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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第65話

俺とアランは暗殺特務部隊『夜』と名乗る団体からの襲撃を受けた次の日の朝、 念の為と思いガイルの元へと足を運ばせていた。

「────という訳です、 ガイル先生」

粗方の事情を話し終えたアランは軽くお時期をした。 こういった立ち振る舞いが貴族の出らしい対応と言えよう。

俺にはない教訓だ。

「お前達は…良くもまぁ入学してそこまで経っていないうちから問題事を持ってくるな…」

面倒臭いと言わんばかりに頭を搔くガイルは、 追い討ちに深々《ふかぶか》と溜息を吐く。

「でも、 こういう時の為に俺をSクラスに入れたんですよね?」

俺はすかさず、 ガイルが俺をSクラスへ入学させた時の理由を口に出した。

まさかその話が俺の耳に届いているとは思っていなかったようで、 ガイルは唖然とした表情を俺達に向けていた。

「お前…その話どこから…」

「お忘れですか? うちのクラスにはオリジナルの魔道具を作ることが出来る無表情の女の子が居ることを」

俺の言葉に苦悶の表情を見せるガイルにニヤつきが隠せない俺は、 「それくらいにしなよ」とアランに宥められてしまった。

ちなみにモノがこの話を耳にしたのは、 ガイルの口から発せられた直後らしい。

どうやら試験当日、 モノは自分の耳にイヤリング型の魔道具を着けており、 その魔道具はある一定の範囲内の声を拾うものらしい。 元々の用途は試験内容等の説明を聞き逃さいように着けていたらしいが、 不運にもその魔道具を着けていたタイミングでガイルが口にしてしまっていたのだった。

つまり、 モノはあの試験当日から知っていたらしい。 先日思い出したかのように伝えられたが、 特に知っておいて何かの役に立つとは思っていなかったが…まさかのタイミングで使う場面があった訪れていた。

「しかし、 今回の襲撃に関しては僕等は正当に被害者と言える立場です。 この情報だけでは足を辿るのは困難ですが…」

「そうだな。 俺の方でもあの2人に関しては調べておく。 安全を考慮してお前たちは2人一緒に行動しておけ。 出来れば他の人とは近くにいない方がいいかもしれない」

「「わかりました」」

そうして、 俺達は教室へと向かった。

しかし、 ガイルの言っていた他の人とは近くにいない方がいいと言うのはあながち間違いかもしれない。

実際襲撃を受けた際は、 寮に居た時は監視だけで攻撃自体はしてこなかった事を考えると、 近くの寮室の人達には気付かれないようにしていたのかも知れない。 その為にも、 俺達は『夜』についてもっと情報を集めるべきだ。

しかし…どこからそういった情報を集めればいいか。 寮での件といい、 あまり人目につくような行動は慎んでいるようにも感じられる。 そんな暗殺特務部隊ともなれば、 書物なんかに記載されているとは到底考えにくい。

「そういえば、 アランは『夜』の事をどれだけ知っているんだ?」

『夜』と対峙したあの時、 クロウ兄弟の本気さが伝わってくる…みたいなことを口に出していた。 それは『夜』がどんな団体なのかを知っていないと出ない口ぶりだ。

「僕は父上から聞いていたんだ。 貴族たるもの悪人に殺されるような事はあってはならないと父上は言っていてね。 勝敗は情報量で決まるから、 相手の事を知っておけという教育を受けているんだ」

アランが言うには、 複数存在する暗殺団体の中でも『夜』は特殊で、 団体の人数、 職業、 被害報告…全てにおいて謎に包まれている団体らしい。

しかも、 どういったルートから依頼を受けているかすら分からないと来た。

「今までの暗殺を生業とする団体には類を見ない完全隠蔽の団体なんだ。 僕が知っている情報も存在する事、 そして受けた依頼は必ず完遂する事…それだけなんだ」

情報量が勝敗を期すというのは、 俺もそう思っている。 だからこそ…相手が知り得ている情報に対してこちらが保持している情報が少なすぎる…というか、 全くもって無いに等しい。

「俺達も何とか情報を集めなければいけないな…昨日の今日で襲撃してくる事は無いだろうし、 一旦各自情報収集に徹してみようと俺は考えてる。 流石に単独行動は危険だろうから、 誰かと常に行動しよう」

「そうだね、 僕は父上の方を当たってみようと思う。 同行人はイグニス君にお願いしてみることにするよ。 ゼン君はどこか心当たりがあるのかい?」

う〜ん、 言われてみれば。

昨日の段階では、 じいちゃん達なら何か知っているかもと考えていたが、 今や隠居している2人が現役貴族ですら知り得ない情報を知っている可能性はかなり低い。 俺の知り合いの中での知識量はモノがダントツだが、 彼女はスキルや魔道具に関しての知識に重点を置いている。 暗殺特務部隊になんて興味はないだろう…。


あ。

「一か八か…俺はモノの妹、 ウルスラちゃんに話を聞いてみようかと思う」

ウルスラもバエル家だ。 あの時の俺の職業ジョブへの食い付きから察するに彼女もまた知識に貪欲なはずだ。 しかも名高い貴族と来たら、 何か情報を持っている可能性は高いかもしれない。



────────────

今日の授業を全て終え、 俺はモノにウルスラへのアポイントを取っていた。

「モノ、 朝話した通りなんだが、 これから行っても大丈夫か?」

「………いい、 よ。 ウルスラ…も、 待ってる…」

モノが少し寂しそうなのは、 どうやら自分に協力出来る事が無いことを気に病んでいるらしい。 巻き込んでしまっているのはこちらだと言うのに、 本当に良い友を持ったと心から思う。

「いや、 ここまでしてくれているだけで助かるよ」

俺の同行人は言わずもがなニルヴに頼んでいるので、 キアラがニルヴを連れて来次第でモノの家へと向かうつもりだ。

…と思っていると、 快活に戸を開く音と共にブンブンと尾を揺らすニルヴと、 恐らく全力でニルヴを追いかけてきたであろう汗だくのキアラが現れた。

あるじーーっ! 待たせたの!」

「落ち着けバカ」

ビシッ

俺はキアラを汗だくにしている元凶の頭にチョップをかます。

「なにをするのじゃ!?」

「悪いな、 キアラ…こいつには後でお仕置しておくから」

俺はキアラに深々と頭を下げて謝罪した。

「わ、 わたしが…す、 好き…でやってる事だから…気にしないで!」

キアラの器の大きさに涙が出そうになりながらニルヴを見ると、 何をやっているのか全く分からないと言いたげな表情で俺とキアラを見ていた。 やはりニルヴにはこの国で生活していく為の教育をさせるべきだろう。

とりあえず…今回はニルヴには俺の護衛も兼ねてもらうのでこれくらいにして、 早速俺はモノとニルヴと共にバエル家へと向かった。

ウルスラから有力な情報を知れれば良いが…。

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