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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第44話


魔剣。

自ら、 又は対象の何かを触媒にすることで桁外れの威力を発揮する事が出来る代物である。

勿論そんな代物を、 一個人が使用することは認められておらず、 各国保有者は国に保管してもらう事が義務付けられている。

勿論今まで申請せずに持ち歩こうとした者がいなかった訳では無いらしいが、 どういう訳か決まって捕獲されてしまうらしい。

なので、 本来ガブラスが保有している事がありえない話なのだが…。

それも含め『アギト』の実力…ということなのかも知れない。


「まさか…魔剣を隠し持っていたとはね。 魔剣持ちと戦闘するのは初めてだよ」

赫い筋が脈打つ剣に気圧されながらも、 その足を後退させることはなかった。

「昔話をするつもりはなかったが…これは、 昔俺を裏切った友が第1発見者である俺から奪い取ろうとしたものだ」

魔剣保有者はその魔剣を国に保管することで、 その見返りとして多額の報奨金を用意してくれると言う。 ガブラスの()友人は、 その報奨金目当てで奪おうとした…という事だろう。

「それから俺は『怒り』というこいつの触媒を偶然にも与え、 俺がこいつの保有者となった」

信用している友人から、 私欲のために手酷く裏切られてしまうこと程哀しい話はない。

「そうですか…ですが、 同情はしません。 君は今、 私達に牙を剥き、 私達はそれを折る。 それだけです」

「…ふっ、 そもそも同情など求めていない」

辺りも着々と戦闘を始めており、 激しい戦闘音が響き渡っていた。

「では────いきますッ!」

レイピア武器を使用する際に相手が剣の場合、有利を取れるものは、 突きを攻撃としない相手へのロングレンジだ。 腕を伸ばして突き出す攻撃範囲は、 通常の斬撃範囲とは比べ物にならない程に広い。 それが聖騎士長ともなれば、 音速を超える程の速さでの突きを可能としていた。

だが、 その音速をも超える突きを全て剣の腹で受け止めるガブラスは、 エレオノールの後方で何やら闘気を練っているキンリュウの姿を見逃さなかった。

「──ふんっ」

キンリュウへの攻撃をする為、 エレオノールの突きを剣の腹で受け流すことで、 キンリュウまでの道を開けさせる。

「行かせません! 『縮地しゅくち』」

すぐさまガブラスの前まで高速移動し、 再び道を阻む。

「はぁーっ! 『迅速刺突しんそくしとつ・舞』」

先程までの音速を超えた突き攻撃とは打って変わって緩やかにすら見えるその剣撃は、 再び剣の腹を前に構えてガードしようとしたガブラスの肩、太腿、 腕と次々に傷を負わせてゆく。

しかし、 ガブラスも何故確実に上からガードしているのにも関わらず攻撃が当たってしまうのか、 自らが傷を負う事に把握してゆく。

「成程な」

そう呟き、 1度後方へと引き下がる。 自分の傷口から垂れる血を指で撫で、 その血を喰羅怒へと撫で付ける。

「素晴らしい剣撃だ。 その見事な剣さばき…緩急かんきゅうを利用しているのか」

ガブラスの指摘に、 正解と言わんばかりにクスリと笑うエレオノール。

「まさか、 ここまで早く当てられるとは思ってませんでしたよ。 流石『闘神』と言う所でしょうか…。先程の連撃は、 緩やかな動きに、 音速をも超える突きを加えた技です。 緩やかな剣筋に集中させることで、 突き技を気取らせない…というのが真骨頂だと言うのに」

やれやれと首を振るエレオノールに対し喰羅怒の切っ先を向けて構え、 駆け出すガブラス。

「種が割れてしまったのなら恐るるに足りんっ!」

「そうなんですよ、 なので────ここからは交代です」

ガブラスがエレオノールへと攻撃を繰り出す1歩手前で、 縮地により戦闘を離脱。 そして、 エレオノールが今まで立っていた場所へと急に現れたのは、 時間稼ぎにより極限まで練られた闘気を纏ったキンリュウだった。 その存在に気付いた頃には遅く、 急に現れたキンリュウは既に腕を振っていた。

「食らうが良い…『一撃入魂』!!」

受け身も取れず、 今まで同様剣の腹でガードすることすら間に合わなかったガブラスは、 キンリュウの放つ一撃をもろに受ける。

「…っがは!?」

腹部に放たれた拳を瞬時に広げ、 衣服を巻き込んで再び握る。

「一撃で終わると思うでないぞ」

ニヤリを笑うキンリュウは、 掴んだ衣服を引っ張り寄せ、 右の一撃を放つために構えられた左腕をそのままガブラスの顔面へと打ち込んだ。 強烈な二撃目に耐えきれず、 遂にガブラスは喰羅怒を手放してしまう。 地面に落ちた衝撃でカランと乾いた音を響かせた後、 ガブラスが意識を失った瞬間に消えてしまった。

「…お前さん、 1体1でこやつに勝てる自信はあったか?」

気を失っているガブラスをそっと寝かせ、 エレオノールに問う。

衣服を利用して引き寄せた事により、 衣服が破けてしまっているガブラスの身体には、 凄惨たる傷の痕が無数にあった。

「正直に申しますと…ありませんね。 恐らく、 聖騎士団長の誰でも1体1では勝てないのでは…そう思ってしまいました」

自信を無くしてしまったかのように俯くエレオノールの肩を、 ぽんと優しく叩く。

「…わしもじゃ。 この傷…相当な苦難じゃったろう────っ!?」

「キンリュウさん! この魔力…」

その時、 急に増幅した魔力に反応し驚きを隠す間もなく振り向くと、 氷結の吹雪に身を包んだイオの姿が目に飛び込んできた。

「あの魔力の解放量…死にますよ!」

「やめろ!! 小僧!!」

イオの決死の解放を止めるために、 駆け出そうとした瞬間…身動き1つ取れない状態になってしまっていた事に気が付く。

「な…なぜだ…身体が──」

「──『支配』…」

キンリュウとエレオノールの身動きを封じていたのは、 先程まで気を失っていたガブラスだった。

「…もしもの時に…と、 5分だけ『支配』を…使わせて頂けるよう、 させていた…だいていた」

意識を取り戻した瞬間に『支配』をかけられてしまったせいで、 警戒する間もなく身動き1つ取れない状態にされてしまっていた。

「…くっ、 せめて声で……あっ!?」

再びイオに向けて声を発そうと試みた時だった。 生命力すら魔力に変換し、 今までにない程の威力のスキルを発動せんとしている背後に…もう1人アハトが立ち、 イオをニヤニヤと眺めていた事に気が付いてしまう。

…つまり、 今イオが対面しているアハトは──偽物だということだった。

「やめるのです!! イオ君!! 」

全力で静止する声も届かず、 イオは文字通り全身全霊、 決死の一撃をアハトの偽物へと放っていた…。

イオの生命力が尽きた頃、 ガブラスもまた、 事切れていた。


エレオノール・キンリュウ VS ガブラス


───────────勝者、 エレオノール、 キンリュウ。

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