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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第15話


深夜0時ちょうど。

依頼された街を目指していた俺とモノは、 街灯もなく、 暗闇だけが広がっている道を歩いていた。 モノが事前に研究しておいてくれた『心眼』のスキルによって、 暗闇であろうと周囲を感知出来、 問題なく進むことが出来ている。

さらに、 モノ特製魔道具のローブによって認識を阻害されている俺達は、 傍からは完全に闇に溶け込んでいるのだろう。 本来ならば魔獣や野生動物に襲われてもおかしい話ではないが、 何者からも見つかっていないのが証拠だ。

任務クエストに記載されていた情報によると、 盗賊団が街を襲ってくる時間帯はだいたい深夜2時頃のようなので、 まだ大分だいぶ余裕がある。目的の街まであと15分程で到着する予定なので、 盗賊団が動き始める前に作戦を立てておく必要がある。

「モノ、 街へ到着する前に少し作戦を立てておこうか」

今回の任務クエストは今までの模擬戦とは違い、 深手を負ってしまう可能性もある任務クエストだ。 いくら学校側が受諾した依頼とはいえ足元を掬われてしまえば…殺されてしまう可能性だってある。

俺の提案にモノはコクリと頷き、 少しだけ歩くペースを落す。 任務クエストの内容書きには、 盗賊団の名は『アギト』という名で知られており、 盗賊団のエンブレムはドラゴンの下顎のような紋様らしい。 団員は3人で構成されており、 詳しい職業ジョブは不明の様だった。

詳しい情報がない以上、 対面での戦闘は避けた方が良いだろう。盗賊と言うからには、 盗賊シーフ強奪スティーラー暗殺師アサシン等の、 いわゆる禁忌違反の例外に当たる職業であることには間違いないはずだ。 でなければ盗賊団なんて事は出来ない。

直接戦闘を避けることを第一に考えると、 模擬戦同様に遠距離からの凍結が1番手っ取り早く済むだろう。

こうしてモノと作戦会議を行っていた時…。

ピクリとモノが何かに反応する。

「…どうした?」

「…人が……いる…」

『心眼』を使っているモノにしか把握出来ておらず、 俺からは何も捉えることはできていない。

既に俺が模倣出来ている『神眼しんがん』は、 名前こそ似ているがスキル内容は違い、 神眼は遠くを見通す事が出来るだけであって、 暗闇で使ったところで何も見えない。

認識阻害のローブのせいもあり、 モノの心眼が上手く模倣出来なくなってしまっているので、 ここはモノの指示に従うとしよう。

「…人数は…5、 違う…6…」

6人、 ということは『アギト』ではないと思うが…人数を確認したにも関わらず、 モノはずっと警戒態勢をとっている。

確かに、 ここの近くには依頼された街しかなく、 任務クエストを依頼する程に難儀なんぎしているなら、 こんな時間に街の住人が出歩くのは危険過ぎる。

「街まで少し急ぐか? それとも、 1度戻って報告するか?」

もしかすると、 『顎』が街の住人が出した任務クエストに気付き、 それを警戒して別の盗賊団を雇っている可能性だってある。 そうなれば難易度がかなり違うだろう…。

「…まって……」

人差し指を唇にあて、 静かに という合図を送るモノ。 その時にこちらを向いてくれたお陰で、 モノの瞳を直視する事が出来た。

つまり──

『魔術師スキル:心眼 を獲得しました』

すかさず俺も『心眼』を使用し、 モノがずっと向いている2時の方向に目を見やる。

「なんだあれ……」

俺の目に飛び込んできたのは、 先頭にドラゴンの下顎らしき紋様が施されているローブを羽織っている3人。 そして、 その後ろには屈強な大男2人に挟まれている、 蛇の尾のようなものが腰から出ている銀髪の少女だった。

変身士ヴァリアントならば反撃して逃亡出来そうなものだが…その様子もない。 ましてや何かスキルで拘束している訳でも無さそうだ。

「…街から攫った、 人質…かもしれない…」

しかし任務クエストの内容に『人質の奪還』は含まれていなかった…。

考えれば考える程分からない。

「…一旦、 街に行く…」

「分かった、 アイツらよりも先に街に到着しよう…モノ、 『隠密』を使ってくれ!」

ここまで来たら形振なりふり構っては居られないだろう。

「ちょっと失礼!」

「……っ!?」

モノが『隠密』を使用した事を確認し、 俺はモノを背中に担ぐ。

急な俺の行動に驚くも、 策があっての行動だろうと認識してくれているようで抵抗は無かった。

「……走るぞ、『加速』!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

高速移動系スキル『加速』は、 本来ならば他人にかけることも可能だが、 まだ俺は加速を複数かけられるほどの熟練度はなく、 1つに対して使用することしか出来ない。 故にモノは担ぐ他なかったという訳だ。

