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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第83話

情報屋、 アルフレッド。

どうやら彼は自分の足で集めた情報を、 それを必要とする人物に情報を売るという仕事をしているらしい。 何でもその情報は、 自らが出向き、 そして集めた情報のみを取り扱う事でその情報が確かなものだという信頼を得ていると。 そして取り扱う情報は各種存在し、 国家の機密事項からお隣さんの浮気事情まで、 大きなものから小さなものまであると言う。

しかし、 商売のやり方が他の情報屋とは違い、 自らが持つ情報を欲している相手は自分で選び抜き、 決して依頼を受けたり、 自分で選んだ相手以外には情報を売る事をしない…らしい。 それはアルフレッド本人からの口から出た事であり、 それ自体に信用を置くことはまだ出来ないが、 それは直ぐに証明されてしまった。

酒場の3人がアルフレッドが俺に名乗った瞬間に席を立ち近付いてきた。

「お前さん、 あの情報屋なのかい?」

「俺達にも情報を売ってくれや。 なに、 金は相場の3倍…いや、 5倍は出すぜ?」

その3人は、 俺がこの店を見渡した時に見た軽装の集団だった。 彼等はアルフレッドど囲むようにして集まると、 いかにも「情報を売らないとタダでは済まさいぞ」といった顔で睨み付けていた。

「やぁ、 君達。 僕のことを知っているなら、 僕が選んだ相手にしか情報は売らない事も知っているよね? 申し訳ないけど、 僕は彼を選んだんだ。 お引き取り寝返るかな?」

しかしアルフレッドは、 男たちに囲まれた状態であっても冷静に返答していた。

「そうかいそうかい…なら──────」

刹那、 1人の男は俺目掛けて拳を振るい、 その衝撃で椅子も机も吹っ飛んでしまった。

その衝撃音に店内はパニックになり、 気持ちよくご飯を食べていた人達は被害が及ぶ前にと店内から逃げて行ってしまった。

「がっはっはっは! おめぇのお客とやらは始末しといたから、 とっとと情報を売りやがれ…。 情報屋のあんちゃんも()()はなりたくはないだろう?」

「──おいおい、 折角作ってくれた料理が台無しになる所だっただろ」

俺は拳を振った男の背中をポンポンと叩きながら、 近くの机に『ネオスネイクのクルルギ炒め』をそっと置く。 男達は俺が無事だった事に驚きを隠せず、 ただその様子を口を開けて呆然と見つめているだけだった。

「ニルヴー、 お前も無事か?」

机と一緒に吹っ飛んでしまったニルヴの様子を伺うと、 吹っ飛んでしまったにも関わらず何食わぬ顔でお子様ランチを頬張っていた。

躱さずにそのまま攻撃を受け、 できる限りの問題行為は起こさずに闘技大会へ出場しようと考えていたが、 正直この男の持つ情報がどれくらいなものか知りたいという欲求の方が勝っていた。 折角作ってくれた料理も無駄にはしたくないし。

「『幻影捕縛陣』!」

放心状態の男3人を俺はすぐさま影を使って捕縛した。 念の為に影で簀巻き状態にはしているが、 こいつらは後でこの国の兵士にでも引き渡すとして…さて、 どうしたものか。

「いやぁ、 流石の手際だね。 やっぱり僕の()()狂いはなかったみたいだ」

パチパチと手を鳴らしながら近付いてくるアルフレッドは、 人差し指と親指で輪を作り、 その輪の穴から俺を見つめる。

アルフレッドの台詞からは不可解な点が浮かび上がっていた。

それは先程言った『流石』と『やはり』という言葉だ。 それらは俺の実力を知る人物からしか出ない筈だ。 俺が『観察者』という『律者』だということを知っている、 もしくは俺の戦闘を見たことがあるか…だ。

「アルフレッド…さん、 貴方は俺の事を()()()()知っているんですか?」

『律者』という名前は伏せて俺は聞いた。 もしその事を知らない場合、 自分から秘密を暴露するようなものだからだ。 しかしアルフレッドは、 そんな俺のぼやかした質問に対して「そうだねぇ〜…」と少し考えた結果、 返答を口にした。

