第27話
研究室に無事に五体満足で到着し、 モノにアランから言われた『者』という単語について、 そして魔族と交戦した際に言われた『選ばれた』という発言について説明した。
「──という訳なんだが、 どうだろうか」
あくまで俺が言っていることは仮説に過ぎず、 点と点を結びつかせるためとは言え考えすぎなのかもしれないが、 一応は理にかなっていると思う。
「…確かに、 可能性としては…あるかも…」
モノが言うには、 国が管理している図書館に匹敵する、 職業についての書物全てを読破しているモノでさえ、 職業の名前に『者』が付くものは今まで『勇者』しか知らなかったようだ。
「因みに、 モノは『研究者』で研究したスキルを使う時は何か変化が起きるか? もし分かってるなら見せて欲しいんだが」
ウルスラに聞いた時は、 なんだかんだで結論を聞くことが出来なかったが、 本人ならば何かに気付いているだろう。
「…モノは、 お──」
「…お?」
「………ゼンの、 えっち」
「何故罵倒っ!?」
だが俺も鈍感ではないっ! 女性の中で『お』から始まるえっちな単語は…3つはある。
さて…どれだろうか。
どれにせよ確認することは難しそうだ。
「…うぅむ、 確認するのはやめておくとして、 だ。 その『お』に何が起こるんだ?」
「……紋が、 浮かびあがる…」
ふーん、 えっちじゃん。
「──ゴホン、 そろそろ本題に入ろう…俺が出した関連性の仮説に、 モノは少なからず『可能性』を感じたと言っていたが、 モノの言う『可能性』とやらの糸口は一体どこから出たものなんだ?」
恐らくモノは可能性のみで事を進めるほど楽観的では無いと思う。 さしあたって、 この線で調べるにしても俺の仮説よりも更に可能性…と言うよりも答えを導かねばなるまい。
「…昔、 お母様から聞かされていた、 御伽噺がある…」
そう述べ、 モノは母親から聞かされていたという御伽噺を語り始めた…。
遥か昔、まだこの世界が人間と魔族以外の種族が存在していた時代、 種族間同士の争いは絶えずにいた。
国土を増やす為、 奴隷を作る為、 食料を手に入れる為、 資源を占領する為…日々抗争が行われていた。 そんな中、 最下位に位置する種族こそ『人類』だった。
魔法は使えず、 空も飛べない。
だが、 人類は決して諦めず、 日々道具を作り出しては命からがら逃げ回っていた。
それを見兼ねた天界の神々は、 人類に『恩寵』を与えたのだ。
神々から与えられた『恩寵』のお陰で、剣の達人を生み、 武を極め、 魔術を使う事が出来た。
そして、 神々はその中から『9人』を選別し、 彼等に『律者』としての使命を与えた。
人類は『律者』となった選ばれし者によって先導され、 戦う術を身に付ける事で、 凄惨たる世界の中で生き延びる事が出来た。
年代を重ね、 種族間での抗争が落ち着いた頃には既に他の種族は滅び、 魔族と人類のみが生き残ったのであった…。
「──…これが、 モノが聞いた…御伽噺…」
「そうか…そう言う事か。 その神々とやらが齎したとされる『恩寵』が、 今で言う『職業』という事なのか」
「…だと、 思う…」
抗争を耐え凌ぐ為に与えられた『恩寵』が年代を重ねる事に現代に合ったものへと変化していき、 職業と呼ばれるようになったという訳か。
「もしその御伽噺が創作ではなく、 本当にこの世界の歴史を語るものだとするならば、 話に出てきた9人の選抜…それが俺達の職業なんだろう…」
ならば、 アランとモノ…そして俺の他に後6人は『律者』の職業を手に入れた人物が居るという事だ。 この学校の中には他に『者』とつく職業を持った生徒はいなかったと思うが…。 もし居たとしたら、 もっと目立っていても不思議ではない。
となると、 他の学校に通っている人物の可能性が高い。
「モノ、 この話は念の為まだ誰にも喋らないようにしておこう」
「…うん、 わかった…」
モノは俺の指示にこくりと頷く。
ふと研究室に掛けてある時計に目をやると、 時刻は深夜2時を過ぎてしまっていた。
「もうこんな時間か…明日も学校だし、 そろそろ帰るとするか」
俺との会話が余程楽しかったのか、 モノは少し表情を曇らせるも、 大人しく頷いた。
「今日はありがとな、 いい情報が手に入った事だし、 今度何かお礼をしなくちゃな」
「…な、 なら…毎日ここへきて…ほしい…っ!」
お礼、 という言葉にピクリと反応し、 普段なら聞かないであろう声量で俺に訴えかける。
「ま、 毎日って訳には行かないが…いつでも付き合うよ」
そういった矢先、 俺とモノのポケットに入っている通信魔道具から音が鳴り響く。
これは、 ガイルから持たされた通信魔道具で、 隣街の探索の決行日が決まった際に教えてくれるらしく、 2人ともポケットから水晶型の魔道具を取り出し、 そこに表示されている文字を目にする。
『探索決行日、 明日』




