第56話
あの時、 俺がアハトから聞かされた事。
「実はさ…君のお母さんなんだけど、 魔族なんだよね♪ それも最上位魔族」
その場にいたアランは信じられないといった表情のまま固まっており、 二ルヴは何となく感じていたのか、 あまり変わった様子はなかった。 竜の血で契約した際に俺の血液から感じていたのかも知れない。 言わば確信に変わった…と言うべきか。
そして、 最上位魔族というものについては。
10体の魔族の始祖の事を指すらしく、 あの時現れた最上位魔族の名は『ツヴァイ』という魔族だった。 そして、 最上位魔族の1人である俺の母親の名は────『ゼン』
じいちゃん達が俺を保護した村の魔石の場所を調査するために、 母親は人間のフリをして暮らしていたらしい。 そして、 調査をしながら村で暮らしていた母親は、 ある男性と出会った。
名を『レグニス・アルファ』
彼は村の中で唯一の青年で、 村長の息子ということもあり人一倍働いていた。 そんなレグニスは、 村の外から来た母親でも、 誠心誠意もてなし、 更には仕事も斡旋してくれていた。
そして…2人は恋に落ちた。
勿論そんな事が許されるはずもなく、 母親は魔族側にひた隠しにしていた。 しかし、 いつまで経っても調査報告が来ないことから、 グロリア王国の国宝倉庫を襲撃する日のついでに、 その村へも魔族を送った。
調査もせずに楽しくしている母親を見た魔族は、 母親を含めその村の住民達全員を襲撃した。
何とか一命を取り留めていた母親は、 真っ先に駆け付けたじいちゃんに、 俺を託して事切れた…。
そして、 その村での母親の状況を見て、 襲撃させた魔族が────アハトだと言う。
「僕も最上位魔族の1人だからね…僕を恨むかい? 君になら、 殺されたって文句は言わないよ?」
今までずっと探し求めていた俺の仇が、 目の前にいる。 しかし…。
「正直、 その話がどこまで本当か知らねぇし、 信用も出来ねぇ。 俺が実は魔族でしたー、 なんて言われても納得出来ない。 でも…」
アハトの話した俺の両親の事を聞いて、 何故だか嘘だとは感じていなかった。 一瞬、 何かスキルの類で信じさせているのかもと疑いはしたが、 アランの『勇者』固有スキル『強者の意思』お陰で状態異常無効を獲得している俺に、 精神影響系のスキルは効かない。 なので、 必然的にスキルでの干渉は不可能だ。 今感じている真実味は決して何かの影響を受けて感じているものでは無い。
「ゼン君…僕は君に何度も助けられた。 そんな君が人間でなかろうと、 それが例え魔族だろうと、 君は僕の大切な友人だ。 強力な職業を手にしたとしても、 それを笠に着て無闇に使用しないという強い心を持っている君は…僕にとっては僕ら人間と何も変わらない…と、 僕は思っているよ」
不意に投げられたアランの言葉に、 俺は思わず頬を濡らす感覚を覚えた。
「──────ってな事があってね…笑っちまうよなぁ。 まさか人間じゃないなんて事、 言われるとは思ってなかったからさ。 ほんと…じいちゃんとばあちゃんには…謝りたい気持ちでいっぱいなんだよ」
真実を告げた後、 俺はまともにじいちゃんの顔を見ることが出来ず、 ただただ歩く道を見続けていた。 しかしその間に、 じいちゃんからの返答はなかった。
そりゃあそうだ。
手塩にかけて育てた少年が、 実は人間と敵対する存在だと知ってしまえば…。
「じいちゃん…ごめ─────ぶはっ!?」
俺は再び謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、 かつて鬼神と呼ばれた男の拳を頬に一打される。 その威力は凄まじく、 俺は衝撃に耐えきれずに吹っ飛び、 商店街をざわつかせてしまう。
「何度も同じことで謝るでない! そもそもゼンから謝られるようなことは何一つない!! わしらと違うからなんじゃ…たったそれだけで、 何が変わる。 ゼンは、 何があろうと、 誰に何を言われようと、 わしとばあさんの孫…それに変わりはない」
そう言って、 倒れ込んでいた俺の手を取り、 その大きな胸でめいいっぱい抱きしめた。 その温かさは今までと何ら変わりない温かさで、 俺の悩みなど関係なかったと感じさせるものだった。
「勿論認めてくれん者もおるじゃろう。 だがな、 お前を知り、 お前に助けられてきた人達はそうは思わん。 胸を張って生きよ」
瞬間、込み上げてくる涙を抑えきれずに溢れさせてしまった。 人間と魔族のハーフは、 ここまで涙を流す事が出来るのかと自分でも仰天してしまう程に。
「やっと見つけましたよぉ〜…」
そういって現れたのは、 街を走り回ったのか、 ヘロヘロにバテてしまっているキアラだった。 他の人達が居ないところを見ると、 もしかすると手分けして探してくれているのかも知れない。
そこまでして探さなければならない何かがあったのだろうか。 みんなで手分けして俺を探してくれている…それは俺に魔族の血が流れていると知ってもしてくれるのだろうか…とは、 今の俺はそんな不安は生まれてこなかった。
俺は直ぐに涙を拭い、 ついには息を切らして地面に膝を着いてしまったキアラに駆け寄る。
「そんなにバテバテになって、 何かあったのか?」
「はぁ、 はぁ…モノちゃんと競争していただけなんです…あはは。 一応、 用はありますけど」
モノと競争?
