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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第25話


さて、 これから行う不法侵…もとい、 モノと会う為に、 必ず守らなければならない事。

第1に、 戦闘を避ける事。

警備に当たっている聖騎士に攻撃しようものなら、 完全に『禁忌』対象だ。 なんせ防具にはグロリアの国旗が刻まれているという事は、 間違いなく我が国の兵だ。

第2に、 気取られない事。

もし見つかりでもしたら、 警備の聖騎士はものも言わずに剣を振るってくるだろう。

まぁ、 それが仕事だから仕方ないんだが…。

そうと決まれば、 完全隠密で行くしかない…が、 問題はまだある。 正面の門には警備の聖騎士の中でも屈強な聖騎士が2人も立っており、 どうやら正面からの侵入は厳しいだろう。 となれば、 壁をよじ登るか、 上から入るかの2択になるのだが、 賊の侵入を防ぐために『索敵』のスキルを持っている聖騎士が雇われている可能性が高い。

「…こんな時には、 こいつだな」

そういって、 俺は腰につけてあるバックの中から1本のナイフを取り出す。 モノが改良を加えた、 スキル融合短刀『バエリア』だ。

前回のアランとの決闘の際に使用した『スパーク』と『高速移動』だと、 音でバレてしまう…。

「う〜ん……あ、 そう言えば、 キアラの教室の時の女子生徒が使ってたスキル…『エア』を使えば音が遮断できるハズだ」

ナイフには前回と同じく『スパーク』と『高速移動』を融合させ、 俺自身には『エア』と『隠密』を付与する。

そして『索敵』への対処法は、 ここ3日間での訓練の途中で、 授業では教えられない特別な授業をしてもらったのだが、 その中に『索敵』への完全対策を教えてもらった。 その対策法は、 『索敵』に対して『索敵』をぶつけて相殺するというものだ。 『索敵』は、 その使用者にしか分からない微弱な振動を周囲に与える事で、 相手の居場所や動きを把握することが出来るスキルだが、 その微弱な振動に同じ振動を与えることによって無害化出来るらしい。 しかし、 この対策をするにあたって『索敵』が使用出来る職業ジョブに限定されてしまうものの、 その授業でたんと見せて貰ったので、 ありがたい事に俺には使える。

俺みたいに悪事に使われるから授業では教えないのだろう…。

ごめんちゃい。

なんだかガイルに申し訳ない気持ちが湧いてくるものの、 今は捨ておくとして。

これで準備は整った。

後は聖騎士達の目を盗むタイミングだが、 俺が今いる場所は正門からだいぶ左側に位置する木々なのだが、 幸か不幸か照明の付いている部屋の真下に2人の聖騎士が見張りをしている。 ならば下を向かせることが出来ればいい。

すると、 ちょうど微かに会話が聞こえていることに気が付いた。 耳を澄ましてみると、 どうやら給料が少ないだの、 嫁から貰うお小遣いが少ないだのと文句を垂れていた。

…聖騎士も家庭では尻に敷かれているのか。

しかし、 幸か不幸かは『幸』に傾いていた。

俺はすぐさまなけなしの金貨を取り出し、 『幻影捕縛陣』を応用し、 俺の影から影の手を発生させ、 その手に金貨を握らせた。

その影を、 木々や塀の影を上手く利用して屋敷の敷地に巡らせて、 聖騎士2人の目の前にその金貨を置かせた。

「──それでよぉ……ん? これ、 金貨じゃねぇか?」

「お、 おい…俺が先に気付いてたぞ! だから俺のだ!」

「ふざけんな! 俺が先に見つけたんだ!」

思惑通りに金貨を巡って口論を始めたので、 俺はこの気を逃さず直ぐに3階の窓ガラス目掛けてナイフを投擲し、 飛び込んだ。

幸いにも窓には鍵はかかっておらず、 窓を割らずに済んだので、 『エア』で音を遮断する必要も無かったようだが……。


「────え?」

そこに立っていたのは、 モノに容姿はそっくりな半裸の女性だった。 だが、 明らかに違う点がある。

胸が明らかにモノより巨大だった。

「──きゃ……っん!」

そりゃ突然窓から見知らぬ男性が着替えの途中に現れたなら誰だって叫ぶだろう。

俺はすぐさま口を塞ぎ、 叫ばれないようにしたのだが、 微かに間に合わずに響いた声に反応した周囲の聖騎士達がバタバタと慌てながら部屋の前に集まった。

「どうしましたっ!? ウルスラ様っ!!」

この巨にゅ…モノによく似た女性はウルスラという名のようで、 聖騎士達の口ぶりから察するにこの家の住人である事を物語っていた。

「…ウ、 ウルスラちゃん…この状況では信じて貰えないかもしれないけど、 俺は怪しい者ではないんだ…」

なんと説得力のない言葉だろうか。

手を拘束され、 口も塞がれ、 挙句の果てには自分は半裸。

この状況をみて怪しくない訳が無い。

「俺はゼンっていうんだけど、 モノに用があってきたんだ」

モノと家族関係ならば、 俺の話をしているかもという一か八かに掛けてみたが、 俺の名前を出すとピクリと身体が反応した。

ウルスラは少し深呼吸をして、 俺の手をトントンと叩く。 恐らく『手を離せ』という合図だろう。

俺は指示通りにゆっくりと口を塞いでいた手と、 拘束していたと手をを離すと、 ウルスラは俺の顔をじっと見つめる。

「ウルスラ様! ドアを開けてもよろしいでしょうか!?」

「何も無いわ、 大丈夫よ。 虫が1匹入ってきただけだから」

「さ、 左様でございますか…では、 わたくし共はこれで失礼致します」

そう言うと、 ドアの向こうで聖騎士達の足音が散らばってゆく。

「…それで、 レディのお風呂上がりを襲うなんて、 ここがどこかわかってやったの?」

「す、 すまん…灯りが付いたんで、 てっきりモノが研究をしているのかもと思っていたんだが…」

下着姿を恥ずかしげも無く仁王立ちをするウルスラだが、 こう見るとやはりモノと瓜二つだ。 違う点と言えば声はモノよりも少し高く、 お風呂上がりだからだろうが、 紫色しいろの長い髪を下ろしている。

そして何よりお胸が立派である。

「因みに、 モノ姉様はわたしの姉よ…全く、 ご学友だからってやっていい事とダメな事くらい分かるでしょ?」

仰る通りで。

「それにしても、 ここは3階の筈だけど…どうやって窓から入ってきたのかしら?」

見た目はお転婆のようだが、 やはりそこは血筋というか、 流石バエル家といったところだ。 気になった事は知らずにはいられないのだろう。

しかし、 こんな状況とはいえ俺にも言えない事情がある。 そこは曲げられない。

「…あまり人には言えない事情がありまして…」

「なら、 聖騎士達を今から呼んでくるわね♡」

「ごめんなさいすいませんでしたまじ勘弁して下さい」


曲げた。

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