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第50話 魔王軍幹部 タルポ 5

ガラス瓶の割れる音がする。俺は斬り付けられた腹の痛みを我慢しながら、タルポの方を向く。タルポは力なく立っていた。


「ど、どうだ?」


タルポはダランとした状態で、ゆっくりと首をこちらに回してきた。そして目が光る。


「あなた……面白いわね」


そのまま体もこちらに向ける。その光景に俺は目を背けそうになった。回復薬がかかった部分が火傷で爛れたようになっていたのだ。


「ヴァンパイアが回復に弱いなんて、ヴァンパイアだけの秘密にしておくって言うのが村の決まりだったはずだけど……。誰かが流したわね」


そう言うとタルポはまあいい、という様子で、手を上に上げる。するとまだまだタルポに操られた村人たちがぞろぞろとやってくる。そして、タルポはその村人を1人捕まえると、首もとに噛み付いた。

みるみる村人はやせ細っていく。そして、最終的には朽ちて無くなってしまった。


「さらにこれがヴァンパイアの特徴よぉ。回復薬で回復できない代わりに、血で回復できる! これがヴァンパイアが最強の種族と言われる所以よ」


そう言って、再びタルポは天へと羽ばたいた。タルポは月をバックにこちらを見つめた。


「美しく散りなさい」


そういうとタルポはこちらに手を向ける。そして目を赤く光らせると、


「『darkness noise』」


そう呟き手のひらから黒い何かを飛ばしてくる。これが純粋な闇魔法なのだろう。

俺は慌ててその射程圏内から抜ける。しかし間に合いそうにない。すると俺と闇魔法の間に人影が入る。

プシケが闇魔法を受け止めにきたのだ。

確かにプシケの防御力ならこの程度の闇魔法を受け止めることはできるだろう。しかし、既にただ護るための障壁は使ってしまい、素の防御力で耐えなければならないという状況だ。

盾があるとしても止められるかどうか。

と、ここでプシケは驚くべき行動にでる。プシケは盾を地面に置いたのだ。そして、全身で闇魔法を受け止める。


「プシケ! 何やってるんだ!」


プシケはその言葉に返事をすることなく、こちらを向くと少しだけ笑った。しかし、その笑いの奥に恐ろしいほどの殺意をなぜか感じた。一体何を……?


そして闇魔法がプシケの体に止められていく。魔法の効果だろうか、耳をつんざくようすでな轟音も響く。その後と、闇魔法によってプシケを確認できなくなる。


闇が晴れると、プシケはその場に倒れていた。プシケの周りには闇魔法の残留物が蠢いていた。


「あはははは!! 私の闇魔法を耐えられると思っていたのかしら? いくら防御が高くたって盾すらないなんて無謀にもほどがあるわ!」


「プシケ……」


イリスとテュケーも駆け寄ってくる。

俺はプシケを起こそうと腰に手を当てた時だ。プシケはカッと紅い目を開いた。


「はぁ……はぁ……。さすがの魔力だね。魔王軍幹部となると……。だけれどもそのお陰で、僕は耐えることが出来た」


「な、何を言って……」


タルポが狼狽える。最大威力かどうかはわからないが、血で万全の体力まで回復して放った魔法だ。生きているはずがないと思っていたのだろう。


「特定の条件下において、強くなる種族がある」


そう言ってプシケはポシェットをかけなおす。そこには俺とともに買った満月のキーホルダーがぶら下がっていた。


「一つ、満月であること」


タルポはにやけていた顔をやめて、真剣な眼差しでこちらを睨む。


「一つ、自身の体力が十分であること」


そう言ってプシケは空になったガラス瓶を地面に落とす。カランと音を立てて転がっていった。


「そして最後に……。純粋な闇魔法を大量に浴びること」


そしてプシケはニヤリと笑って少し短い牙を剥く。


「ちっ。あなた……ハーフか何かみたいね?」


タルポは苛立ちながら言葉を放つ。

しかしその言葉にタルポは首を横に振る。


「ハーフじゃヴァンパイアの色が濃すぎて、回復薬でダメージを受けてしまう」


プシケの眼差しからは強い怒りと悲しみを感じ取ることが出来た。プシケの喋り方にいつものような軽い雰囲気はみじんも残っていない。プシケは力強く握った右手をそのままに言葉を続ける。


「四分の一。この時、さっき言った条件下で、ヴァンパイアの色を濃く出すことが出来る」


クォーター。プシケは純粋な人間ではなかった。ただ、四分の一だけヴァンパイアの血が流れているようだ。

しかし、今度はその言葉を聞いたタルポが余裕の笑みを浮かべる。


「クォーターね。……で? そんなもので私に勝てると思っているのかしら?」


「勝てるよ」


そう言ってプシケは地面を蹴った。プシケの素早さは高いものではない。ステータスから見るとあまり素早い方ではないだろう。しかし、ステータスにヴァンパイアの元々の能力を加えると、十分、タルポに匹敵する速さまで持っていくことが出来る。さらに言えば、普通ならばタルポの速さまで追いつくことは無理だが、浴びた闇魔法の質が良かったのもあり、強く、より強くヴァンパイアの色を出すことが出来た。


「うっ。まずいわね」


タルポは即座に宙へ飛ぶ。プシケには翼は生えていない。空中ならば安全と思ったのだろう。

だがしかし、プシケは屈伸をして、一気に地面を蹴る。すると一瞬でタルポの高さまで追いつく。

実はタルポは一発目のイリスの光魔法でかなりダメージを食らっていたみたいだ。しかし、タルポ自身気づかなかったようだ。


「ヴァンパイアは……人の血を吸うのをやめて人間として暮らすようになった。……それを裏切り、シャーシャーと目の前で血を吸っていくなんて、絶対に許さない!」


「ははは! 何を言っているのかしら? ヴァンパイアこそ最強の種族! 人間なんて問題ないのよ!」


「そう……」


プシケは弱く何かを呟いたようだったが、こちらまでは聞こえない。そしてプシケは一つの魔法を呟く。


「『ホワイトレイ』」


光属性がプシケの持っている短剣に付加される。たかが知れているプシケの攻撃力。しかし、しっかりと相手の弱点をつけば、


「こんなところで終わるわけにはいかないのよぉぉ!」


タルポの腹部を切り裂くのには十分な威力だった。

最後に放った言葉を残し、タルポは地面に墜落した。


50話きましたー!

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