第52話 魔王軍幹部 タルポ7
「マルス!」
マルスの周りには火の玉が飛んでいる。どうやら魔炎の舞踏会を使っているようだ。
「ナゼダ……。ナゼ邪魔ヲスル! ラムス!」
タルポが激昂する。明らかにマルスに向かって発した言葉だ。
ってことは、マルスがラムス? ……あっ。
そうか、それならばマルスのランクが低いことにも納得がいく。禁忌を使ってランクを下げたんだもんな。いやいや、逆になんで今まで気づかなかったし。
「はっ。一発でバレちまったな。まあ、なんでここまでバレなかったのかは不思議だがな」
そう行ってマルスは包帯を取る。別に変わった様子もなく、巻いていた包帯は正体を隠すためのカモフラージュだったのだろう。
「さて、なんで邪魔するかって言ったら、てめぇが人を簡単に殺したからだぜ」
マルス改め、ラムスは静かに語る。どうやらラムスは魔王軍幹部のくせに、人を殺したことはないらしい。
「ヒトヲ殺シタカラ? ソレガドウシタ! 人ナンテ何人死ンデモ変ワラナイダロウ」
「ふん。これだから多種族は嫌いなんだ。自分勝手でなぁ」
自分勝手なのはお前もだろってツッコミたかったが、ここの会話に水を差すのもなんなので、口元で止める。
「マアイイ。ソレナラバ、オ前モ一緒ニ葬ルダケダ!」
タルポは再び鎌を生成する。そして、その鎌を持って、俺たちのことを気に留めず、真っ直ぐラムスに向かった。ラムスは鎌を丁寧にかわしていく。そしてラムスは落ち着いて、一直線に飛んでくるタルポの鎌に魔炎の舞踏会の火の玉をぶつける。鎌は飛んでいくが、すぐにタルポは新しい鎌を作る。
「へぇ。思ったより禁忌ってきついんだな」
そう言うとラムスは火の玉を再び鎌にぶつける。だがらやはりすぐに、鎌を作ろうとする。が、ここでテュケーが走る。テュケーは光魔法を剣に付加して、タルポに斬りかかろうとする。
しかしここでタルポはそれに気づいて振り返って、腕を振り上げる。腕を振り下ろすついでに鎌を生み出す気なのだろう。
このままじゃまずい!
それに気づいた俺は大声で叫ぶ。
「イリス!」
イリスも何をすべきかすぐに理解したようで、魔法を一つ詠唱する。
『聖青の霊氷』
イリスの杖に冷気が一瞬で集まって、巨大な氷がタルポに向かって飛んでいく。タルポはそれに気づいたが、既に攻撃の体勢に入っているタルポはそれをかわせない。
タルポの振り上げた腕が一瞬にして氷漬けにされる。ガチガチに凍っていて、動かせそうにない。それを見たテュケーは軽く笑うと、剣を振りかぶった。
「クックソ!」
「死になさい!」
そして一閃。テュケーの剣がタルポの胴体を深く切り裂いた。
鈍い音を立て、タルポが倒れる。大きな地響きが起きるほどだった。そしてその化け物の姿が溶けていき、見慣れたヴァンパイアの姿に戻る。
「はぁはぁ。倒したのかしら?」
そう言ってテュケーはタルポの方を見る。俺もテュケーの元へ駆け寄って見てみる。タルポはゆっくりと立ち上がる。
「しぶといやつだな」
タルポは手を上に上げると、すぐに農夫がやってきた。
っつ! まだ居たのか! どうする!? 止めるか!? 止めるしかないぞ!
俺は急いでタルポの元へ走る。するとタルポは無言で、指をこちらに向けてきた。すると、すぐに別の農夫たちが俺たちの前に立ち塞がる。
「今回は……あなたたちの勝ちよ……。でも、次はどうかしら……?」
そう言うと、タルポは農夫たちに連れられて去っていく。
俺は急いでそれを追いかけようとするが、農夫たちが自爆するかもしれないと言うことで、ラムスに止められる。
「こういう場合は市民の安全が優先だろぅが」
いや、ねぇ。魔王軍幹部として破壊活動していた人には言われたくないんですけどねぇ。
結局。農夫たちの安全を確保するために水浸しにする。どうやらこれで爆発を防げるらしい。まあ、イリスの水魔法が暴走してラムスにかかって、瀕死になったのは置いておこう。
その後、ラムスは騎士団の気配を感じたのか、いつの間にか居なくなっていた。その行動の通り、しばらくすると騎士団がやってきた。どうやら、クロノスが指示を出したらしい。
街の方も農民たちは皆、無事回復魔法をかけられて、
自爆は止められたらしい。が、既にしてしまったものはどうしようもなく。その点が悔やまれる。
そして俺たちは再び騎士団長の部屋に呼ばれることとなった。




