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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第55話

指の怪物が霧散する前に、 何かが発した言語…。

それは紛れもなく魔族が用いていたものだ。 しかし、 以前戦闘した魔族の時は解読が出来ていたのだが、 今回は聞き取る事が出来なかった。

魔族の使用する言語の中でも何か違いがあるのかもしれない…が。

今はそんな事を考えている場合ではない。

4人がかりであれだけ苦戦を強いられていた指の怪物を、 いとも容易く紙切れの如く抹殺する程の強さ…。

『■■■■、 ■■■■■■■■■■■■■!』

そんな相手に同じ言語で声を発したのは二ルヴだった。 腕を組み、 威嚇するように尻尾の鱗が逆立っている。

『■■…■■■■■■■■■■■■…』

二ルヴに対して何かが返答した時、 俺の脳内にはスキル取得の声が流れた。

『最上位魔族言語解読 を取得しました。』

スキルの獲得により、 判明した事。

これは言語から分かっていたが、 魔族で間違いないようだ…。 しかし前回の魔族とはレベルが違う、 『最上位魔族』という単語。

『その様子…貴様も我等の言語を会得したようだな…ふはははっ、 やはり面白い』

『最上位魔族…で、 いいのか?』

俺が話し出した魔族の言葉に、 アランとアハトは一瞬驚くも、 俺の職業ジョブを理解している2人はすぐに表情を戻す。

まず、 今この状況を把握することが必要だ。

話せる状況になったのはありがたい。 最上位魔族とやらも、 現れた瞬間は一瞬で全員が殺されてしまうビジョンすら見えたが、 二ルヴと話している事といい、 俺の状況を見て面白いと言ってのけることから、 それが目的ではない事が見て取れる。

『お前は何のためにここに来たんだ? 何故、 俺達を助けたんだ?』

俺の問に、 最上位魔族は大きな声で笑い返した。

『否、 助けた訳ではない。 我は使徒を抹殺しに来たのだ』

『使徒』というのは、 俺達が指の怪物と呼んでいたあいつで間違いないだろう。 そして、 重要な部分…助けに来た訳では、 ない。 結果的にこちらが助かっただけであり、 それは目的の副産物だと言ってのける。 さらに言えば、 指の怪物…もとい使徒という存在は、 最上位魔族とやらが出張ってでも抹殺しなければいけない存在だったと言うことだ。

『だったら…もう目的は終わったんだろ? 』

『その通りだ』

最上位魔族の言葉に俺達は、 ほっと胸を撫で下ろす。

と。

『その通りだった────のだが、 気が変わった』

瞬間、 最上位魔族から感じた圧は俺に向けてのものだった。 全身を鋭い針で無数に刺されているような…。

呼吸がしづらい…。

俺の急激な変化に二ルヴは最上位魔族を睨みつけ、 アランは俺の身体を揺すっているが、酸素は一向に俺の肺まで届いていかない。

その時、 俺の耳元でパチンと指を鳴らす音が聞こえてきた。 すると、 今まで感じていた物がまるで嘘のように呼吸は安定していた。

「今回はサービスだよ♪ まだ君に死なれたら困るんだよねぇ」

アハトは俺の周りに魔力障壁を貼り、 最上位魔族からのプレッシャーから解放してくれた。

やはりアハトが何者なのか…目的も分からないが、 今は助けてもらった事に感謝を言っておく。

「た…助かった…」

『この程度の魔力に耐えられぬか…やはりまだ青いな。 ならば貴様に1年の猶予をやろう。 1年後、 我は再び現れる。 そしてその時は────殺しにゆく』

最上位魔族とやらに殺害予告された人間って、 他に居るだろうか。

『それまでに、 最低でもそこの()()()を殺せる位にはなってもらわねば困る』

アハト殺せる位には…か。 こいつはおちゃらけで見えるが魔力操作はとてつもなく精巧だ。 俺ももっと強くならなくては────


────────────え?


いや待て、 おかしくないか?

