第19話
俺の職業『観察者』は、 一度見たスキルを習得する事が出来る。 その上限には限りはなく、 職業固有のスキルから、 オートスキルまでも習得する事が可能だ。 そして、 一度習得したスキルに使用される魔力は一定であり、 如何に強力であろうと…如何に微弱であろうと関係ない。
ただし、 強力なスキルは一度見ただけでは完全な習得とはいかずに威力が落ち、 とても実践レベルとは言えない。 強力なスキルであればある程、 そのスキルを見た回数が必要となる。 更に、 この観察者で習得したスキルを使用する際には、 俺の眼は『重瞳』と呼ばれる状態に変化してしまう。
──俺は、 今この場に残っている全員。
じいちゃん、 ばあちゃん、 大魔道士のお姉さん、 モノ、 アラン、 ガイル、 国王に説明した。
じいちゃんとばあちゃんと大賢者のお姉さんは既に知っている内容なだけに、 殆ど反応は無かったが、 モノは忘れまいと必死にメモを取り、 ガイルとアランは驚愕していた。
「…な、 成程なぁ…そりゃあ職業を隠す訳だ」
俺の説明を受けたガイルは、 入学時の戦闘試験での出来事を思い出しているのだろう…。
「剣士なんかじゃねぇとは思っていたけど…しかしまぁ、 よくそんな職業を持ちながら悪用しなかったな」
教師としては有るまじき発言だが…。
この職業ならば、 ほんとにそんなことすら可能なのだろうと、 俺もつくづく思っていた。
…もし、 俺がじいちゃんとばあちゃんからも助けて貰えずに1人で孤独に過ごしていたなら、 そんな事も考えたかも知れない…が。
「じいちゃんとばあちゃんは、 そんな事望んでいないので」
そう言って2人に目をやると、 にこりと笑いながら小さく頷く。 じいちゃんに限って言えば、 瞳すらも潤んでいる。
「…流石ゼン君だよ、 僕ならその力に驕れるかもしれないな…しかし、 やっとの思いで君の職業を知ることが出来たんだ…ここはどうか、 一つ手合わせ出来ないかな?」
冗談交じりの言葉の後に、 恐らくこれが本題だろうと思わせる決闘の申し出。
幾度となく巡り合わせたチャンスを尽く逃してきた今だからこそ、 ここしかないと思ったのだろう。
「作戦会議の前に、 俺の実力をみたいって事かよ。 魔族戦での借りもあるし、 じいちゃん達にも俺の成長を見てもらうきっかけにもなるし────いいぜ、 やろう」
思わぬ俺の返答に、 呆気を取られた表情になるも、 すぐに表情を戻すアラン。
「まさか、 本当に受けて貰えるなんて思ってなかったよ…」
「ならば、 ここからはわしが取り仕切ろう」
そう言って、 今回の決闘を受諾したのはじいちゃんだった。
じいちゃんが提示したルールはこうだ。
1体1の対面で行い、 一撃ずつ好きなスキルを使用する。 先攻は攻撃系スキル、 後攻は防御系スキルを使用する。
防御系スキルを突破し、 先に相手にダメージを与えた方が勝利とする。
「…これは、 申し訳無いけど僕の方が有利みたいだね」
今回の決闘のルールを聞いて、 勝利を確信したのはアランだった。
確かにSランクの職業には高威力のスキルが多数存在する中でも、 『勇者』は頭1つ飛び抜けている。
だが、 アランが自信を持って「勝てる」と言っている理由はそれだけでは無い…。
「勇者固有スキル『覇王道』だろ?」
「…さ、 流石だね…そこまでお見通しとは」
自信の理由となる真髄をズバリと言い当てられ、 軽く落胆する様子のアランだった。
「…『覇王道』…?」
そう疑問を投げかけてきたのは、 以外にもモノだった。 少し前まで『勇者』には興味が無いと言っていたが…初めて聞く単語に『研究者』としての開拓心は止められないようだ。
