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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第12話

『決闘』

それは教員免許を所持し、 国から正式な軍として登録されている教師のみが許可することの出来る制度で、 生徒同士の争い事の対決の際に用いられることが多い制度だ。

そして、 この決闘には重要な点が2つある…。

1つ目が、 お互いが勝利した際、 相手に1つ命令ををする事が出来、 決闘で負ければ相手の命令を絶対遵守しなければならないという点だ。

2つ目は、 直接的な『死』の命令は『禁忌違反』に当たるが、 場合によっては死んでしまう程度なら『禁忌違反』には当たらない…という点だ。



「…今から勇者おまえに、 正式な決闘を申し込む」

その台詞を聞き、 アランが珍しく落胆したかの様な表情になり、 ため息をく。 恐らく『勇者』の職業ジョブと言うだけで既に幾何回と決闘を申し込まれていたのだろう…。

そういう所を見てしまうと、 アランには悪いが『剣士』と名乗っておいて良かったなぁとつくづく思ってしまう。

くわばら、 くわばら。

「決闘は別に構いませんが、 生憎この場に教師はいませんよ…」

そう、 決闘には必ず2つの条件をクリアしている教師が、 最低1人は必要な為、生徒が勝手に申し込んだ決闘は成り立たない。 故にただの暴力行為になり、 『禁忌違反』だ。 流石にそこまでの愚行を行うがためにわざわざ俺達を連れてきた訳ではないと思うが…。

そう思っていたのも束の間、 アランへの返答の代わりと言わんばかりに制服のポケットから一枚の紙を取り出し、 それを俺たちに見せつけてくる。

そこには、 『決闘許可証』と記載しており、 誰のかは不明だが教員のサインが記入してあった。

「これは俺達がいつでもどこでも決闘を申し込む事が出来、 それが正式に受諾される許可証だ」

「…そういうことか」

「ん? 何がだ、 ゼン」

早くぶちのめしたくてワクワクが隠せていないイグニスだが、 やはりこの状況を理解出来てはいなかった。

「あいつが『決闘許可証』をもってさえいれば、 それが()()()()()()()()()()()正式に受諾されるって事…」

例えそれが6対1の決闘と言うルールを設けたとしても、 受諾されてしまうということだ。

「なんだよそれっ!そんなルール決められちゃあ、 俺はぶちのめせねぇじゃねぇかよ」

戦闘する気満々で付いてきていたイグニスは、 不満を隠すことなく全て態度に出していた。

俺が想定していた状況になる事はアランも予想済みのようで、 既にいつでもスキルを発動出来る準備を整えている様だ。

「…分かりました、 どうしても回避出来ないのであれば、 その決闘……受けます」

その言葉を待っていたと言わんばかりにニヤリとほくそ笑む先輩。 恐らく今まで『勇者』との決闘は行ったことがないのだろう。

「俺の名前は『ガウラ・ディストアウス』決闘ルールは6対1。 先に戦闘不能か降参した方が負けだ────始めッ!!」

急に始まりの合図を出した、 ガウラと名乗った先輩の声に合わせて、 取り巻き達も一斉に中心にいるアランにスキルを繰り出す。

俺の『観察者』の特性上、 一度に複数認知してしまうと模倣することは出来ないので、 取り巻きたちが何のスキルを使用しているのかまでは把握出来ないが、 雷の槍、 火の矢、 氷の弾、 風の刃と、 多種多様なスキルをアランに向かって一斉射撃している。 見たところ近接格闘が2人、 残りの4人が遠距離攻撃スキルで支援…といった所だろうか。 なまじ授業を受けているだけに、 実に連携の取れた攻撃陣だと言えよう。 確かにこれでは、 アランの他に決闘を申し込まれた生徒達には一溜りもないはずだ。

しかしその猛攻を、 アランは即座に『エクスカリバー』を顕現させ、 その一振りの風圧で消滅させる。

「…チクショウ、 ディュッセ! 捕縛だ!」

ガウラと名乗ったリーダーからの指示により、 ディュッセと呼ばれた1人が別のスキルへと変更する。

「これでもくらえっ! 『幻影捕縛陣げんえいほばくじん』!」

『幻影師スキル: 幻影捕縛陣 を獲得しました』

俺が『観察者』の特性により、 スキルを獲得した事でそのスキルの内容を把握することが出来た。 本来ならば対象の影を操作し、 動きを封じるスキルのようだが、 捕縛バインドは状態異常効果のスキルなので『強者の意志』により完全に無効化されている。