なんのために…。
「お、 おう…そうか。 それで、 用って言うのは?」
「なんでも、 国王様が呼ばれてるみたいですよ?」
国王の用事を一応とは…モノとの競争はそれより大事な事なのだろうか…。
「そっか、 ありがとな。 そう言えばまだ到着してから結果を話してなかったもんな」
今回の報告と一緒に、 俺の話もするべきだろう。
俺はキアラに手を差し出し、 息切れで膝を着いていた身体を起こし、 じいちゃんと3人で国王の待つ王城へと足を急がせた。
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「成程…無事に『顎』の事実上の解散には片付いたという訳か。 すまぬな、 国王としてこのような問題を押し付けてしまうとは…」
と、 言われても…。 『顎』の狙いは俺の職業の能力なので、 どちらかと言うと俺が巻き込んでしまったような形である。 こちらが謝罪こそすれ、 アーノルド・デンゼル・グロリア…基、 国王から頭を下げられるような事は微塵もないと思っていた。 しかし、 それと同時に若くしてこの国を任されている人物たる所以なのだろうと感じた。
「いえ、 恐縮です。 この国の力になれたのならば、 俺…いや、 私も嬉しい限りでございます」
そう言うと、 国王は少し口を紡いでいたと思っていたが、 途端に堪えきれず吹き出していた。
「あっはっはっは! いや、 すまぬ…師匠のお孫さんからそこまで畏まられるとね…前も言ったが、 兄弟子と思ってくれれば良いよ」
いや、 流石にこんな場面で畏まるなと言われる方が無理な話だろう。
今、 この場にいるのはあの戦闘に参加したメンバーである、 キアラ、 モノ、 アラン。 そして、 じいちゃんとばあちゃんに、 聖騎士長の面々。 更に国王の側近である兵士が2人だった。
「王よ、 お戯れはおやめ下さい。 いくらこの者がオルフェウス様達の御子息であれ、 王は威厳を保たねばなりません。 それに…私は何故この場にいる全員が彼の発言の後に疑問を持たぬのかが分かりません。 彼は──魔族なのですから」
勿論、 その意見は正しいだろう。 それを分かってか、 じいちゃんも何も行動を起こそうとはしない。
「聖騎士長殿達も、 何故彼を殺そうとしないのですか!?」
元々、 王の側近は王に固く忠誠を誓うものだけが選ばれるもの。 魔族が王の目の前にいるとなれば、 我が身を犠牲にしてでも守り抜こうとする者達だ。 今にでも俺を殺したいという気持ちが伝わってくる。
「ならば、 わしの所で引き取っても良いかのぉ」
そういって出たのは、 『キンリュウ・ダルア』だった。 引き取るというのは、 恐らく自分の聖騎士団に加入させる…という意味で間違いないだろう。
「待って下さい、 キンリュウさん。 抜け駆けは美しくありませんよ? 私が先に狙っていたのですから」
キンリュウの発言に待ったをかけたのは、 エレオノール・ハイライトだった。 長い金髪を靡かせながら手を上げる。
「それなら、 僕も彼が欲しいなぁ。 彼の刃裁きはとても素晴らしかったし」
更に声を上げたのはナイブズ・ロンドだった。 ここにいる聖騎士長達と、 俺は特に面識もなく、 強いていえばあの戦闘を見ていた…位なものだ。 正直ここまで誘いを受けている状況に戸惑っているのは俺自身だった。
「ま、 待って下さい…どうしてそういう話になるんですか?」
俺が状況が飲み込めずに慌てふためいていると、 アランが俺の肩をぽんと叩いた。
「聖騎士長は、 自分の団に加入している団員の処罰の権利を得ることが出来る。 つまり、 生かすも殺すも聖騎士長次第…という訳ですよ。 良かったですね、 ゼン君」
アランのやつは何を言っているのだろうか。
そんなの、 生殺与奪の権を握られているではないか。 なんだ、 この人達はそんなに俺を処刑したいのか!?
────そこまで考えた俺は、 アランの言っている意味に気付いた。
生かすも殺すも。
仮に、 この兵士達の訴えで俺が処刑という判断が下ろうと、 聖騎士長である人物が『生かす』と判断した場合はその処刑は無効になる…ということだ。
そりゃあ誰にでもなれるものではない訳だ。
絶対的な実力と、 絶対的な忠誠を持っているからこその『聖騎士団長』という事か。
ならば、 俺の言うことは決まっている。
「王よ、 1つお願いがあります」
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いつも読んでくださってありがとうございます♪
『世界最強の観察者』を書き始めて、 気付けば1年が経過しておりました…。 これも、 ひとえに皆さんが読んでくださっているからだと常日頃感じています。
仕事の合間合間のせいもあり、 毎週1話しか投稿出来ずに不甲斐ないです…。
実は、 ちまちまともう一作品書いているものがございまして、 そちらも完成次第で投稿しようかと考えてます!
勿論『世界最強の観察者』は必ず毎週1話は投稿します。 もう一作品の方は不定期更新になりますので、 もし投稿を始めた際にはこちらの方でもまた報告させていただきますので、 よしなに…。
ブックマークも少しずつ増えてきていて、 とても嬉しい限りですっ!
まだブックマークをしていない方…良ければブックマークをして頂ければ、 それだけで励みになりますっ!
それでは!
来週の更新を楽しみに待っていただければ幸いです!