声にならない叫び必死に我慢し、 俺の背中にがむしゃらにしがみつくモノ。 このペースなら、 元々15分で着く距離なので、 5分程度で到着出来る筈だ。

「…はぁ、 はぁ、 はぁ…どうだ、 バレてないか?」

呼吸を整えるためにも、 1度街のすぐ近くの森に隠れて相手の行動を伺う。

「…どう、だろ…気づいてるか、 気づいてないかは…分からない、 けど、 歩くペースは、 変わってない…」

俺達が元いた場所とそこまで大差ない距離なので、 あそこからここまではあと15分程はかかるという事になる。

「…よし、 呼吸も整った。 今のうちにとっとと街に──」


「────ッゼン!?」


今までに聞いた事ない程の声量を出したモノには驚いたが、 それ以前に急に突き飛ばした事に驚いた。

しかし、 その意図は直ぐに俺の脳内で理解する。

俺を突き飛ばすために伸ばした腕には、 赤黒く鈍い光を放つナイフが突き刺さっていた。

そして、 そのナイフを投擲した張本人は、 すぐ近くの太い木の枝に肩肘を付いて横たわり、 同じデザインのナイフをプラプラと揺らし遊んでいた。

俺はすぐにモノを抱き抱え、 少し距離を置いた木の影に隠れながらゆっくりとモノを下ろす。

「モノッ! くそ、 なんで庇った!?」

俺はすぐに突き刺さっているナイフを抜き取った後ローブの端を破り、 その切れ端で止血させる。

「…気付いて…なさそうだった、 から…」

自分の怪我など二の次かのように語るモノ。 しかし、 しっかりとその痛みは伝わっており、 時折一瞬だけ顔を歪める。

「お〜い…隠れてないで出ておいでよぉ」

ナイフを投擲した超本人の男は、 未だ木からは降りずにそのまま声をなげかける。

そして、 モノの腕から引き抜いたナイフには『顎』のエンブレムが彫られており、 それはあの男が『顎』の団員だということを示している。

…何故だ、 あの時見つけた6人のうち、 既に『顎』の団員は3人確認出来ていた。 これでは任務クエストの内容自体が間違っている…。

もしくは……。

()()()()()()()()()()()()という可能性が出てくる。

「…立てるか、 モノ」

「…大、 丈夫…」

モノも俺のせいで負傷していまい、 相手が今何人いるのかすら分からない状況なら、 逃げるが先決だ。

「俺がモノに『加速』をかける。 そうしたらすぐに学校まで全力で走るんだ…」

俺の指示に静かにコクリと頷くモノ。

まさか、 ここまで最悪な事態になるとは思ってもみなかった…。 ひとまず俺はモノに『加速』をかけ、 いつでも作戦に移せるよう準備しておく。

「ねぇねぇ〜、 そろそろ出てきてくんないかなぁ…僕も早く仕事は終わらせないと怒られちゃうんだよねぇ」

その時、 ヒュンと風を切る音が聞こえ、 直感的に頭を下げる。

タンッ! という音が頭上でしたかと思えば、 先程モノの腕に刺さっていたナイフと同じデザインのものが木に刺さっていた。

…軌道を自由自在に操れるのか?

そうでなければ先程の位置からでは、 絶対にこの場所に刺さるのはありえない…。

「モノ、 俺が合図したら…すぐに駆け出せ」

「…………(コクリ)」

この囮のような作戦があまり気に食わない様だが、 これが現状最善手であることに変わりはない。 それをモノも分かっているのだろう。

「よし…3…2…1……行けっ!」

俺は『顎』の団員の男の方角目掛けて駆け出し、 モノはその逆方向へ駆け出した。

「へぇ〜、君…囮になるつもりなの?」

自分の目の前にやってきた俺を見るや否や、 諦めて投降してきたとでも思っているのだろう…。

「囮? ハナっからお前に負けるつもりで出てきてねぇよ…俺にはまだやらねぇといけねぇ事が沢山あるんでね…」

ローブの下に拵えている剣を抜刀し、 団員の男へと刃を向ける。


「さぁて…いっちょやりますか」

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