「……な、 何故だ!?」

「…ちっ、 使えない奴らめ、 こうなったら…『顕現せよ、 血剣レーヴァテイン』!」

ガウラがスキルを発動すると、 アランのエクスカリバー同様、 地面に魔法陣が現れ、 そこから1本の剣が現れた。

「…なっ!? レーヴァテインだと!?」

この決闘を暇そうに見つめていたイグニスが、 レーヴァテインの名前を聞いた途端に目を見開き、 驚いたような反応をする。

「あの剣、 知っているのか?」

「あぁ、 レーヴァテインってのは、 別名呪殺剣(じゅさつけん)と言われている剣だ。 その剣の効果は、 ()()()()()()()()()()()だけ威力の増す剣だ」

人を切った数だけ威力の増す剣、 か。 確かに厄介ではあるが、 相手はアランのみ。 それだけならばそこまで慌てる必要は無い筈だが、 俺の考えを汲み取ってか、 すぐにその答えは判明する。

「『切った数だけ威力が増す』ってのは、 あの剣の力の一部分だけなんだ」

顕現される剣には、 いくつかのスキルがある事はアランから聞いている。 エクスカリバーには、

どんなものでも切ってしまう『切断』という効果、 そして魔族、 魔獣に対して有効な『聖』の効果があるらしい。

「本来の効果は、 その剣で切った対象の傷口を悪化させる『腐敗』なんだ。 あれに1度でも切られてしまえば、 その傷は一生治らないどころか…最悪二度と普通の生活すらままならなくなってしまう……」

「…そんな危険な剣を、 どうしてアイツが持っているんだ…」

そんなもの、 一生徒が扱っていい代物では無い。 本来ならば国が厳重に保管しておくか、 破壊するかの二択だろう。

「…確か、 5年前に国宝倉庫が魔族に襲撃された事件が起きていた。 もしかすると、 その時魔族に奪われてしまっていたのかもしれねぇな…アラン! その武器はやべぇ! とっとと降参するか、 決闘を終わらせろ!」

イグニスの焦りを感じ取ったアランは、 目線はレーヴァテインから外さずに軽く頷く。

「その剣について、 色々と聞かなければいけないみたいだね…早急に決闘を終わらせてもらおう」

国が保管しておいた剣なだけあって、 アランも『切断』を使用出来てはいない。 しかも、 レーヴァテインからの斬撃を完全回避しつつも、 周りの攻撃スキルが邪魔をしており、 あと一歩の所で一撃を与えられない…。

決闘で決められたルールには絶対厳守だ。 俺達が加入した途端敗北が決まってしまうので、 今の俺達にはただ見守る事しか出来ない…。

「…俺、 誰が教師を呼んでくる。 ゼンはアランを見ていてくれ、 ついでにコイツも預かっていてくれ」

イグニスは、 少しでも速く移動するために大剣を俺に預けると、 『縮地』を使用し、 高速でこの場から遠ざかっていく。

すぐにアラン達の方へ目を向けると、 アランを含む全員が硬直状態になっていた。 そしてその原因はすぐに判明した。


ガウラから、 異常なまでの『魔素』が溢れ出していたのだ。


「…どういうことだ?」

『魔素』は、 魔獣や魔族にとっての生命エネルギーそのもので、 魔素が濃く、 多ければ多いほどより強い魔族になれる。 魔道具に魔石を使っているのも、 魔石には魔素を取り込む作用があり、 人間には必要なく、 かつエネルギー源として使用できるからだ。

しかし目の前の光景では、 人間から魔素が溢れている…という訳だが。

『…◼️◼️◼️◼️◼️◼️、 ◼️◼️◼️◼️…』

不吉で、 全く聞き取れないその声は、 アランと対峙しているガウラの口から発せられた言葉だった。

「これは…魔族の言語か」

アランにも解読は出来ないようだが、 それが何の言語かは理解出来ていた。

血剣レーヴァテインといい、 この現象といい…推測されるのは、 何らかの方法でうちの生徒の身体を乗っ取り、 国宝倉庫から手に入れたレーヴァテインを使って、 人間を攻撃しようとしていた…ということだろうか。