「『覇王道』ってのは、 神話に登場する『神器』を顕現させられるスキルで、 アランがぽんぽん出してた『エクスカリバー』もその一つだ…つまり、 強力な武器は幾らでもあるって事だよ」
「それなりに魔力を使ってしまうけどね…」
俺の説明に補足を入れるアラン。
「そこまでの知識があるって事は…もしかして、 ゼン君も使えるのかな?」
「……いや、 無理だった」
どうやら固有スキルの中でも特別な様で、 俺には模倣出来なかった。
無駄話もこれくらいにして、 俺とアランはコイントスで先攻後攻を決めることにし、 結果アランが先攻となる。
規模が規模なだけあり、 俺たち以外の全員の魔力を結界壁に変換する魔道具を使用し、 訓練所を何重もの結界壁で覆う。
「…結界壁の準備も出来たみたいだし…いつでもかかって来いよ」
「正式な決闘で手加減する程、 僕も失礼をするつもりは無いよ…」
「正式…ねぇ」
つまり、 魔族戦の前の6対1の決闘は手加減していた…という事だろう。
…そうでなくては決闘を行う意味がない。
俺が決闘を承諾した理由は、 言わずもがな強力なスキルの取得だが『覇王道』の固有スキルが手に入れば儲けもの、 あわよくばまだ俺の知らない勇者スキルを取得できるかも知れないからな。
「お互い準備は出来たようじゃな……では、 始めっ!」
じいちゃんの開始の合図の瞬間、 アランは手始めにいつもの如く『エクスカリバー』を顕現させる。
「────はぁぁッ! 『時断剣』」
アランは顕現させたエクスカリバーを天に翳し、 その剣を一気に振りかざす。
『時断剣』は『顎』戦でアランが使用した斬撃を飛ばすスキルだが、 あの時よりも威力もスピードも格段に違う…。 恐らく万が一にも俺に当たらないよう、 当たってしまったとしても致命傷を与えない様に制限していたのだろう。
その制限を今は解除し、 文字通り全力で攻撃している。 ならば、 それに答えるのが礼儀というものだろう。
「──『消力』」
俺は片手を前に出し、 正々堂々アランの攻撃スキルを受け止めた…否、 消力した。
衝撃波となって飛んできた斬撃は尽く霧散し、 先程まで何も無かっかかのような静けさをつくる。
「……あれでも僕の中では結構強い方なんだけどなぁ」
『消力』は本来は存在しないスキルで、 『拳聖』であるばあちゃんのオリジナルスキルだ。 相手の攻撃に対して同等の力の衝撃波を与える事で、 その衝撃を霧散させるスキルである。
「あれは私の…でも、 教えた覚えは……」
「勿論教わってないよ、 じいちゃんと喧嘩してる時に使ってたでしょ?」
そう、 俺は『観察者』らしく教わっていないスキルも幾つか習得する為に『観察者』の職業を与えられてからは、 じいちゃんとばあちゃんと生活している時は常に神経を張り巡らせて生活していた。
「……大したもんだな、 わしらの喧嘩から学んでいたとは」
「だからこそ、 あの子はその職業に選ばれたのかもしれないねぇ…」
しみじみと俺の成長に浸っているところ申し訳ないが…次は俺の番だ。
「さて、 次は俺が攻撃する番だけど…モノ!」
急に名指しで呼ばれ、 一瞬ビクッとなったモノ
だったが、 チラリと大賢者のお姉さんを一瞥した後すぐにいつもの無表情に戻る。
「…なに…?」
「念の為、 アランの後方に衝撃を吸収する物を生成しておいてくれ!
────今からいいもの見せてやる」
ずっと試してみたかったことがある。
『拳聖』のばあちゃんが生み出したように、 観察者もオリジナルスキルを生み出せるのではないか…と。
「今から使うのは…俺のオリジナルだ」




