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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第39話

「お前はもう喋るな…俺が苦痛を与えて始末してやる」

「あっはは〜、 楽しみだなぁ」


土壇場での新スキルを発動しているにも関わらず、 それでもなおアハトは嘲る。 その余裕はハッタリではない事を、 先程までの戦いから嫌という程感じていた。 聖騎士団団長である2人をこうも易易やすやすと倒している事、 経験したことのないスキルでの攻撃や撹乱、 間違いなく格上だった。

今までイオは、 『天才』や 『神童』と持て囃されて来た。 そのせいで自信過剰となり、 自分が最強であると思い続けてきた。 勿論他の聖騎士団長も強い事は分かっているが、 未だ成人していないというアドバンテージをもっている事もあり、 最強を自負するようになってしまった。

しかし、 今立ちはだかる男は紛れもなく自分より強かった。

それなら、 せめて先にやられたガイアとアベルの為に…。

「はあぁぁぁあっ!」

身体の周辺に漂う冷気を操作し、 アハトへ駆け出したスピードを更に加速させ、 魔剣を突き立てる。 アハトはその一閃をナイフの切っ先で…止めた。 しかし、 イオの狙いは自分の魔剣をアハトのナイフとかち合わせる事だった。

「そのまま凍ってしまえ!!」

「…っな!?」

イオはまず、 アハトの脱出を防ぐために脚と地面を連結させたまま凍結させ、 魔剣の切っ先から全魔力を冷気に変換させる。

しかし、 放出する冷気はイオ自身も凍結していき、 その特攻にも近い行動を見た他の聖騎士団長達がイオの名前を叫んでいる。

「…なるほど、 決死の覚悟の自爆…ですか」

「あぁ…今の俺じゃお前に生きては勝てない。 ならせめて、 俺の命1つでお前を始末する!」

周辺にのみ発生している豪雪と、 痛みしか感じない程の冷気がイオとアハトを襲う。

もう、 脚の感覚がない…。

魔剣の柄を握る指は既に動かすことは出来ない。

息をする度に体内に入る冷気で肺が凍るような感覚に、 徐々に呼吸がままならなくなってきてしまっている。

「………っは……かはっ!」

酸素が回らず、 言葉すら出なくなっていた。

しかし、 感覚の無くなってしまっている指は、 それでも柄だけは離さない。


ガイアさん…アベルさん…。


やがて魔力も命も尽き、 イオは倒れてしまう。 倒れた衝撃で完全に凍結された身体は無惨にも砕け散ってしまった…。

アハトも完全に凍結され、 微動だにしていなかった。






「いやぁ〜、 まさか僕の()()()にそこまで全力を出してくれるなんてねぇ」


頭に血が登ってしまっていたイオは、 まだいた分身体に気付く事が出来なかった。

()()()()()のマジックは基本中の基本だよ? さーて、 僕も洞窟に戻ろうかなぁ」



『氷結の雨』イオ

『轟雷の牙』ガイア

『侵食の影』アベル VS アハト


──────勝者、 アハト






──────────────────


『黒百合の雫』イチイ

『白銀の翼』ナイブスVS ナナ


「…イチイ達も、 始める」

「そうだね、 僕も早く終わらせて帰らないと」


『黒百合の雫』イチイ。

黒いローブに全身を包み、 フードから覗く瞳と髪は黒く、 口元はマスクで隠されている。

身長はやや低めな少女のような見た目をしているが、 実年齢は25歳と、 詐欺まがいな風貌をしている。 職業ジョブは『暗殺師アサシン』で、 王国唯一の暗殺騎士団の団長だ。 基本的に相手から仕掛けられる戦を、 先手を打ち指揮を乱す役割を担っている。


もう1人の男性は『白銀の翼』ナイブズ。

湾曲した変わった形状の刃を自在に操り、 従来の剣術とは全く違う剣術を使用する。

風貌はイチイとは真逆の白髪白眼で、 銀色に輝く鎧に身を包んでいる。

職業ジョブは『聖騎士』で、 なるべくしてなったと言わんばかりの実力を誇っている。


「ふ、 ふえぇ〜…2体1なんて卑怯ですぅ〜…どうやって戦えって言うんですかぁ」

ナナの反応に、 困ったように頬を搔くナイブスは、 敵対している相手に提案をする。

「そうだね、 だったら…僕と1体1でどうかな?」

「…い、 いいんですかぁ!」

ナイブスの提案に頭を抱えるイチイ。 せっかくの有利性を捨ててしまう提案には慣れたような表情だ。

「…ナイブス、 いつも言っている」

「ごめんね、 でも女の子1人に聖騎士団が寄って集って攻撃を仕掛けるなんて、 僕はしたくないんだけど…」

戦略的に相手を圧倒したり、 情報的に相手を圧倒することは理解しているナイブスだが、 こと『数』において相手を圧倒することは認めていないのだ。

「出来れば女の子じゃなくて、 あっちの男性なんかだったらいいんだけど」

そう言って、 ナイブスは実像分身をしているアハトに指を向ける。

「あの男は、 イオ団長達が相手している。 問題ない」

「そうだね、イオ君達なら問題ないだろう────」

刹那、 ナイブスの顔辺りから剣戟が鳴り響く。

腕を蟷螂カマキリの鎌に、 両脚を飛蝗バッタに変形させて襲いかかっていたナナからの攻撃を、 涼しい顔をして愛刀『サザナミ』で防いでいた。

不意の一撃目を防がれた事に驚きつつも、 すぐさま後方へ移動する。

「あの見た目でも、 女の子…です?」

「う〜ん、 見た目で判断しては行けないよ? ちょっと気持ち悪いけどね」

顔や胴は人間、 両腕は鎌、 両脚は飛蝗の脚という、 見る人によっては気絶してしまう程に醜い見た目をしているナナは、 再び全身を人間状態へと変形を戻す。

「見た目より感覚がいいですね…さっきので殺るつもりだったんですけど」

「僕はあんまりやりたくなかったんだけど、 今の攻撃…君、 もう人を殺しちゃってるんだね」

そう言うと、 ナイブスは『サザナミ』とは違う剣を顕現させる。

「おいで、 『高波タカナミ』」

普段、 ナイブスは『漣』のみを腰に携えて生活しており、 聖騎士スキルによる『聖剣錬成』で『高波』を顕現させることが出来る。

つまりは────。

「二刀流…なんですね」

『漣』の刀身は30cm程の長さ程度しかなく、 つるぎというには短すぎる形状をしており、 そして刀身のうねりは細かくなっている。

対して『高波』の刀身は95cmと長く、 うねりは緩やかな形状をしている。

「そう、 僕は聖騎士の中でもあまり見ない二刀流の流儀を使っているんだ。 その中でも、 ここまで変わった剣を使うのは見たこと無いけどね」

太陽の光を反射し輝く二対についの刃を器用に回し、 『漣』を逆手さかて、 『高波』を順手じゅんてで構える。

「ごめんね、 どうやら僕は君を罰しないとダメみたいだ」

「初めから…そうして」

ナイブスの言葉に軽く嫌味を言いながらも、 イチイもナナを見据える。


「さて、 やろうか」

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