『観察者スキル: 言語解読 を獲得しました』

その時、 初めて『観察者』としてのスキルを獲得した。 スキル名の通り、 相手の言語を自分の言語へと変換してくれるようで、 そのお陰でガウラの身体に乗り移っている魔族の言葉が理解出来るようになった。

『…目的は達成した…ふむ、 やはり人間の身体は脆い、 そろそろこの身体も崩壊を始め出す頃か』

目的は達成した…?

未だ死人は出ておらず、 近くの街も平然とした空気のままだ。 人を殺すことが目的では無い、 という事か?

「…アラン、 こっちに来てくれ」

「…あぁ」

俺の声に反応し、 エクスカリバーはそのままの状態でこちらへ戻ってくる。 取り巻き達は未だどうすればいいか分からずに()()()いでいる。

しかしなんと説明しようか、 この際アランにも事情を説明してしまった方が早いのは確実だが、 じいちゃん達との約束で、 他の人にはバレないようにと言われている…。

……しかし、 背に腹はかえられないだろう。

ここで死んでしまえば元も子もない。 相手は魔族だ。 強大で邪悪な存在で、 とても好戦的、 という情報しか知らない今は、 少しでも被害を抑え、 あわよくば殲滅させられる方を優先すべきだ。

「アラン、 実は俺────危ないっ!」

間一髪の所で、 魔族がアランに向けて放った攻撃を回避する。

放たれた黒い炎は、 直撃した大木を焼き付くし、 すぐに灰と化してしまった。

「…た、 助かったよゼン君…」

『んん、 貴様…まさか我の言葉が聞こえているのか?』

そう、 魔族が攻撃をする直前に言った、 アランを狙う言葉が無ければ避けられなかっただろう。

身体を乗っ取られているガウラは、 眼を紅く輝かせ、 溢れ出る魔素を利用し羽根のような形状を作り出している。

「…な、 なんだ今の……」

「に、 逃げろぉぉ!」

魔族の攻撃に悲鳴をあげながら、 取り巻きたちは我先にと逃げ出すが、 魔族はそいつらには全く攻撃を仕掛けようとはしなかった…。

…人を殺すこと自体は目的ではない、 という事だろう。

『丁度いい、 そこの小僧…我の相手をしろ。 もうすぐこの身体も崩壊してしまう…せめて楽しませてくれよ』

首をコキリと鳴らしながら、 俺の方を指さす。

これならガウラ達からの決闘の方がまだ楽だ。

「あの魔族は君に一体何を言っているんだ?」

「イマイチわかんないけど…恐らく俺と戦いたいって事だろ…」

ガウラに既に乗り移っていた事を考えると、 アランの戦闘は既に見ていたんだろう…。 そして、 俺が魔族の言葉を理解出来る謎の人物として興味が湧いた。 そんなとこだろうが…。

みすみすやられる訳にはいかないので、 戦闘になると必ず『聖騎士』や『拳聖』のスキルも使わざるを得ない。 だがアランが見ている中では使えない…。

どうした事か…。

『──成程、 その男が邪魔というのであれば…』

そう言って、 魔族は手をアランの方へ向ける。

「──アランッ! 今すぐ逃げろ!!」

『遅い…』

「ぐぁっ!?」

瞬く間にアランの周囲のみに重力波が発生し、 アランは地面へと突っ伏した。

『なに、 殺しはしない…勇者を仕留める役は我ではないからな。 少し邪魔にならぬようしただけだ』

「……ぐっ…ゼ、 ゼン……く…ん……に、 げ…ろ……」

「アランッ!」

魔族の発生させた重力波に耐えきれず、 アランはそのまま気絶してしまう。

「…ちっ、 こんな時にまで他人の心配をするなんてな…」

アランが気絶してしまう程の重力だ。 アラン自信も相当キツい状況だったはずだ。

なのに…俺に逃げろと。


「…どうやら、 俺も本気でお前を倒さなくちゃいけねぇみたいだな」

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