、解答をするようなテスト形式の大学も増えている中、共通テストでは未だに紙媒体でのタイプのため、それに合わせているのだ。


現在三時間目、教科は政治経済。試験監督は桂被郎かつらかぶろうという教師で、名前から察することができるように、カツラを被っていることが見え見えの男が教壇の前に座っている。


本人は「カツラは被っていない」と言い張るが、もう名前といい、見た目といいとのことで、隠すことはできていない。


学歴も優秀、金銭に困ったことはなく、若い頃は女性が積極的に寄ってきていたが、髪の毛が全てを台無しにした。そして、今までネタに出来ていた名前もネタにすることはできない年齢に差し掛かってしまった。そんな悲惨な教師はカンニング行為や災害などの緊急時のことを頭に入れながら試験監督の仕事を全うしていた。

 

 優気の中では政治経済は得意な部類で、難なく鉛筆を走らせる。怜真れいまも同様に朝飯前といったところだろうか、ほとんど休むことのなく手を動かす。璃久瑛りくあ健勇けんゆうは何度も頭を悩ませる時があり、直感を交えながら空欄を埋めていく。しかし、救いようのないのは炎示えんじだった。全くもって解ける問題がないのか、選択問題のみ解答し、それ以外はほとんど空欄の状態にもかかわらず、テスト用紙に落書きをすることに夢中になっている。


__________誰かが校内に近づいている。


優気は最後の大問に差し掛かり、問題を読んでいた時だった。スサノオでもジャンジャンでもなく、色々なものが混ざり合った異様な神力がこちらに向かうのを感じ取った。優気は大事なテストの途中だが意識はそっちのけで、おもわず何度か窓側が気になって向いてしまう。


神崎かみさき君。怪しい動きはするんじゃないよ」


不意に声をかけられたことから、驚いた声があがってしまう。優気の動きに気になっていた桂が背後から近づいて声をかけたのだ。


「まさか、カンニングかね」

「いや違います。ちょっと外が気になって」

「カンニングの言い訳にしか聞こえんな。君の気持ちはわからんでもないよ。3年生の初回テスト。受験を控える生徒たちはかなり緊迫感を感じるだろうね。私も昔はカンニング行為に手を伸ばそうとしたよ。ただ、自身の実力でのし上がってきたのだ。そして掴んだ栄光がたくさんある。その中でも_」


アンタの話なんぞどうでもいいわ。


グダグダと自分語りをし始める桂に向かって、優気は心の中でそうつぶやく。気になっているのはテストの解答ではなく、神力の正体であり、それが校庭に移動していくのを感じる。


「ともかく、今回は見逃してやろう。君の行動に確信が持てないからな。何より、君は普段から成績が良いからな。残りの時間は真剣に取り組むこと。いいな?」


「はい、わかりました」返答とともに体を少し浮かせるように窓の奥を覗き込もうと試みる。どうしても座っていると校庭の全貌を確認することができず、神力が集中するところも視認できない。


「なんだその動きは。反省の色が見られんな」


「ちょっと外に何か違和感といいますか、気になっているんです」


何度訴えても理解されないため、優気は少し苛立った言い方になってしまう。


「外ぉ??振り向いた瞬間に誰かの答えを覗き込む手口だろう?私には通じんよ」


「だから、そんな魂胆ありませんよ。外がやばいんです」


「何を言ってるんだ全く。外に何もないぞ」


そう桂言い放ちながら少し後退し、視線を校庭に向けた時、特殊な髪色の男が銃のような物をこちらに向けていることを認識した。それを理解した桂はありえない現実に、教壇の前に移動してもう一度確認する。


 すると、よくわからない多毛な髪型をした青年が飛んでいるのか、高くジャンプしたのか、宙に浮いているような風景が広がり、声にならない声で驚愕する。そんな五十七歳、桂の様子に釣られてクラスメイトがほとんど校庭を覗くように振り向いたが、その光景は無くなっていた。


「どうしたんですか、先生」


優気の幼馴染の咲音さきねがそう声をかけるが、桂の啞然とした様子は続いていた。


「いや、なんでもない。なんでもないんだ。皆テストに集中しなさい」


たどたどしくそう言い、教壇の前にボトリと腰を下ろした。「なんなんだいったい」と既に無いはずの髪の毛を擦るように頭皮をぐりぐりと撫で始め、もう一度同じフレーズを漏らした。普通の声量だったが、テスト中の静まるクラスの中では大きく聞こえてしまっている。


優気が気になっていた神力の行方がスサノオの神力を感じた瞬間に二つとも消えた。理解の追い付かない優気は再びテストに戻るが、その現象があってか、以後あまり鉛筆の動きは弾まなかなった。


今の何だったんだ。マジで。

ポイントがあると多くの人に読んでもらえるとのことらしいので、面白いと思った方や少しでも続きが気になる方は是非評価をよろしくお願いいたします!m(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