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第22話 魔王軍幹部ラムス 1

ラムスと初めて会った森に着くと、生暖かい風が吹いていた。奥の方に人影が見える。俺たちはゆっくりとそちらの方へ向かって行った。

するとその影はこちらに気づくと、刹那の速さで近づいて来た。


「ちっ。てめぇらか。くそがっ! あのガキィ……今回も邪魔しやがって」


目の前に立っていたのはラムスだった。しかし、いつもとは様子が違う。既に何者かの攻撃を受けた後なのか、身体中にボロボロの傷を負っていた。


「生憎、お前らに関わっている暇はねぇんだ。死にたくなけりゃさっさとどっかに行っちまえ」


ラムスは手を振ってこちらを追い払おうとする。


「そういうわけにはいかない。お前に折られた腕の分だけはお返しをしてやらないと俺の気がすまないんだ」


俺はとりあえず、話しかける。するとラムスは煩わしそうに、


「はぁ……。てめぇは馬鹿か。明らかに実力で負けてるのに、十分な報復か出来ると思ってんのか?」


「ああ。お前を倒すために来たんだから」


「私としてもここで倒しておきたい相手だわ」


テュケーがさらに付け足す。


「ふーん。だが、俺はてめぇらほど暇じゃねぇ。おい、フォボス、ダイモスこい」


すると、耳をつんざくような音が聞こえたかと思うと、森の木々がなぎ倒された。そして、そこには2匹の獣の姿をした生き物が立っていた。


「かぁ〜〜。やっと出番ですかい。自宅待機はきついですぞ」


そう言って、二本足で立つ虎はゆっくりと咆哮する。


「ヒャッハァー!久々に暴れるぜぇー! ダイモス!お前の出番はねぇぞ! 」


もう1匹の鷹の姿をした、獣は翼を広げた。その衝撃で、土が舞い上がる。


「な、なんだこいつら……」


「俺の唯一の忠実な部下たちだ。俺はやらなけりゃいけないことがあるからな。ここでてめぇらは無様に散りな」


そう言ってラムスは踵を返して、去ろうとする。


「かっかっかっ! 俺の音速を超える動きを捉えることができるかぁ!?」


ダイモスでは無い方、つまりフォボスであろう鷹が、超速で、テュケーとすれ違う。その一瞬、その一瞬で致命的な攻撃を与えた。テュケーが。


「なっ!? はっ……」


そのままフォボスは崩れ落ちる。その黄金の翼がヒクついているが、立ち上がることは出来ないようだ。


「……ちっ! くそがっ!」


次の瞬間、明確な殺意を目の当たりにした。一瞬で世界が地獄になったかのような空気の震え。その先にはラムスが立っていた。


「てめぇら……ここで死にたいようだな!」


ラムスは血管が浮き出そうなほど顔を真っ赤にして立っている。


「待ってくだされ! ラムス様。ここで本気を出されては我々の目的が達成できませんぞ!」


「……あぁ? んなことはどうでもいいんだよ! こいつらをぶっ壊す。それが今の目的だろうが!」


「落ち着きなされ。まずは私がここで戦います。フォボスは油断しただけ。私が丁寧に戦ってみせますぞ」


そう言ってダイモスは一歩前に出た。ダイモスは手を地面に着くと、牙を剥き出した。そして、地面を蹴る。蹴った土が中に舞いながら、ダイモスは俺の元にやってきた。


「くっ」


俺はギリギリでかわした。ついでに剣に変えておいた武器で軽く切りつける。ダイモスはその軽い一撃を受けてその動きが止まった。


「ほう。この私にダメージを与えるとは……。面白くなりそうですな!」


そう言ってダイモスはもう一度地面を蹴った。しかし今度はそれに対応した、プシケが速い。プシケは俺とダイモスの間に立つと、一言、


『ただ護るための障壁』


ガキンッと音が鳴り響く。ギリギリとダイモスはその盾を突破しようと、無理に突撃をする。しかし、テュケーが買ったブレスレットの効果も相まって盾は壊れるどころか傷つく様子もない。ダイモスはそれでも突撃を繰り返す。しかしプシケはビクともしない。

ここは軽く援助することにする。

俺は折れていない左手を前に向けると、大声で叫んだ。


『ライトニング・ボルテッシモ!』


稲妻が唸りながらダイモスに突き刺さる。ダイモスはぎゃっと音を出すと、一旦プシケから離れた。


「……痛いね」


プシケがそう呟く。見ると手のひらが真っ赤に染まっていた。どうやら、突撃のダメージを盾で吸収しきれず、手のひらにダメージがいくぶんか入っているようだった。


「あいつ……きついな……」


「でも、あんな奴も倒さないで、ラムスを倒せるわけがないわよ」


そう言ってテュケーは剣を振り上げダイモスに斬りかかる。ダイモスは軽くその攻撃をかわして、反撃にテュケーに食らいついた。テュケーは一歩下がって距離を取るが、牙が左腕に当たったようだった。


「テュケー! 大丈夫か!」


すると、その声をかき消すように爆音が響く。

見ると、イリスが詠唱を終え、魔法を唱えていた。その魔法によって、巨大な氷の粒がダイモスに降り注ぐ。やはり魔力が上がっているからだろうか、その量が尋常ではない。ダイモスはなすすべもなく氷漬けにされた。


「……マジか」


「ちゃんと作戦を立てておかなきゃダメよ」


どうやらダイモスの攻撃をプシケがしのいでいるときに、テュケーとイリスで相談をしていたようだった。


「すまん……。けどやったな」


するとテュケーは難しそうな顔をして。


「本番はここからよ」


テュケーはゆっくりと、空間が歪んで見えるほどのラムスの方へ向いた。

そこだけ世界がまるで別物だった。









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