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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第79話

俺が魔力を注ぎ込んだ『聖剣エクスカリバー』は、 どういう理屈でそうなったのかは不明だが、 『勇剣ガラティーン』という剣へと変化した。固有スキルは1つのみだが、 その固有スキルは『理ノ破壊(リ・デストロイ)』。 斬りつけた対象の『固有スキル』を無効化することが出来る剣だった。

エクスカリバーが変形した際に、 チラリとアランを見やるが、 首を横に振っているアラン。 どうやらアランにも何が起きているのかは分かっていないようだった。

しかし、 これで光明がハッキリと見えた。

俺の眼から情報を共有していたニルヴにも、 俺が突破口を切り開く事の出来る武器を手に入れた事は伝わっており、 より一層攻撃に手を緩めずに囮役を引き付けてくれていた。

「わーっはっはっは! どうしたのだ! 悪魔とはそんなものなのかぁ! わーっはっはっは!」

華麗に触手の薙を回避しつつ、 隙を見てボコスカ殴りながら煽るようにして注意を惹き付けているようだが…目はあっても耳があるかは分からんぞ。

俺は更に変形したガラティーンへと魔力を注ぎ、 『加速』を使用する。 もう一度縮地を使って背後へ回り込むのが手っ取り早いが、 学習能力があるメフィストへ同じ攻撃が通用するとは思えない。 ガラティーンで斬り付ける事が成功するならば警戒する程ではないが、 それまでは一撃でさえ食らっては一環の終わりだ。 『加速』によりメフィストの周りを高速で移動しつつ、 ニルヴの作ってくれる隙を探る。

「────────今ッ!」

ニルヴの拳がメフィストに当たった瞬間、 俺はここぞとメフィストへと急接近した。 ニルヴも今までの打撃よりも力を入れていたようで、 メフィストはよろついていた。 念の為に前方にはアイギスを構え、 俺は振り上げたガラティーンを全力で振り下ろした。

しかし、 その瞬間メフィストはもう一本触手を身体から生成させ、 それを槍の如く突き立ててきたが、 俺は顔面スレスレで回避し、 そのままガラティーンをメフィスト目掛けて振り下ろした。

「はぁーっ! 『地断剣』!!」

──しかし、 その刃はメフィストへと届かず、 すんでの所で触手を盾にして攻撃を防いだ。

だが、 ガラティーンの固有スキルはそれで発動する。

ガラティーンの剣撃を()()()()()である触手で受け止めたということに意味があるのだから。 盾で攻撃を防いだ瞬間、 パキン! と何かが割れるような音が鳴った。 1度距離を取り、 為にしもう一度メフィストを『鑑定眼』で確認してみる。



個体名:悪魔の卵『メフィスト=フェレス』

固有スキル なし


「ニルヴ! 畳み掛けるぞ!!」

「任せい!」

メフィストの固有スキルを破壊出来た今、 俺とニルヴは多少の傷を負っても『竜の血』のお陰ですぐに治癒される。 『致命傷攻撃』も『治癒妨害攻撃』も破壊された今、 この卵野郎に臆する理由など何も無い。


だが、 何者かの気配を感じ、 俺とニルヴは同時にメフィストから距離を取って警戒した。 明らかにこちら側に加勢する為の人間では無い殺気…。

いや、 メフィストから距離を取った今、 その殺気を放っていない事を考えると、 ()()()俺達に警戒させ、 距離を取らせることが目的だったと考えられる。

「いやぁ〜、 反応良くて助かったよ♪」

どこからともなく…そして音もなく俺の背後に立ち、 肩を組んできたのはアハトだった。 俺がアハトの存在に気付き、 後ろを振り向いた時にはそこに姿はなく、 既にメフィストの側まで移動していた。

「これは僕達の落とし物でね、 それをいつの間にか拾われてしまっていて困っていたんだよ♪ 」

アハトはメフィストの卵をポンポンと叩きながら、 じっくりとメフィストを観察していた。

「んん〜? ゼン君、 この卵に何かした?」

俺は無意識に固唾を飲んでいた。

なんだろう、 表情は今までのあっけらかんとした表情に変わりはない…しかし、 言葉から伝わる明らかにこちらを敵対視するような威圧感。

「…あぁ、 そいつを倒す為に…固有スキルを破壊した。 そっちの事情は知らないが、 こっちも殺される勢いだったんだ。 文句なんて言うなよ」

「あっはは♪ それもそうだね。 この卵を落としてしまったのは上の責任だから、 上には()()()()って報告しておくよ♪」

そう言うと、 アハトはメフィストの卵を魔力の圧だけで一瞬で圧した。

ニルヴがいくら殴ってもよろけるだけだった。 俺が剣を振るおうが防がれていたあのメフィストを、 魔力だけで。


「ゼン君…君はまだ弱いね」


アハトはそう言い残し、 瞬きの一瞬でその姿を消してしまった。


俺だってわかってる。

でも…なんで俺だけこんな目にあわなきゃいけないんだ。

ただ俺は、 じいちゃんみたいな強くて頼られるような…そんは聖騎士になりたかっただけだ。

それなのに、 訳の分からない『律者』になって、 そのせいで盗賊団に狙われて…しかも最上位魔族にも目をつけられ、 実質1年の余命を言い渡されて…それでも努力しようとしたら暗殺されかける。

こんなの…めちゃくちゃだ。

「…主?」

拳を握り、 唇を噛む俺を見てニルヴは心配そうな顔で俺の顔を覗き込む。

「…なぁ、 ニルヴ。 ニルヴは俺と契約して、 後悔したことないのか?」

こんな…自分より弱い俺と。

しかし、 ニルヴは真剣な顔持ちで即答した。

「ないな。 わしは今、 今まで体験してきた中で1番楽しいぞ? ぷりんという素晴らしい食べ物を知れたのも、 主といたからじゃしの! 」

その屈託のない笑顔は、 俺を慰めようとしての作りではなく、 間違いなく本心からと見て取れる程に輝いており、 そして俺の心の曇りすら晴らしてくれていた。


「なぁ、 ニルヴ…お前さえ良ければなんだけど────」

俺はニルヴに耳打ちし、 モノからの足止めを解除された聖騎士に事の顛末を伝えた後、 帰路に着いた。

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