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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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23/92

第23話

「ほ、 ほんとにびっくりしました…あはは…」

「本当にすまない…クラスの皆には俺から後で出来る限りの説明をしておくよ」

キアラを教室から連れ去った俺は、 訓練所の前まで逃げ仰せた後、 抱えていたキアラをゆっくりと降ろす。 いきなり教室に飛び込んできた男子生徒に抱えられて連れていかれ、 挙句の果てには公衆の面前で「俺と来い」などと叫ばれれば誰だって勘違いするだろうが、 咄嗟のことでそこまで頭が回っていなかった。

「誤解はそのままでもいいんですけどね… 」

「ん? すまん、 もう一度言ってくれないか?」

「な、 なんでもないよ!?」

小さくて聞き取ることが出来なかったが、 本人がなんでもないと誤魔化すなら、 あまり聞かれたくは無いのだろうと悟り、 これ以上の言及はやめておくとして…。

ここからが本題だ。

「キアラ、 1つお願いがあるんだが…いいか?」

「私で良ければ、 なんでも聞いて。 この前の盗賊に襲われた時のお礼もまだだし…」

良心に付け込むようで、 少し悪い気がしてきた…。 というのも、 アランの訓練相手に声をかける条件として出されたのは、 他言無用だけではない。 その相手も今回の部隊編成に加えなければならないという条件も課されている。 つまり、 俺は今からキアラを今回の出来事に巻き込もうとしている事になる。

「そう言ってくれて助かるよ。 でも、 説明を受けた後だと断る事が出来ないんだ。 それでも…いいか?」

ここまで年を押されれば、 誰だって断るだろう。

勿論断られたくて言っているわけではないが、 なにもキアラをわざわざ巻き込む必要など無いのもまた事実だ。

「…わざわざそこまで言うって事は、 それ程重要な事に関わってしまっているってことなんですよね? そして、 ゼン君は私に手伝って欲しい…なら、 それに答えるのが乙女ですっ!」

あやふやな俺の提案に、 ぐっと両手を握りしめ、 笑顔で答えてくれるキアラ。

「あの時、 私はなにも出来ずに2人の足を引っ張ってしまって…それが悔しくて、 悲しくて…もうそんな思いはしたくないです!」

その固く握りしめられた拳は微弱に震えていた。 それは悲しみと悔しさからか、 それともこれから俺に告げられる内容への恐怖からかは分からないが、 震える拳を見て…俺は『強い』と思った。

誰にでも出来る事ではない。 命まで取られかけた過去に背を向けず、 それに立ち向かおうとする心は誰にでも持てるものでは無い。

「キアラは、 強いな」

以前の魔族との戦闘の時に、 復讐心に駆られた俺とは違う。 恐らく、 その心の強さがそのまま力へと変換されているのだろう…。

「私に出来ることならなんでもしますよ!」

そう言って、 笑顔を俺に向けてくれるキアラが眩しかった…。

「本当にありがとう…。 これから言うことは国家機密に関わってしまうから、 他言無用で頼む」

「はいっ!」

そうして俺は、 キアラに先日の『アギト』との出来事を話した。



「成程、 そんな事が」

「あぁ…だから、 聖騎士の部隊を取り入れた小隊を結成し、 付近の調査を行う事になっているが、 またいつ襲ってくるかわからない…だから、 生徒からはあまり参加はさせる事が出来ないんだけど、 実力のある人ならばと許可を貰ったという訳だ」

事の発端、 アランへの訓練、 そして今後の見通しを話し終えた俺は、 静かに訓練所の扉を開ける。

「…でも、 ゼン君はひどいですね」

「…え?」

「だって、 女の子を攫っておきながら、 他の男の子の相手をしろだなんて…ふふっ、 埋め合わせは必ずして下さいね!」

長い金髪を揺らしながら、 小悪魔のように笑うキアラは、 俺が開けた扉の先へと走っていってしまった。

「…じいちゃんの気持ちが分かった気がする。 女生には勝てないなぁ…」

今後の俺の人生に不安を抱きつつも、 駆けていくキアラを追いかけて訓練所へと入った俺は…驚愕した。

そこには全身に傷を負いつつ、 やっとの思いで立っているアランの姿があったからだ。

「…や、 やぁ…遅かったね…ゼン…く、 ん」

そう言ってアランは、 自らの身体を支えていた剣すらも握る事が出来ずに倒れ込んでしまった。

その奥には、 モノが魔法陣を展開した状態で立っていた。

「え、 えぇ〜っと…」

状況が掴めず、 キアラは頬を掻きながら俺の方を見る。

「モ、 モノ? これは一体…」

俺とキアラに気付いたモノは、 展開していた魔法陣をキャンセルさせ、 てくてくとこちらに歩いてくる。

「…頼まれて、 やった…」

「ボコボコにしてくれとでも頼まれたのかよ!? とりあえず、 回復させてやってくれ…」

アランの事だ。 俺の帰りを待つ間も特訓をしようと思い、 モノに手加減無用とでも言って頼んだんだろうが…。


「…モノ、 やり過ぎだ」


──────────────


本日は19時にももう1話分投稿します!

自宅でゆっくり読んでください!!

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