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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第64話

俺とアランは、 寮でクロウ兄弟の件について考えていた時から何者かの視線…監視を受けている事に気が付いた。 人目につきたくないという事から襲ってこなかったのであれば、 その場から動かない方が適切だったかもしれないが…それとは全く逆の考えを持っていた場合を懸念し、 あまり人目につかない場所へ移動してきたが…。

「それにしても…ここまで人が居ないとなれば、 人払いの魔道具か何か使ってんのか?」

鎖鎌、 ダガーナイフ、 角指かくし棘鉄球モーニングスター…様々な武器を取り出している相手は、 俺の問いには答えなかったが、 あまり見えていない顔からは鋭い眼光だけが俺達を睨みつけていた。

殺る気まんまん。

しかし…気がかりな点がある。

「アラン、 こういう場合って…『禁忌』はどうなるんだ?」

職業ジョブを持つ人々は、 その職業柄に違反した行為は禁忌違反となる。

更に、 グロリア王国の国民を傷付けた場合は『禁忌違反』となるはずだ。 だが、 目の前に現れた4人は今にも飛び込んできそうな程に殺気立っている。

「大抵()()()()()()を仕事にしている人達は国籍を持たない人達が多いよ。 僕も立場上命を狙われる事も多くてね…少し調べた事があったんだ」

いいとこの出で、 更に勇者ともなれば苦労するものだ。しかし、 この4人の目的はアランだけではなく、 どうやら俺も含まれているようだが…まさかとは思うけど。

「まぁ、 クロウ兄弟(かれら)が依頼した…というのが妥当だと思うよ」

だろうなぁ。

とうとう国王の側近から暗殺される事になろうとは。

そんな思いにふけていた瞬間、 鉄球がとてつもない速さで襲って来たが、 それをアランが瞬時に顕現させたエクスカリバーで一刀両断した。

「……」

暗殺者でさえ、 弾き返されること位は覚悟していただろうが、 まさか正面から一刀両断されるとは思っていたなかったようだ。 本来は帰ってくるはずだった鉄球の鎖を見つめたまま沈黙していた。

「…ふむ、 想定していたよりも中々骨のある殺害対象だったようだな」

ダガーナイフを携えた暗殺者がなにやら関心した様子で言葉を零す。 全員顔は見えず、 男性なのか女性なのかすら分からなかったが、 口ぶりと声音から察するにダガーナイフを武器としているこの男性がリーダーのようだ。

「さて、 ここで提案なのだが…1度体制を整えさせて頂いてもよいだろうか?」

そう言うと、 リーダー格の男はあろう事かダガーナイフを仕舞い始めた。

「おいおい、 ナイフを仕舞うのは勝手だけどさ。 はいそうですかって言うと思ってるのか? 先に攻撃してきたのはそっちだろ?」

リーダー格の男はダガーナイフを仕舞い、 すっかり戦意喪失のような態度を露わにしている。

「ふむ、 確かに君の言う通りだな。 ならば────」

「────え」

刹那、 鉄球を武器にしていた人物の首が地面へと落ちた。

ゴロリと転がった拍子に、 隠れて見えなかった顔をし見ることが出来たが、 その表情は絶望に染まった表情をしている女性だった。 こんなことをしていなければ良い旦那を持ちそうな整った顔立ちとすら思ってしまった。

どうようする俺達を他所に、 リーダー格はあっけらかんとしたような口調で会話を続けていた。

「これでどうだろうか?」

「これで…て、 お前、 この女性仲間じゃなかったのか?」

「もちろん大切な仲間さ。 だからこそ、 交渉の材料としてその命を賭した。 それの何が問題というのかは分からないが…それはそれとして、 彼女の命1つでは足りないというのであれば…さて、 あと何人分の命が必要かね?」

平然とした口調に背筋が凍りつく冷たさを覚えた俺は、 ここで逃がさず捉えることが先決だと思っていたが、 今すぐにでもこの場を逃げ出してしまいたいとすら思ってしまっていた。 呼吸すらまともにしていられない中、 チラリとアランへと目をやると、 アランも同様に息が上がっていた。

「ふむ…その様子だと、 まともに会話することすら叶わぬようだ。 では、 我らはこれで失礼させてもらおうか」

そう言い放ち、 彼はチラリと自分が葬った亡骸に一瞥し、 踵を返して森の奥へと歩き始めた。

「……ま、 まて…。 お前ら…何者なんだ」

呼吸がしづらいギリギリの中で絞り出した俺の言葉にリーダー格は男が足を止め、 名を口にした。

「ふむ、この状況でよく言葉を口に出来たな。 ならばその努力には報いなければならない。 我らは『よる』。 暗殺を生業なりわいとする特務部隊だ」

そう言い残し、 『夜』と名乗った彼等は森の暗闇に溶け込んで姿を消した。 その瞬間、 あれだけまともに出来なかった呼吸がやり方を思い出したかのように出来た。

「な、 なんなんだあいつら…」

言葉一つ一つに殺気が篭っているかのような…言葉一つ一つに魂を込めているような…そんな覇気が感じられる男だった。

「まさか、 彼等があの『夜』だったなんて…クロウ兄弟はとんでもない所に僕等の暗殺を依頼したようだよ」

アランの口ぶりから察するに、 かなりの有名な暗殺部隊のようだ。 それだけあの兄弟の本気さが伝わってきていた。

しかし…暗殺の件で1つ問題がある。

『夜』への依頼したのはクロウ兄弟である事は確信しているが、 それを裏付ける証拠が何一つない事だ。

「証拠がないにしろ、 一応ガイル位には言っておいた方がいいだろうな。 俺とアランは『夜』について詳しい情報を集めよう…次狙われる時は相手も万全の体制を整えて来るだろうな」

「そうだね…今日の所は一旦帰ろう」

15歳にして暗殺対象になるとは思わなかったが、 『観察者』という職業を持っている今…俺はまだ強くなれる。



あれ、 『観察者』のせいで狙われてるのか。

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