第29話
「これより、 グロリア王国、 『ローザアイズ』の調査を開始致しますッ! 今回の調査団を率いるのは、 聖騎士団『鉄壁の盾』団長ガイル!」
俺とアラン、 モノ、 そして事情を知ってしまったキアラの4人を含む総勢30名の聖騎士達が城の凱旋通りに集合し、 グロリア王の側近から調査開始の言葉を賜っていた。
以前ガイルは、 兼業のような形で聖騎士も一応やっている…というような言い回しで説明していたが…。
「ガイル…しっかり聖騎士団の団長じゃないかよ…」
じいちゃんに良く聖騎士団の事は聞いていたが、 聖騎士団に加入する事自体が困難らしく、 聖騎士見習いの段階から功績と信頼を積み上げ、 尚且つ実力も持ち合わせなければ聖騎士団の団長になどなれないらしいのだが…。
つまりガイルはそれら全てを兼ね備えているという事で間違いないだろう。 たかだか教師が国王に報告出来る訳ないと思っていたが、 これなら合点がいく。
名を紹介されたガイルは側近の指示の元、 声量拡張魔道具を使用して語り始める。
「鉄壁の盾団長のガイルだ。 あ〜…硬っ苦しい話は苦手だが、 近辺調査だからといって気を抜くな。 可能性としての話だが、 盗賊団『顎』が今回の近辺調査で現れるかもしれない。 もう一度言っておくが、 アイツらを侮るなよ。 では、 今からチーム編成と各チームのリーダー、 そしてチーム事の役割分担を話す────」
ガイルの指示の元、 俺達のチームはアラン、 モノ、 キアラ、 俺、 そして『沈黙の剣』団長のレーゼという男に決まった。
『沈黙の剣』は、 この王都ではかなり有名な聖騎士団らしく、 成果もかなりあるようで、 団長のレーゼは王都随一の剣豪で『剣聖』という2つ名が付いているらしい。
ただ、 腑に落ちない。
「は、 はじめましてぇ…僕が『沈黙の剣』団長のレーゼっていいますぅ…よ、 よろしくね…?」
寝癖だらけの黒髪に、 団長には見えないボロボロのジャージ姿をしており、 全く頼りがいが無さそうな風貌だという事だ。
「は、 初めまして…僕はアラン・シュートデル・ディッフィと言います。 お会い出来て光栄です、 剣聖様」
アランは胸に手を当て、 レーゼに向かって深々とお辞儀をする。
「そそそそんなっ! 『勇者』に選ばれた君に頭を下げられる程のものじゃないよぉ…団長だって、 団のみんなが僕を祭り上げてるだけなんだ…聖騎士団の志願も、 友人が勝手に僕の分まで志願して、 たまたま入団出来ただけなんだよぉ〜…」
アランの丁寧な対応に慌てふためきながらも自己嫌悪するレーゼ。
本人はたまたま入団出来たと言っているが、 そう簡単に聖騎士団に入団出来るはずもない。 それは聖騎士団最強と言われたじいちゃんから、 嫌という程聞かされたことだ。
俺達に実力を隠すための演技をしているのか…?