「秘密…というのは僕には分からない。 けれど、 僕は()()事が出来るんだ。 これのお陰でね」

そう言って自分の左目を指さす。 だが、 見る限り特殊な構造はしておらず、 綺麗な青色をしているくらいなものだ。

「普通の眼に見えるだろ? でもこれ、 実は義眼なんだ」

「ぎ、 義眼!? 」

俺はまさかの言葉に露骨に驚いてしまった。 義眼と呼ぶにはあまりにも本物そっくり…というか、 まさに本物そのもののような。 驚いた俺に、 アルフレッドは人差し指を立てて自分の唇に当てて、 「おっと、 これは秘密だよ?」と笑ってみせた。

「この眼は僕の双子の兄の眼なんだ。 そして兄は不思議な力を持っていてね…この眼は()()()()()()()()()()()事が出来るんだ」

そして、 アルフレッドは兄から受け継いだ眼に着いて語った。

まず、 眼を受け継いだ経緯としては、 家族で建物の崩落に巻き込まれてしまった時、 兄は建物の瓦礫に全身を潰され、 顔も()()()は潰されてしまっていた。 そしてアルフレッドは兄が庇ってくれはしたものの、 木材が左目に刺さってしまったらしい。 昔から人には見えないものが見えていた兄は、 崩落の瞬間に写ったアルフレッドの()()を読み取り庇ったのだとか。 そして自分の死期を悟った兄は、 アルフレッドに自分に残った左目を移し復元させた。

後にその眼について分かったのは、 その眼で見た対象の心の色、 死相、 守護等を知覚出来るということ。

「そして、 僕はたまたま君を見かけた。 君…悪魔が憑いていないかい?」

()()…という言葉に俺は一瞬ドキリとしてしまった。

それは、 俺の中に半分流れる魔族の血の事を指しているのか…もしくは先刻会った『最上位魔族』と何か関係があるのか。 どちらにせよ、 悪魔が憑いてるという台詞に不思議と違和感はなかった。

「いや、 よく見ると…憑いてる…というよりも、 君を…護っている? 」

ん?

いやいや、 それは違和感しかない。

もし俺に憑いてるのが最上位魔族の何かしらだとしたら、 『護る』というのはおかしな話だ。 だってあいつ、 1年後に俺の事殺そうとしてるんだぜ?

「…ごめんね、 それ以上の事はよく分からないんだ。 兄ならもっと見えていたのかも知れないけどね」

アルフレッドは、 恐らく俺の心の色…というものを見て答えたのだろう。

「いえ、 大丈夫です…それより、 そんな悪魔が憑いている俺を選んだのには何か理由があるんですか?」

「君の色がね…兄と似ていたんだ」

「似ていた、 というのは…アルフレッドさんのお兄さんも何かしらの悪魔に憑かれていたってことですか?」

しかし、 アルフレッドは首を横に振った。

「いや、 違うんだ。 もっと…本質というか、 使()()というか」

その時、 1つの可能性が俺の脳裏に過ぎった。

これは完全に憶測だ。

しかし、 もしこの憶測が正しければ…アルフレッドさんが言っている意味も繋がる。

同じ色…そして、 使命。

「1つ、 聞きたいんですけど…そのお兄さんの()()()()…何でした?」

「え? 職業かい? えぇと…かなり珍しいみたいで、 言っても分からないかも知れないよ?」

「……構いません」

俺は自然と固唾を呑んでいた。

アルフレッドさんの発言から、 もしやとは思った。

「僕も結局同じ職業の人を見たことはないんだけど、 確か──────」

「────『観察者』、 ですよね」

俺はアルフレッドの台詞を遮るようにして先に答えた。 その職業の名を俺の口から聞いた途端、 アルフレッドはかなり驚いていた。

今まで同じ職業の人に会ったことがない。 そりゃあそうだろう。 律者はこの世に1人しか存在しないのだから。

「ま、 まさか…君…」


「えぇ、 ()()僕が『観察者』です」


そして、 俺はアルフレッドさんも『律者』について知っておくべきたと考えた、 『律者』について俺が知っている事の全てを話した。

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