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第51話 魔王軍幹部 タルポ 6

「やったなぁ。プシケ」


俺は体勢を整えながら地面に着地したプシケに声をかける。まさかプシケがヴァンパイアの血を持っているとは思わなかったが、勝てたので細かいことは気にしないようにしよう。


「あはははは……。もうダメだ。動けないよ」


そう言うとプシケは瞳を元の色に戻しながら地面に倒れこんだ。後で聞いた話だが、クオーターヴァンパイアが、活動できるのはごく限られた条件で、無理やり負荷をかけているため体力がごっそり持っていかれるらしい。


「全く。無茶するかと思ったらそういう理由だったんだな」


「ま、まあね」


そう言ってプシケは疲れた体を横にして軽く眠りにつこうとする。


「ちょっと休ませてもらうよ……」


そう言ってプシケは瞼を閉じて、眠り始めた。

なんだかんだで寝顔を見るのは初めてだが、……うん。かわいいな。


「さて、これからどうする? タルポを縄かなんかで捕まえて、街に運べばいいのかな?」


「そうですね。それが一番だと思います。しかし、今回はあれですね」


イリスが何かを言いたそうにしているので、続けさせる。


「私本当に何もしてませんね」


あ、そう言えば何もしてないと言えば嘘にはなるが、あまり活躍はしなかったな。まあ、光魔法が強かったのはかなり大きい功績にもなるんじゃないかな。

そんなことを思いながらタルポの方を向く。しかし、タルポはうつ伏せで落ちた来たはずなのに、仰向けになっていた。

そして、かろうじて残った意識でゆっくりとアレを呟いた。


「……はぁ……はぁ……『禁忌 冥界神ハデス』」


まずい! やらかした! 早めにトドメを刺すか口を封じるべきだったのだ。体が変化していくタルポを背に、俺は爆睡しているプシケを抱えると、猛ダッシュで走って逃げる。逃げるといっても、逃げ切るわけではないが。

それに続いてテュケー、そしてイリスも逃げてくる。


「やってしまいましたね。またもや禁忌ですか」


「油断していた……。そういやまだ禁忌が残ってたんだな」


しばらく走ってタルポの方を見る。タルポは3メートルくらいまで大きくなっていた。その姿は、ボロボロの布切れを纏って、大きな鎌を右手に握っている。顔はげっそりとやせ細ったような感じで骸骨のようだった。


「タテツクモノニハ死ヲ」


タルポは宙に浮いたまますうっと迫ってくる。もうはっきり言って凄く恐ろしい。

タルポは鎌を振る。すると、直撃した木はもちろんのこと、葉っぱ一枚かすった木すら一瞬で朽ち果てた。


「これはまじでやばい」


もし鎌に触れれば一撃で死ぬ。かすってもダメってことは魔法で倒すしかないのか? なんかまたラムスの時と同じようなパターンになりそうだな。


「イリス! 魔法は後何々残っている?」


「コントロールできるのは、闇木水氷土です!」


なるほど。雷や炎は使い勝手が良かったが、明るい魔法ってことで使い切ってしまったんだな。この中で使えそうな魔法は……。まず、闇は論外だろうな。ヴァンパイアには効き目がないだろう。まああれをヴァンパイアと呼ぶかどうかは別として。

水もダメージを与えるほどの威力がないからなぁ。使い道は無さそうだ。つまり使えるのは木、氷、土ってところか。

土ってどんなだ? 砂でも飛ばすのか?


「イリス! 土魔法ってどんな感じだ!?」


「地震を起こす感じです!」


あ、ダメだなそれじゃ。宙に浮いている相手にはダメージを与えられない。どうするかな。

しかも今回は、ラムスと違って明確にこちらを襲おうとしている。つまり逃げ回りながら、どうするか考えなければならないのだ。


「イリス! 取り敢えず、木魔法で足止めしてくれ!」


「わかりました。『深緑の草木』」


すると、タルポの周りから木々が芽生え、タルポを包むように閉じ込める。

が、すぐにその木々は朽ち果てる。鎌に当たったのだろう。

やばいな。これはダメージを与えられないか? それにプシケを背負いながらだから、かなり疲れた。

取り敢えず怯ませでもして、距離を開けなければ。


「『雷霆』」


一筋の雷がタルポに向かって飛んでいく。タルポはぎゃっと雷を浴びて少しだけ怯んだが、すぐにその差は縮まる。


「私が斬りかかってみるわ」


テュケーが隣で言ってくる。テュケーは既に剣を握っており、魔法もいつでも使えるようだった。


「流石にそれは危険だろ」


「いや、剣でうまく鎌を弾けば、いけるかもしれないわ」


そう言ってテュケーはイグニスハンドを唱える。それによって剣に炎がまとわりつく。明るい魔法であるから、ヴァンパイアであるタルポにもそこそこ効果があるだろう。

けど、やっぱり危険じゃないか? 一撃必殺だぞ。ここで止めるべきなんじゃないのか?

しかし、悩んでいるその隙にテュケーは行ってしまった。テュケーは剣を強く握り、タルポの鎌を弾く。金属のぶつかる快い音がするとともに、衝撃でタルポがよろける。それを見たテュケーは渾身の力で、剣を振るう。

剣はタルポの腹部をしっかりと切り裂いたように見えた。が、切ったのはただの布。腹部の布であった。

すぐに体勢を立て直したタルポは鎌を握りしめ、一気にテュケーに下降させる。

俺は慌ててプシケをその場に置くと、テュケーの間に入ろうとする。しかし、間に合いそうにない。いや、間に合わせる。絶対に間に合うさ。

自分が持てる力で突っ走る。


「とどけぇぇぇぇぇぇ!!!」


しかし、その努力も虚しく鎌がテュケーを切り裂こうとしたその時。鎌が弾けた。何かがぶつかって、鎌が吹き飛ばされたのだ。


「な、なんだ……? 何が起きた?」


俺はその隙にテュケーの元へ駆け寄る。どうやら切り裂かれてはいないようで、ピンピンしていた。

俺はホッとして後ろを振り返ると、そこにはマルスが立っていた。


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