だが何の為に。
俺が色々考えていると、 急に後ろから頭を掴まれてしまった。
「ガハハハハ! ゼン、 お前は子供の癖に考えすぎだ。 安心しろ、 レーゼは元からこういうヤツだ」
「ガ、 ガイル…先生」
俺が悩んでいる所を見られてしまっていた様で、 どうやらチームの指揮を上げて回っている様子だった。
「済まなかったな…えぇと、 確かキアラだったかな? お前達ガキ共は危険を感じたらすぐに逃げていいんだ」
自分の場違い感に震えっぱなしのキアラに向けて、 巻き込んでしまった謝罪をするガイル。
「い、 いえ…ゼン君の頼みなら…私、 なんだってやりますっ!」
震える拳をギュッと握りしめ、 自ら不安を押さえ込んでいる。 普通の生徒ならば出来ないだろう。 人間は恐怖や不安と対面すると、 それを避ける傾向があるが、 それを自分で律することが出来るのは至難の業だ。 不安と恐怖すらも超える相当な覚悟が無ければ出来ないだろう。
「…あの日の、 お返し…まだしてない…」
変わらず無表情のモノだが、 その瞳には炎が宿っているかのようにメラメラと燃えていた。 撤退を余儀なくされた事が余程悔しかったのだろう…。
こいつの暴走は俺が止めてやらねば…。
「疑って申し訳ありませんでした、 俺はゼン・アルファです。 今日は沢山盗ませて貰います!」
「えぇえ!? 別に僕はお金持ちでも何でもないよぉ!?」
気にしていたってしょうがない、 団長まで付いている人だ。 それなりの鍛錬、 技術、 スキルを持っているはずだ。 俺はそれを観察するだけだ。
「────これより、 『ローザアイズ調査』を開始する!! 皆、 警戒を怠らず進めっ!!」
かくして、 作戦は開始されたのだった。
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「団長、 グロリア王国で作戦が開始されたようですが、 如何しますか?」
イギルの指示通り、 『顎』全員の収集を完了させたティンゼルは、 次なる指示を仰ぐ。
「そうだね、 みんなで動くと感づかれちゃうだろうから、 手始めに小隊3つくらいは潰しておこうか…あくまで僕達の目的は『観察者』であるゼン・アルファの確保。 それを邪魔だてされてはどうしようもない」
この、 どうしようもないという言葉は、 こちら側がどうする事も出来ない…という訳ではなく、 殺すしかないという意味を含んでいる事は団員全員が理解していた。
「団長、 しかし小隊事に聖騎士団長クラスの手練を配備しているらしく、 一筋縄ではいかないようですが…」
「成程、 それは予想していなかったです。 ありがとう、 ティンゼル」
少し背伸びをして、 ティンゼルの頭を撫でるイギル。 見た目は違和感しかないが、 本人であるティンゼルは至極の顔をしてその行為を受け入れていた。
「…けっ、 ティンゼルの野郎、 情けねぇ顔しやがって」
それに突っかかってきたのは団員No.5《ファイブ》のハスタだった。
「ハスタ、 君にもしてあげようか?」
「誰が頼むかよ! ………ほんとに?」
「ははは、 それは今回の作戦で成果を残せたらね…さて、 ティンゼルの情報通りならこちらもそれなりの誠意を示さなくてはね。 ハオ、 ガブラス、 ハスタ…お願い出来るかな?」
イギルからのご褒美が終わってしまった事に少ししょんぼりしているティンゼルはさておき、 イギルの前に名を呼ばれた3人が片膝を付いて整列する。
「イギルの坊ちゃんの思うがままに…」
無精髭を生やし、 この団の中では最年長である事は一目瞭然であるハオは、 いつもは気だるそうな態度を見せるものの、 イギルの指示であればどんな事でもして退ける腕を持っている。
過去にはこの団に入る前、 一国の殆どの聖騎士団を1人で壊滅させたという実力を持っている。
「では、 頼んだよ。 ゼン・アルファを見つけ次第連絡してくれ。 僕達もすぐに向かおう」
「いぎる!」
ハオ、 ガブラス、 ハスタが洞窟を出てすぐ、 蝙蝠をむしゃむしゃ食べていたニルヴがイギルを呼ぶ声が洞窟内でこだまする。
「どうしたんだい、 ニルヴ」
「はらへった! なんたかべたい!」
蝙蝠では魔力の補給にならなかったようで、 未だに空腹を訴えていた。
そもそも『竜族』と『人間』では内臓器官から何から何まで違っているので、 一体ニルヴが何を欲しているのか等分からないのだ。
仮に人間と同じような器官ならばと、 洞窟内の蝙蝠で腹を満たすことができるかも知れないと思っていたが、 どちらかと言うと『竜族』に近い内臓器官なのかもしれない。
「もう少し待っていてくれないか? そうしたら沢山食べさせられると思うよ」
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いつもご愛読ありがとうございます!
ふと思ったのですが、 『顎』の団員達のイギルと出会うまでの過去ストーリは番外編という形で書いていこうと思ってます!
もし良ければ、 過去ストーリを読みたいキャラがいればコメント等でお願いします!
良ければブックマーク等よろしくお願いします!