俺はその疑問を確認すべく、 アハトの顔を見る。

そのアハトは、 肩を竦めて落胆していた。

『なぁ…最上位魔族、 なんで、 ()()()()()()()()()()()()()()?』

なぜなら、 アハトの戦闘は指の怪物との間だけであり、 この最上位魔族が突然現れてからは1度も戦闘を行ってはいない。 元々から戦闘を眺めていた…とでも言うのであれば納得せざるを得ないが、 それなら興味が湧くのはアハトの方だろう。 俺はまともな戦闘は行っていないと思う。

しかし、 想像していたものとは別の反応が最上位魔族から漏れる。

『なに? …………成程、 話しておらなんだか』

『──そりゃそうでしょうよ〜』

そう発したのは、 やはりアハトだった。

『ごめんねぇ、 僕も…魔族なんだぁ』

アハトはへらへらとした表情のまま、 俺に告げた。 見た目は完全に人間のそれと同じだが、 その口から発せられる言語は間違いなく最上位魔族言語だった。

『騙してたお詫びにいい事教えてあげる♪ 最上位魔族について…知りたいでしょ?』



──────────────────


グロリア王国の凱旋通りには、 今だ治療を受けている聖騎士達で溢れており、 その中には綺麗な布を顔に被せられている人も居た。

先に帰していたモノとキアラも治療の手助けをしており、 俺とアラン、 そして二ルヴが帰還したことに気が付くと、 手は止めずににこやかに出迎えてくれた。

2人の反応を見たじいちゃんとばあちゃんは、 ガイルと会話していたのだが、 そのガイルを力いっぱい押しのけてこちらへ猛ダッシュしてきた。

「ゼン!! 無事じゃったか!!」

「置いていってしまってすまないね、 でも、 その代わりにあんたの友人はしっかり連れて帰ったさね」

「うん…ありがとう」

俺は泣きながら俺の肩を掴んで離さないじいちゃんを落ち着かせると、 深呼吸をして切り出す。

「……2人に、 話があるんだけど────ぐふっ!」

真剣な眼差しで話を切り出そうとした俺の背中に追突してきたのはキアラだった。 キアラもまた、 顔をクシャクシャにしてしまう程涙を流しながら俺の背中にしがみついていた。 その後ろからはモノが()()()()と歩きながらこちらに来ていた。

「…おか、 えり…」

「あぁ、 ただいま」

そんなやり取りをしていると、 間からアランがわざとらしく咳払いをする。

「皆、 僕にはないのかい?」

すると、 どっと笑いが起きる。

そうだ。 俺が守りたかったのはこれだ。

他愛ないことで笑い合える日常が送れればそれだけで良い。


……なのに。

今は空笑いしか出来ない。

アハトから聞かされた事が頭から離れない。 アランもそれを察してなのか、 わざと笑いを起こそうとしてくれていたのだと思うが、 申し訳ないが今の俺は…素直に心から笑えない。

「ゼン、 久しぶりに少し散歩でもするかのぉ」

優しく笑いかけながらじいちゃは俺に提案してくる。 小さい頃から俺を見てきた2人は、 俺の様子がおかしいことなどすぐに察しているのだろう。

「……うん」

「わしはどうしたらいい!? ぷりんは!? わしは早くぷりんが食べたいのじゃ!」


俺は、 駄々を捏ねる二ルヴをアランにお願いし、 じいちゃんと2人きりでグロリア王国の街を散歩することにした。 既に夕日も落ちかけている時間にも関わらず、 結構な人が今だこの国を満喫していた。

「ほれ、 食うか?」

そう言ってじいちゃんは俺に出店で買ってきた鳥の魔物の揚げ串を手渡してきた。 それを受け取り1口食べると、 熱い肉汁が戦闘で枯れていたエネルギーを補給してくれる。

「…あの後、 何があったのじゃ?」

俺は、 あの後の出来事を話した。

あの怪物は『指の怪物』という存在であった事。 今だどこかにあの怪物は存在する事。

その指の怪物を倒したのは『最上位魔族』という存在だと言う事。

その最上位魔族と、 1年後にまた戦わなければいけないという事。

「そうか…ゼンはこれからまだまだ強くなれる。 なんてったって、 わしの自慢の孫じゃからな! わしに任せておれ、 ゼンを()()最強とまで言わしめてやるわい!」

「それじゃ俺の職業ジョブバレるよ…はは」

人類最強…か。


じいちゃんも、 ばあちゃんも…。

俺が()()()()()()()()って言ったら、 どう思うかな。


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