第40話 大会二回戦 3
次にプシケが立ち上がる。プシケの対戦相手はマルスだ。
今大会最低ランクであり、詳細は詳しく知られていないという謎の多い人物だ。実力は確かなもので、予選は3位で通過している。
「頑張るよ! 勝てるかもしれないし!」
プシケは大きく声を張り上げる。その様子をマルスは軽く眺めて、少しだけ笑った。その笑いがどういう意味なのかはわからない。
するとマルスがこちらに近づいてきた。
「負けねぇよ?」
ただそう一言だけ言い放った。しかしそれは煽り返すような文言ではなく、どちらかというと、軽く返すような言葉であった。
2人は肩を並べて階段を上っていく。見えなくなってしばらくすると、2人がモニターに映る。2人はそこで握手を交わす。
『曲の発表です! 』
プシケが選んだ曲は、『エースピード』
それに対してマルスが選んだ曲は『魔炎の舞踏会』だ。
『エースピード』はその名の通り、かなり速い楽曲だ。さらに最大コンボ数もかなり多く、体力譜面というべき譜面だろう。プシケにとって最大限有利な曲を選んだようだ。
一方の『魔炎の舞踏会』は解禁が難しく、中々プレイできる人が少ない。そのため楽曲自体はそこまで難しくないのだが、この魔法を使える人もかなり限られてくる。実際プシケもこの楽曲は解禁しておらず、ほとんど初見プレイとなるだろう。
多分この楽曲あたりが、大会で使用できる曲とできない曲の境目くらいだろう。ちなみに絶対使用できないのは、虹色の魔曲シリーズなんかだ。
2人は筐体に並ぶ。そしてまずは、マルスが選んだ楽曲をプレイする。
前半から後半まで、ずっと何もいうべきことのない一般的な譜面だ。魔法としての威力はあまり高くないが、汎用性は高い。そのため、獲得しておきたい魔法の一つではある。難易度は高くないのでフルコンするのは楽だろう。
事実、初見プレイであったプシケもなんとかプレイできている。しかし、初見と慣れているのではかなりスコアも変わってくる。結果としては、
マルス
perfect 621
great 0
good 0
miss 0
プシケ
perfect 596
great 19
good 6
miss 0
と、かなり点差が開いてしまった。次はプシケの得意な曲だが、相手の実力を考慮すると、かなり厳しいと言えるだろう。
『エースピード』は、コンボ数がかなり多いため、一つのミスあたりの失点は小さくなる。そこを、利用してなんとか点差を広げていきたいところだろう。
が、そううまくはいかない。勿論プシケは殆どperfectで叩いているのだが、相手も同じようにperfectを取ってくる。これでは点差を詰められない。いや、むしろ広げられていっている感覚でもある。
終盤、ガチガチに詰められた譜面が、2人を襲う。プシケはなんとか遅れながらも突破した。しかし、マルスは完璧にそこを攻略していたのだ。
そして結果が発表される。
マルス
perfect 1496
great 4
good 0
miss 0
プシケ
perfect 1486
great 14
good 0
miss 0
今回の曲もマルスに負けたので、やはり合計の結果として、計算せずとも、マルスが勝っていることがわかる。
プシケがこの曲で負けた敗因の一つは、greatはまりをしたことだろう。密度が高いところで一度great以下を出してしまうと、立て直すのはかなり難しい。それが遅れているのだったら尚更だ。
マルスが勝ったのも当然と言えるだろう。
と、観客の方を見ると、マルスではなくプシケに声援が送られていた。
「まあ良かったよ!」
「下位で本戦にやってきて、一回戦を突破しただけですごいことなんだ!」
「次も頑張れよ」
イリスの時とは大違いだった。一回戦を突破しただけでこの差というのは、どれだけこの世界が、音ゲーで成り立っているのかを把握するのに十分だった。
「なんだかなぁ」
俺が呟いていると、隣にアドニスがやってくる。
「ついに俺たちの出番だな」
アドニスはそういうと、アナウンスがかかる前に階段を上がっていった。俺もそれに遅れないようについていく。二回戦最終戦だ。この勝者が準決勝に進み、すでに決まっている、予選1位通過のくろのす。予選3位通過のマルス。そして予選5位通過のガイアの誰かと当たることとなる。
「絶対に勝つからな」
アドニスは階段を下りながら、俺に向かって言う。俺もそれに対して、絶対に負けるわけにはいかないと返しておいた。
階段を上り視界が開ける。昼近くなってきたこともあり、観客の数は一層増えていた。俺たちは今までの流れにのっとって握手を交わす。そしてそれに満足した司会はこちらを向く。
『では二回戦第四試合始めたいと思います!』
司会は大声で叫んだ。




