25、直径2mの円錐から 水が湧いてくる謎と謎解き
中国の水不足は深刻である。
世界銀行の予想によると、中国大陸には世界平均の4分の1、一人当たり年間2700m3の水しかない。
中国の専門家は2030年までに中国の人口は16億人に増加した場合、一人当たりの年間の水資源は1760m3まで下落し、国際的な水不足の指標とされる1700m3まで接近すると警告している。人口100万人以上の32の大都市のうち、30の大都市で水不足となっている。その中でも北京が最も厳しい。
一番水事情が厳しい北京のダンジョンで 4mの 巨大狼を、中国陸軍200名で仕留めた時に、その大きな円錐の物体はドロップされた。もちろん、巨大狼は、腕力も強く、動きも早い。200名の兵士は、噛みちぎられたり壁や地面にぶつけられて次々と肉片と化していった。
だが、中国には漢方という武器があった。その漢方の一種「狼毒」(ロウドク) 読んで字のごとく狼を毒する漢方薬だ。全世界に出現した全てのダンジョンでは、現代兵器はおろか、人工的なものは全て消え失せる。しかし、中国4000年の太古から営々と継がれてきた漢方薬は、北京のダンジョンにも持ち込めた。
もちろん、他のダンジョンと同じく中国でも、硬い木として主に柿の木を人の手で削って、ヤリ状にして兵士に武器として持たせている。これは【現代兵器、武器、防具、装備品】が一切持ち込めないダンジョン共通の武器だが、中国ではこのパーシモンの槍の先に「狼毒」「トリカブト毒」と言った天然植物から人が手作業で抽出した漢方薬の一種である猛毒を塗ってある。
これが他国との大きな違いだ。
北京ダンジョンの地下5階層で、巨大狼に出くわし、すでに500人からの兵士が犠牲になった。そこで、パーシモン手槍の先に「狼毒」をたっぷりと付着させて、精鋭200名が、巨大狼討伐にあったった。
狼毒は「咳逆上気を主治し,積聚,飲食,寒熱水気を破り,悪瘡,鼠廔,疽蝕,鬼精,蠱毒を治し,飛鳥,走獣を殺す」とその効用が記されている。狼毒は『神農本草経』に記された薬効からはかなりの猛毒薬らしく、その有毒性を利用した。読んで字のごとく巨大狼にだ!原料のStellera 属は小さいがきれいな花を咲かせ,クワズイモは他に比べるとはるかに大型になる。それらに共通する有毒性がこの生薬の本質であり、蒙古では今でもオオカミを駆除するために動物の肉に有毒物質を混ぜて利用している。
精鋭200名のパーシモンの硬いヤリが 巨大狼の皮膚を僅かながら貫き、狼毒が、巨大狼に徐々に回り始めて、戦闘30分後、遂にダンジョン地下5階のボスである巨大狼は力尽きて倒れた。200名の兵士のうち、巨大狼に少しでも傷をつけた20名ほどが、レベルを4ランクほど上げて初期の火、水、風魔法を覚えたが、収穫はそれだけではない。
巨大狼がドロップした、直径2mほどの、地上1、5mあたりに浮いて回転を続ける円錐の物体は、おちょこを倒したように傾いていて、そこから絶え間なく水が湧き出ている。その空中に浮いて回転しながら水を湧き出す物体を、ぽんと片手で押すだけでその方向に簡単に移動する。この作業を、兵士が連続でやりながら、ダンジョンを出て、その水が湧き出てる傾いた円錐物体は、そのまま北京大学の分子医学研究所に輸送された。これがダンジョン出現、3日目のこと。
それから一週間ほどたち、北京大学分子医学研究所が、全世界に向けて公表したのは、毎分1000リットルの純水( 純度99、9999%超のH2O)を 生み出す夢の半永久的真水製造機と大々的に国内外にニュースが流された。
もちろん、毎分1000リットルぐらいでは、北京の全市民には 真水は行き渡らないが、この傾いた円錐の物体から湧き出る真水だけで、1万世帯に潤沢な水が供給できるのだ!まあ、実際には、共産党幹部及び軍幹部優先となるので、純粋に北京市民に行き渡るわけではないが、どこでも移動できる円錐体物体は、移動が常の軍にとっては最大級の恵みと言える。
「これで、今まで小大隊200名がせいぜいだったダンジョン派遣に、一個師団1万名を投入できる見込みがついた!」
中国人民解放軍 陸軍 李上将は ほくそ笑むのであった。
円錐物体の構造を非破壊検査した結果、円錐物体は未知の素材を含んでおり、その素材が大気中の水蒸気を円錐の中心一点に超電動回転運動で集めて、クラスターの大きな水にして湧き出すとの、北京大学分子医学研究所の見解も大きく発表された。
未知の素材含有の常温超電導の永久回転で水蒸気を円錐中央一点に集合させて純水として湧き出す円錐物体。
現代の科学力では、そこまでの類推しかできないが、未来に期待が持てる未知領域の物体であることは、全世界の希望となった。また、その物体をドロップするモンスターが存在する北京ダンジョンは、全世界の羨望の的となったわけだ。
北京ダンジョンで犠牲となった兵士627人は、国家葬として、全員が二階級特進して、多大な報奨金が遺族に支払われた。電気だけでなく、水資源も乏しいインド、バングラデシュを始め、30カ国のダンジョン探索は、この北京ダンジョンがもたらした大ニュースで、ダンジョン開拓にさらなる火がついた。また、中国の毒薬漢方の製法は、ネットで広がり、ダンジョン出現の30カ国はこぞって手作業での天然植物で毒薬の製造に邁進したのだった。




