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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第81話

さて、 まずは宿屋探しだ。 親切にもこのグリスタリア王国の入口には、 この国の王都周辺の地図が掲載されており、 そこから至る場所の所在が記されていた。 そのお陰もあり、 宿屋の場所は直ぐに見つけることが出来た。 一応いくつかの宿屋があるようだが、 万が一を考えて闘技大会が開催される会場から1番近い箇所を選んだ。 その際にグリスタリア王国の建造物を見て回ったが、 やはり国が違う分建造物もかなり造形が違っている。 外壁や屋根には青色を貴重とした配色がなされており、 視界から入る雰囲気は晴れやかに感じ、 それだけで王都が賑わっているようにも感じてしまう。

「お、 あそこじゃないか?」

「ふむむ、 そのようじゃな!」

巨大な円形の建造物には『闘技大会会場』と書かれた看板が立ち並んでおり、 そこからかなり近い場所に『宿屋』と書かれた看板がぶら下がっている建物を発見した。

ドアを押し開くと、 そこは受付用のフロアになっており、 すぐ横には机と椅子が並んでいる。 ドアを開けた瞬間に鼻腔を擽る香りから推測すると、 1階が受付兼食堂となっているようだ。

受付には少し顔立ちの良い受付人がおり、 俺達に気が付くと元気よく挨拶をしてくれた。

「2人で部屋を借りたいんですけど…日付は1週間程で」

闘技大会が5日後なので、 少しの休暇を考えると1週間位が妥当と言えよう。

「ありがとうございます、 それでしたら…金貨3枚ですね」

銅貨10枚で銀貨1枚、 銀貨10枚で金貨1枚…。 俺が討伐の功績でもらった報酬が金貨100枚。 そう考えるとかなりの高額だが、 背に腹は変えられない。 と思い、 あまり深く考えるのをやめて俺は大人しく金貨3枚を渡して部屋の鍵を貰い受けた。 余裕があればニルヴとの部屋も別々で取ろうと思っていたが、 金額を聞いた今はそんな事は微塵も思わん。

宿屋自体の見た目はかなりの建造レベルだ。 それ程の金額でもそうおかしいとは思わない金額…むしろ安いのかもしれないと思わせられる。

勿論部屋の間取りや設置されている物も中々の物で、 煌びやかな内装、ふかふかなベッド、 やけに高そうな家具たち諸々…。 まるで貴族へのおもてなしと言わんばかりだった。

ふかふかなベッドを見た瞬間、 ニルヴは深めのフードをばっと脱ぎ捨てて飛び込んだ。 フードをずっと被っていて暑かったのだろうと思うが、 せめて下に何か着ておいて欲しかった。

「おい、 すっぽんぽんではしゃぐなあほ!」

俺は荷物の中からニルヴの服を引っ張りだし、 ニルヴに投げ渡す。

「あうぅ〜…誰もおらんではないか!」

「俺がおるわ」

全く、 こいつは羞恥心というものがないのだろうか…。 俺の方が目のやり場に困るというもの。

「なんだなんだぁ〜? まさか、 あるじ()()()()()()()というやつなのか?」

上手いこと俺が投げた服で前だけを隠してぴょこぴょこと近付いてくる。 その動きのせいで隠れきれていない肌がチラチラと覗き、 それを見まいと目をそらす俺の反応を見て面白がるように笑っていた。

「いい加減にしねぇとプリン食べさせてやらねぇからな…」

「着たぞ!」

プリンという単語に瞬時に反応したニルヴは、 一瞬のうちに服を着終えていた。

「…お前、 もし知らない人にプリンあげるからついておいでって言われてもついて行くなよ?」

「なんでじゃ? ぷりんをくれる奴に悪い奴はおらんぞ?」

こいつ…プリンを餌に何かに巻き込まれでもするんじゃ無かろうか…。 いや、 変なフラグは立てないでおこう。

「そいつのくれるプリンはめちゃくちゃ不味いぞ」

「なぬっ!? そんな奴がおるのか!?」

プリンを餌に交渉した本人が言うのもなんだが…心配だ。

とりあえず宿屋を見つけることはできたので、 次にやるべき事は闘技大会のエントリー、 そしてその闘技大会の情報収集だ。

先程の守衛から聞いた話によると、 毎月色々な国から精鋭達が集まってくると聞いた。 そして既にエントリーを済ませた者達は闘技大会の掲示板に名前、 年齢、 職業のみが貼り出される。 なので、 大体の参加者はギリギリまでエントリーをせず、 自分の職業を隠す人が多いらしい。

…が、 俺は結局『剣士』で登録するし、 それにあたって紋様も偽造してある。 逆に剣士でエントリーしている人を見ると余裕ぶってくれそうなので、 むしろありがたい。

情報収集とエントリー、 どちらから行うか少し考えたが、 エントリーはそれさえしてしまえば終わりで、 情報収集は限りがない。 ならばと俺は先に闘技大会へと向かうことにした。 ニルヴの肩に『魔道士』の紋様のシールを貼り、 角を隠せるように麦わら帽子を被せた。 俺が渡した服は白いワンピースで、 これは以前キアラからニルヴにプレゼントしていた物だ。白を基調とし、 所々に水色の刺繍が施されている。 少し丈が短めで、 ニルヴの活発さが表現出来ていると思う。

「…うん、 似合ってるな」

ポロリと出てしまった心の声に、 ニルヴは頬を朱色に染めながら麦わら帽子のつばを折り曲げて顔を隠す。

「…たまには、 あるじもいい事言うではないか…」

帽子のつばで顔を隠したままぷいっとそっぽを向く。 その仕草に不覚ながらにドキッとされてしまっていた。

普段からそれくらいしおらしければな…。

「さ、 さて…そろそろ闘技大会のエントリーに行こうか」

「うむっ!」

ニルヴには優勝出来たらその賞金でおなかいっぱいプリンを食べさせてやると言ってある。 俺はそもそも賞金目当てでは無いので、 節約さえしていれば残りの金貨だけでも暫くはやっていけるだろう。 俺は強くなるためにスキルを沢山獲得する事ができればそれでいい。 その旅路にニルヴを同行させた理由は大きく分けて2つある。 契約云々の前に、 俺の目の届かない場所に置いておくのはいささか不安が大きすぎるからだ。 今だ人間の生活に慣れていないニルヴにとって、 何がいけない事なのかの境界線がまだハッキリとはしていないだろう。 ならば、 その判断を下す人間が常に一緒にいた方が得策と言えよう。 しかしその役目を誰かに押し付けようとは思えない。 この竜の少女を連れてきたのは俺だ。 ならば最後までしっかりと責任を持つべきだと考えているからだ。

そしてもう1つは、 そんなニルヴに人間の事をもっと知って欲しいという願いからだ。 普段人間が口にしている食べ物、 生活、 娯楽…。 それらを知ることが、 何よりもニルヴ本人へと変化させてくれるものだと思う。

そして、 この旅路でニルヴは大きく成長してくれるはずだ。

「…む? あるじよ、 行かぬのか?」

そんな考え事をしているうちに、 ニルヴは部屋を出ようとしていた。

「あぁ、 行こうか」

そして、 俺自身もこの闘技大会で大きく成長したいと思っている。

1年後に控えた…あの最上位魔族との決戦の為に…。

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