第42話(クレア編)
「彼女はね、 僕が今回の目的のために団員を集めて回って旅をしていた時に見つけたんだよ」
「勿論初めて見つけた時は何の変哲もない『人形使い』の少女だったよ」
「その国では、 未だ貴族が奴隷を飼うことが法律で許されていたんだ」
「…そうか、 このことはもう話したんだね、 クレア」
「なら、 その先を僕から説明しようか。 嫌なことを思い出してしまうかもしれないから、 耳を塞いでおくといいよ」
「…そうか、 強い子だ」
「僕がその国を訪れたとき、 偶然彼女が僕にぶつかってしまったんだよ…いやいや、 謝らなくても平気さ。 何も気にしてはいないし、 むしろ、 そのお陰でクレアと出会う事が出来たんだから、 感謝しているよ」
「──話が逸れてしまったね。 そして、 その時の彼女の主人…いや、 飼い主…と言った方がいいのかもしれない」
「その貴族は、 お詫びとしてその場で彼女の衣類を全て剥いでいたよ。 なんの悪びれもなくね」
「僕はその時から、 腹のそこから湧き上がる怒りを押さえ込みながら上着を彼女に着せてあげた」
「初めての出会いはそこからだったね」
「でも、 僕も旅をしていたからね。 その国には長居するつもりもなかったから、 1泊だけさせてもらって早々に出発させてもらったよ」
「そして、 次の街に着いた頃に忘れ物をしてしまったことに気が付いたんだ」
「大切な本でね、 それを取りに帰ることにしたんだ」
「そのついでに、 もし彼女に再び会えることがあるならと、 そこの街で子供たちに人気のあるぬいぐるみを購入してね」
「渡そうと思っていたんだよ」
「…そう、 彼女が大切に抱えているこのぬいぐるみは、 僕からのプレゼントなんだ」
「察しがいいね、 勇者アラン君」
「そう、 運命にも再び会うことが出来たんだ」
「想像していた形とは違ったけれどね…ふふ」
「いやいや、 笑ってしまって申し訳ないね。 だって、 戻ってきてみればその国はほとんどの人が死んでいてね」
「操られているかのように闊歩していたんだよ」
「それをやったのが…クレアさ」
「どうやらあの後、 いつものように暴力を振るわれていたみたいでね。 僕が渡していた上着を取り上げ、 目の前で破いたみたいなんだ」
「今まで耐えていた痛みや恥辱が、 僕が与えた優しさによって完全に枷を壊してしまったみたいでね」
「その場で殺してしまっていた」
「その後、 彼女は『堕職』となってしまったみたいなんだ」
「彼女は根は優しい子なんだよ」
「だって、 堕職となってしまった人は本能のままに殺戮の限りを尽くす…なんて言われているけど」
「彼女の本能は違っていた」
「憎き貴族のみを殺戮対象として認識し、 自分と同じ境遇にいた奴隷の子供たちを解放してあげていたんだ」
「そうして堕職となった彼女を…僕が見つけた」
「もうバレていると思うから言ってしまうけど、 僕は『支配者』という職業でね。 触れた対象を支配することが可能なんだ」
「…おや、 その反応をみるに、 まだバレていなかったのかな? 」
「まぁいいさ、 別に問題はないからね」
「…そして、 堕職となってしまった彼女を支配し、 元の状態を維持させている…という訳なんだよ」
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そんなことが有り得るのだろうか…という疑問はさて置いておく。 何れにせよ、 目の前の少女クレアは、 堕職であり、 堕職でありながらもそれを押さえ込んでいる…基支配されているのだから。
「だからね、 大切な彼女を失う訳にはいかないんだよ。 勿論他の団員達も…おや、 ナナが倒されてしまったみたいだね」
そのイギルの言葉に、 反射的に他の戦闘している人達の方へ視線を向けると、 ナナと呼ばれた団員と交戦していたイチイとナイブスのみがそこにいた。
そして…前回ゼンと戦闘していた男と対峙していたイオ、 ガイア、 アベルの姿はなく、 そこにはアハトのみが立っており、 こちらに大きく手を振っていた。
「…ま、 まさか団長達が…」
たった1人に団長3人が負けてしまったという現実が、 理解出来ずに処理が追いついていない…。
「こちらもナナがやられてしまった…これでおあいこという事で、 クレアは殺らせないよ」
正直、 『顎』側はナナと呼ばれた人のみで、 こちらは3人殺されてしまっているので、 どこをどう見ても『おあいこ』ではない。
…だが。
「…モノ達じゃ、 勝てない…」
「だが、 こちらも被害がでている…団長達に顔向けできないっ!」
勝てないと分からせられている現実と、 勝たなければいけないという使命感に押しつぶされそうになっている時。
「ここで死ぬことはないっ! 好都合じゃ、 引け! 」
その時、 アランに声をかけていたのは、 未だ激戦中のオルフェウス・デウスだった。
「ゼンの友人に何かあったら、 わしらはゼンに顔向け出来ん」
アランは、 ゼンから2人は本当の祖父母ではないという話を聞いていたが、 オルフェウスの表情は本当は親子なのではないか、 そう思わせる程の表情をしていた。
「君たちの大将もこう言っている事だし、 どうかな?」
「……」
そうして、 アラン達はオルフェウスの指示に従う、 苦渋の決断をした。
モノ・アラン・キアラ VS クレア
──────────勝者なし。
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いつも読んで下さり、 ありがとうございます!
コロナのお陰…というと不謹慎ですが、 仕事に少し余裕が出来たのもあり、 来週はいつも通り18時に1本。 そして19時にもう1話分投稿するつもりです!
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